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世界の今は“自分ごと” ~中学3年担任・社会科教員の取り組み(前編)

2019年1月30日

「SDGsという眼鏡をかけて自分たちの住む町を見直し、初めて知る国のことも考えてきた中学2年生が、3年生になって修学旅行先京都・奈良にて『歴史や文化』をSDGs見学」

生徒たちのSDGs認知度100パーセントのこの学校の取り組みを、JICA広報誌『mundi』12月号では掲載しています。
2ページの紙面には掲載しきれない教育活動の工夫や生徒の様子を、中心となって進められてきた杉並区立阿佐ヶ谷中学・本間水月先生に伺いました。

「自分にできることは何か」だけでいいのか?

杉並区といえば?思いつくワードや関連性、問題点を結びついて書き出すマインドマップ。

正解はないが、答えは際限なくあり、生徒同士で意見を交わすことでさらに倍増。

JICA聞き手(以下、J):私、本間先生の授業の3視点に、もう脱帽です。
本間先生(以下、本):3視点?
(1)自分にできること
(2)行政(杉並区/東京都/日本)にできること
(3)企業や団体ができること
を生徒に考えさせた、あれですか?

J:はい。「自分が何ができるか考えよう」という取り組みはよく聞きますが、3視点なんだ!と。
本:もちろん、自分の行動を考えることは大事です。でも、自分一人でできることには限界があります。
中学社会科では、3年間かけ社会・共同体の仕組みを教えますが、行政や企業、市民団体などの役割を理解し、なんでもかんでも「自分が頑張る」のではなく、役割の異なる他者との協業を考えることが、「仕組みの理解」につながり、さらには持続可能な社会づくりにつながる、と考えています。
地元・杉並をSDGsを通して見たことで浮き彫りになった「課題」の解決方法が、「私が頑張ります!」では持続可能ではありませんからね。

生徒に丸投げしてみたら…

修学旅行で生徒が見つけたSDGs『倒れた石灯篭』 経年劣化ではなく、台風21号の惨禍。でもこれを「ただの、日本を通過したいつもの台風」としてとらえるのではなく、地球規模の「気候変動」の中の一つでは?と考えたり。

修学旅行で生徒が見つけたSDGs『地味な自動販売機』 普段東京でみる自動販売機と色が違うけれど、これは「売上優先」ではなく、町の景観保存のためなのか!と。

J:SDGsはどのように教えられたのですか?
本:「SDGsを教えた」というより、簡単な説明をした後、生徒に丸投げです(笑)。
「持続可能な世界のための17視点を知った生徒が、目の前にある事象の『持続可能性』について考えられるようになり、周りと意見しあいながら思考を深めていった」というのが実のところ。
決して「勉強大好き!」な生徒がそろってるわけではありませんよ。海外のことも「日本とは関係ない」と思ってる生徒がほとんどだったんじゃないかな。
でも、こちらが答えを自分で見つけてきて、と任せてみると、いろいろ見つけてきたんです。
杉並もザンビアも、自分たちで問題や解決を考えたから、
「あれ、両方の国とも、何かに頼らなきゃ生きていけないんだ!」
「同じゴールが当てはまってるってことは、解決方法として同じような考え方を応用できるかも?」
と、こちらが予測してなかった『気づき』を、生徒自身が導きだしました。

J:修学旅行もSDGsなんですよね。
本:はい、事前学習からSDGsです(笑)。これにより、
・よくあるレポート:「〇〇年に、〇〇ができた」という事実の羅列
・SDGsレポート:「ジェンダー平等の切り口から見て…」
と、それぞれの課題意識の視点から、歴史・文化をとらえ直しができました。しかしこれも、初めから想定できていたわけではなく「この子たちならやってくれるだろう」と、生徒に任せてみたら、すごいものを作ってきた、というのが実際です。

J:私自身教員だった時、「修学旅行の事前学習は、旅行ガイド丸写しに限りなく近いレポート」になり不甲斐ない思いをしたことがありましたが…また教壇に立つことがあれば真似したいです。事後学習が、また厚みのあるレポートですね。
本:事前想定と現場見学は決して「答え合わせ」ではありません。修学旅行中はSDGsを通して目の前の事象を捉えてみると「自動販売機まで景観保存仕様だ」「多国語表記だから色々な国の人に情報が伝わる」「観光客のごみマナーが改善されないと、せっかく綺麗な町でも…」「台風の後の町の傷み具合が予想以上に激しいけれど…これも気候変動の影響か」等など、次々と新たな発見や疑問が生じ、それがレポートされました。事前学習で資料を通じた想定・考察をしていたからこそ、現場での発見は大きかったよう思います。

J:はぁぁ、ただただすごいぃ。
本:いやいや、そんな全部うまくいってるわけじゃないですよ。

えええ?! いったい何が?
続きは明日、後編にて。

JICA聞き手:広報室地球ひろば推進課・八星真里子

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