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知る・考える・行動する グローバルシティズンシップ科のSDGsな取り組み(上尾市立東中学校)

2019年3月18日

1組のテーマは「AI・ロボット・最先端技術と共に歩む社会」。教室前には各班の調べるテーマと訪問先、それにまつわる調査まとめが並ぶ。

「先生、君たちが何を言っているのか、さっぱり分からない」

こんな発言が教員からにこやかに飛び出すのは、上尾市立東中学校2年1組の教室だ。

「フオンケンチってどんな字?」
と尋ねる佐野先生に、生徒は答える
生徒「不可の『不』に、『穏』やか、見つけるの意味の『検知』」
先生「不穏検知か。で、もう一度そのシステムを説明して?」
生徒「入院中の患者さんに変なことが起きることを知らせてくれるシステムです」
先生「病状が急変したら知らせてくれるってこと?」
生徒「じゃなくて、患者さんの不穏な行動が起きそうな40分前に知らせてくれるんです」
先生「え? AIがこれから40分後にこの患者さん注意! って知らせてくれるの?」

教室内がざわつく。

埼玉県上尾市立東中学での一コマだ。2015年度より中学校全クラスで取り組んできたグローバルシティズンシップ教育の研究発表会に、200名以上の教育関係者が見学に集うが、慣れっこなのか生徒は「大勢の外部者」にひるむことなく、発言している。

中学2学年は、持続『不』可能な現実社会の課題解決のため、クラスごとに課題・テーマを設定した。
ここ2年1組の場合は「AI・ロボット・最先端技術と共に歩む社会」。このテーマを深堀りするため班に分かれ、小テーマを設定し、図書資料や新聞記事から情報を収集しつつ、さらなる理解のために誰に聞くのがいいか、訪問先(外部機関・企業等)を生徒たちが考え出した。
今日は、訪問先でどんな質問をするのか、各班で練り上げる日。冒頭のやりとりは「医療分野におけるAIの活用」を知るため電子カルテやAIを用いた医療器具について研究をしている企業や病院を訪問し、不穏検知機能について質問しようという6班の生徒の発表でのやりとりだ。

この後、他班の発表や発表後に他の生徒からもらったアドバイスをヒントに、再度質問を練り直していく。

「それって中傷じゃない?」「優先度を考えよう」

2年5組の黒板にはグループで何をすべきか、考える際のヒントは何か、が提示されていた。

この教室の前に見学に行ったのは中学2年2組。ここのクラステーマは『気候変動が人々の生活に及ぼすもの』。その中で、1班は「地震後の国の動きと私たちにできること」を考えるために行政機関への訪問を予定し、こんな話し合いをしていた。

「地震が起きても、被害にあってない人のことって何て言うのかな?」
「え…? 第三者?」
「ほんと? その『第三者は何をすべきか』を聞くのは?」
「いや、それより『復興への着手が遅れてしまったらどうするんですか?』っていう質問は?」
「それって中傷じゃない?」
「待って。時間内に全部聞けるかも考えなきゃ。優先度の高い順番にしようよ」
「じゃあまずは気候変動と地震の関係性でしょ。それから行政機関でなきゃ聞けない話で…」

発言メモ役やタブレットで検索役もいて、どの班でも生徒達自らが考え、議論を重ねていく。かといって全部生徒任せなわけではない。中傷へのアラートが出たのは、議論の前に『質問を考える際に気を付けるポイント』を渡部先生が伝えられていたからだ。

そう、ここではグローバルシティズンシップ科の授業の時に、教師は「ティーチャー」ではなく、生徒主体の参加型学習が進むよう按排する「ファシリテーター」になる。

初めからディスカッションできてたわけじゃない

中学1年生の教室。SDGsの説明になんか見たことある画面…と思ったら、JICA×毎日小学生新聞の夏休み特別編の記事!詳しくはページ下部の関連リンクを!

