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教育関係者向け 新・学習指導要領対応「世界とジブンをつなげる」国際理解セミナー開催

2018年11月1日

セミナーには教科書関係20社、50名以上が参加

先般公示された新・学習指導要領において重視される「持続可能な社会」や「国際理解」。学習を深めるために、JICAのもつ知見や人“財”でご協力できることは多いはず。本セミナーでは、(一社)教科書協会に告知のご協力をいただき、教科書会社の方々を主な対象に、世界各地で国際協力に従事してきた三名のアクターの方々に生の声を通じた現場情報を、そして国際協力現場を視察した先生に授業実践事例をご紹介いただきました。

『もうコンサルはいらない』と言われるのが我々の仕事

阿部玲子氏(株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル)

「『地下鉄の開通』は途上国から先進国への一歩を意味します」そう語るのはこれまで途上国での鉄道事業に携わってきた、“開発”コンサルタントの阿部氏。その仕事は、単なる地下鉄建設 ではなく、現地の人々と共に取り組み、彼ら自身が建設・運営できるように育てていくこと。現地の人から「もうコンサルはいらない。自分たちでできる」と言われることを目指します。

しかし、人や車のみならず、馬、牛、そしてラクダに象まで闊歩するデリーを掘り整えること、商習慣や安全観が日本と大きく異なるインド人と「共に取り組む」ことは一筋縄にはいきません。日本の価値観を押し付けることはタブーながらも、全てをインド人にあわせてしまっては、自分たちがいる意味がない———『日本を持ち込まない、だけど日本を忘れない』の精神で、奮闘する日々をお話しいただきました。

途上国を相手に仕事をし、改めて感じる『法の支配』の重要性

荒井真希子氏(JICA・産業開発・公共政策部 ガバナンスグループ法・司法チーム 主任調査役)

「先日、ある途上国で、切れた電線からの感電で少年が亡くなりました。日本なら、遺族は電線を管理する会社や行政を訴え、相応の賠償金を求め、また、二度と同じことが起きぬよう環境整備を求めることでしょう。しかしその国では、遺族が求めたものは“葬儀費以上のなんらかの金銭”のみでした。誰がどのような法的責任を負い、誰に何を請求できるのかが法律上明らかでなく、市民の権利意識も乏しいままでは、一人ひとりの大切な権利が軽んじられ続けてしまう。市民を力づけるためには、適切な法があり、それが適切に使われる『法の支配』が必要なのです」——学生時代に学んだ法や司法の大切さを、法概念や具体的な法整備が未熟な途上国の現状を通して強く痛感している、と荒井氏は語ります。
また法律が整わないと、外資企業も入ってこず、国が発展しない要因にも。そもそも法がないのか、あるけれど使われていないのか。その国の実情にあわせた法整備支援事業をご説明いただきました。

初めての国際協力活動を通じ、バッグ一つで世界のどこでも働ける仕事を目指す

石島裕太氏(元・青年海外協力隊隊員、鍼灸・マッサージ師)

昨年までケニアで視覚障がいを持つ生徒にマッサージを教える活動していた石島氏。これ、実は二度目の青年海外協力隊。一度目は約10年前、理数科教師としての初めての国際協力活動を通じ、バッグ一つでどこででも生きていける鍼灸マッサージ師を志すようになり、帰国後に資格を修得したのでした。
「ケニアで鍼灸マッサージ師の募集がでてるよ」と知人に言われたのは、お客さんもつき、仕事も軌道にのってきたタイミング。期せずして、またもケニアに赴くことに。先の経験から、2年間という隊員活動期間の限界をふまえながらも、「生徒が稼ぐこと」だけではなく「生徒が『ありがとう』と言われる喜びを知ること」を目標に取り組まれました。自分がケニアを去った後も根付くようにと心がけての国際協力活動や、そこからの自身の学びを、語っていただきました。

海外体験談 ではなく、教科教育に根差して伝えたい『国際協力』

大野直知教諭(埼玉県立松山高等学校・地歴公民)

昨年、教師海外研修でザンビアの国際協力現場を視察した大野先生には、現場での学びと、それをどのように授業に還元したかをお話しいただきました。
「一見発展しているようにみえる都心部のスーパーでも、並んでいるもののほとんどは南アフリカからの輸入品」
「農村部の小さな机には、生徒がぎゅうぎゅう詰めに座っている」
といった現場視察したからこその学びも、そのまま伝えてしまってはただの体験談———大野先生には、海外での学びを世界史Bの単元『世界分割と列強対立』や『地域紛争の激化と深刻化する貧困』などに結び付け、フォトランゲージや知識構成型ジグソー法といったアクティブ・ラーニングの手法を活かした授業実践を紹介いただきました(詳しくは、教材含めて以下のリンクをご覧下さい)。今後は、生徒が世界をジブンゴトとして捉えられるように、また生徒が『問い』を探求していくような教育を目指されています。

本セミナーは「きっかけ」作り

「JICAって青年海外協力隊でしょ?」
「国際協力って学校建設や医療支援だよね?」
それもありますが、それだけではないんです!とお伝えしたく、今回は2時間の中に盛沢山の内容をダイジェストでお届けしましたが、これを機に参加者の皆様の国際協力への理解が少しでも広がれば幸いです。そして、教科書・教材掲載を検討するために、もっと知りたい!と思っていただけたことは、お気軽にご相談頂ければと思います。JICAには現場情報を語る人“財”(国際協力従事者も、それを教室で語る先生方も)がそろっています。

担当:広報室地球ひろば推進課・八星真里子

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