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世界の今は“自分ごと” ~中学3年担任・社会科教員の取り組み(後編)

2019年1月31日

普段の学習だけでなく、修学旅行にもSDGsを取り入れる杉並区立阿佐ヶ谷中学・本間水月先生の取り組み。昨日掲載の(前編)の続きです。

自分の意見を語るようになった!と思ったら…

杉並区立阿佐ヶ谷中学・本間水月先生、2017年JICA教師海外研修にてSDGsとの出会い、他地域の先生方との出会い、そしてザンビアの国際協力現場との出会いから、生徒自身が「持続可能な社会」のために問い、考え、学ぶ教育を試行錯誤しながら実践中。

JICA聞き手(以下、J):はぁぁ、ただただすごいぃ。
本間先生(以下、本):いやいや、そんな全部うまくいってるわけじゃないですよ。
生徒が自論を展開する面白さを覚えた~!と思ってたら、ステレオタイプも見え隠れし始めましたよ。

J:どういうことですか?
本:「マナー違反の外国人観光客が増えたせいで…」とか言い始めるんです。もちろん、土地のマナーや習慣を知らない観光客が増えることで生じる影響、はあると思いますよ。でも外国人観光客=マナー違反と決めつけた言い方はどうなのかな、と。マナーを違反しているのは本当に「外国人」の「観光客」なのか、どの事実に基づいているのか…と。
『丸投げ』しても『野放し』にはできません。特に人権にかかわるようなことは「そうかな?」「こういう見方もできるよ」という視点は投げかけるようにしましたよ。

J:「それ間違ってる!」と否定はしないんですね~。
本:生徒自身が気付くことが重要です。
あ、これまた生徒が気づいたことなんですけれど、先日こんな発言がありました。
「最近みんなが使うSDGsの種類が増えてきた。始めた頃は、“(11)住み続けられるまちづくり”ばっかりだったのに」
そう、同じ事象(例えば“待機児童問題”)でもSDGsを通すことで、(1)貧困、(3)健康、(5)ジェンダー、(8)働きがい、(17)パートナーシップなど、様々な視点からみられるようになりました。

SDGsを切り口に学習を重ねると

J:ほほう。
本:そして、様々なゴールに関わるということは、つまり解決方法も様々なんだ!ということに、生徒自身が気づきはじめました。
さらに、一見、別々の問題でも同じSDGs課題に関わるということは、共有できるような解決方法がありうるのかも、という推測にも発展してきています。
こんな風に、課題をSDGsを切り口に考える時間を重ねることで、生徒が何かしらの“専門家”になってきたよう思います。社会科の時間だけでなく、日常の会話として待機児童や食品ロス、LGBT、ブラック企業、過労死、入管法改正、外国人労働者の低賃金労働などの話を、生徒と対等にできるのがうれしいです。

J:それ、私が教員時代に理想としていた光景です…。本間先生の目指す教育って何ですか?
本:今の世の中は「そこに(便利なものが)存在して当たり前」になっていて、その陰で誰かが工夫をしていることや、苦痛を強いられているかもしれないことに気づかず、私たちはただ享受しています。
このような状況では、いくら地球温暖化が叫ばれても「海に沈んでしまう国の人々は可哀そうだね」、難民問題が報じられても「大変だね」なんて他人事。「あなたも同じ地球に住んでいるんだから、そのうち大変なことになるよ?」ということにも、気づきません。
でも、SDGsをツールとすると、それらがぐっと身近になるんです。今の「世界」と「自分」をつなげるけれど、それは頭の中で作り上げたきれいな話ではなく、あくまでも地に足をついた、「Glocal」な学びと行動ができるような学習空間をつくっていきたいと思っているんです。

J:なるほど…先生が「教える人」というより、「空間を作る人」なのですね。今日は勉強になりました。本間先生、どうもありがとうございました!

本間先生がこんな風に取り組める理由

「周りの方々のお陰です」を繰り返す本間先生。この写真も本間先生と生徒の様子! ではなく、学校栄養士の先生を囲んでの座談会。学校での『食』課題を徹底ヒアリング風景。

本:えっと、もう一ついいですか?

J:もちろん!
本:今日は色々お話ししましたが、私一人で取り組めたわけではありません。生徒自身の頑張りや、様々な先生の協力あってできたことです。
特筆したいのは学校司書の先生との連携。資料の探し方、調べ方、レポートのまとめ方など教えていただきましたが、中でも書籍を分類するのに使う「NDC分類法」を伝授していただいたことで、生徒は「様々な視点からテーマを調べる」方法を学べました。ネット検索では膨大な量の情報や最新データが入手できるのはいいところですが、「違う角度から調べる」ことは簡単にはいきません。系統立てて分類された図書資料ならではの調べ方の強みを、生徒は理論でも実践でもまなびとることができました。
他にもですね、挙げ始めるときりがないんですけれど、本当に周りの協力があってこその取り組みなんです。

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本間先生、そして本間先生の周りの皆様、誠にありがとうございます。
伺ったお話、感じ入るところ多かったです。
どうか全国で児童・生徒の成長を望む先生方のヒントになりますように。

JICA聞き手:広報室地球ひろば推進課・八星真里子

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