班ごとに、SDGsのゴールを自分たちの言葉でかかげ、さらにその説明をポスター掲示。ゴール16について、ある班は『みんなが安心しておだやかな暮らしと公正な判断を』、また別の班は『持続可能な平和で公正な社会を全ての人々へ』

中学1年生の教室では「SDGs(持続可能な開発目標)を知ろう、深めよう」をテーマに、新聞記事を用いたSDGs理解を深める活動が進んでいた。まずは一人ひとりが新聞記事を読み、SDGsのゴールを結び付けマッピングし、意見や疑問を書き出す。続いてグループに分かれて、互いの考えを共有し、記事の理解を深めながら解決方法を考えていく。なるほど、1年生からこのような時間を持ち、グループディスカッションで異なる意見を知ること、受け入れること、問い直すことを重ねていくから、2年生であんな議論や発表ができるわけだ。

これは、どんな学校にもヒントになる!

『現在の東大寺』から学べるものは決して文化や歴史だけではない。

中学3年生は「上尾のまちをプロデュース」すべく、グループごとに提案内容を練り上げていた。上尾を構成する『社会の一員』の様子には思わずうなるばかりであったが、教室の外には『SDGsフォトコンテストin Nara Kyoto』の掲示物。上尾のSDGs分析のみならず、修学旅行先、奈良・京都をSDGsの視点でみつめていた。
コンテスト、というだけあっていくつかのレポートには金紙で賞が掲げられていたが、その一つは『思いやり賞』。東大寺を見学した生徒が撮影したのはスロープ。車いすの方、付き添いの方がそれを見つけた時嬉しそうだったという。SDGsゴールの中でも健康や平等、住みやすい街づくりや平和と公正のゴールが関連づけられていたこのレポートのタイトルは「目に見えるやさしさ」。
『自分の町をプロデュース』という学習活動は、全国どこでも気軽に真似られるものではないが、自分の町や修学旅行先、訪問場所を『SDGsの視点で見直す』ということはどんな学校にでもヒントになるのでは。

※レポートフォーマットください、とお願いすると、どうぞどうぞ~とお送りいただきました。ページ下部の関連ファイルをご確認ください。

一言でまとめられない、学びがもりだくさん

午前中は公開授業、お昼休みを挟んで午後からは分科会と全体会。昼食会場のごみ箱には、SDGsゴール12「つくる責任 つかう責任」と分別のお願いが掲示。

昼食会場でご一緒した某中学校の教頭先生が「グローバルシティズンシップとは何か予習してこなきゃ、と思ってネット検索したら、こんな面白い記事を見つけたんです」とお見せくださったのは、なんとJICA・開発教育メルマガ記事(GiFT・辰野まどかさんインタビュー)

グローバルシティズンシップに取り組み始めた2015年は、全クラス統一のカリキュラムだったという。年を重ねるごとに、学年に応じたカリキュラム構成や、学校行事との連携など内容はどんどん発展。しかし、4年間変わらずに重視していたのは「知る・考える・行動する」の3ステップ。

授業見学後のパネルディスカッションではパネリストの先生方からはこんな発言もあった。
「何より問う力が育まれている。『分からない』ことを自覚と問いの発生、そして答えを見出すために話合い、さらに『分からない』を自覚し…この繰り返しにより問う力がつく。そしてこの『問い』は正解が用意された教材ではなく、目の前の具体的な現実に向き合ったからこそうまれてくるもの」

ただただ感心する見学者一同に対し、今年度赴任したばかりの先生からはこんな一言も。
「ファシリテーションとかクリティカルとか、上尾東中の校内研修で飛び交う用語がちんぷんかんぷんでした」
教育委員会や大学教授もそろう中、そんなこと言って大丈夫なの?!
ヒヤリとするも、その先生の後ろでは同僚の先生方は焦った様子もなく、会場内で一番笑い声をあげていた。

生徒の皆さんからも、教員の皆さんからも、上尾市立東中学の取り組みを支えてきた方々や、参加者の方々からも『グローバルシティズンシップ』についての沢山のヒントをいただきました。
この取り組みを研究主任として、校内外の多くの方々の可能性を信じ、巻き込まれながら取り組み、また本記事咲く背にあたっては資料をこころよくご共有下さった松倉紗野香先生はじめ、皆さま、誠にありがとうございました。

報告:広報室地球ひろば推進課・八星真里子

【予告】JICA発行・先生向けの教材「国際理解教育実践資料集」の一部リニューアルを進めています。そこには上尾市立東中学の取り組みも紹介しており、4月中旬頃皆様にお披露目できると思います。お楽しみに。

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