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海外にいる先生からのおたよりがきたよ!~教員隊員による○○新聞事例&コツ その1~

2019年5月20日

2017年から2年間、現職参加教員制度を利用して青年海外協力隊として活動した鈴木壮太先生(派遣国:南アフリカ)と砂田さやか先生(派遣国:トンガ)。現地で活動をしながら、日本に文化や活動を紹介する「通信」を作成していた二人に、お話を伺いました。

南アフリカ・鈴木先生に聞きました!海外からの発信アレコレ

JICA聞き手(以下、J):鈴木先生の「SABONA 南アフリカ新聞(以下、南ア新聞)」は、在籍校(※1)のみならず上尾市のホームページやイベントでも掲載されていましたね! 何がきっかけなんでしょう?
鈴木先生(以下、鈴):実は……私からやりたいといったわけではないんです。
上尾市役所に国際分野に熱心な方がいて、南アフリカの記事を書いてほしい、と。この方は多文化共生イベントでの掲示や、埼玉県のホームページでの掲載交渉などもしてくださいました。
在籍校の校長にも「月1度はアフリカの様子を伝えてくれるよね」と言われ、廊下に掲示してもらっていました。

J:地域にも学校にも興味を持ってくれた方がいたとは!
鈴:私の場合は運良く先方から声をかけていただきました。
ただ、自分からの提案もありだと思います。「送った原稿をそのままA4印刷して掲示」等、何をしてほしいか簡易な方法を伝えれば、そう手間にならないかと。2年という長期間なので、原稿が毎月送付されるのは負担かな、と思い、3か月分まとめて送るようにもしていました。

J:なるほど。こちらの情熱が独りよがりならぬよう、配慮も必要ですね。でも毎月作成って疲れませんでした?
鈴:「上尾市・在籍校に南アフリカのことを知らせなければ!」と思うと、普段から気になることを探したり、写真を撮ったりと、アンテナが広がるので、自分のためにも月1で書くようにしていました。隔月や半年に1度など、それぞれの環境・ペースにあう形でよいと思います。

J:伝える際に心がけたことってありますか?
鈴:掲示された場所に、国際分野に興味のある読み手が集まるとは限りません。無関心層の目を引くには、ぱっと見るだけで楽しめ、理解しやすいものがよいと思います。
さらに面白い記事だとよいのですが、私はあまり文章力がなく……。なので写真多め、文字少なめを意識しました。しかし写真ばかりで中身がないのもどうかと思い、号外で活動について詳しく書いたものも作りました。
記事の内容は学校の様子や普段の生活が中心でしたが、それだけだと読み手も飽きるし、私もネタがなくなるので、たまに旅行のことも記事にしました。アフリカ旅行の話は迫力があり、けっこう楽しんでもたえたようです。ただ、面白いからと旅行記事が多いと遊んでばかりいるかと勘違いされてしまうので、注意しました。

J:学校や教育委員会の反応はいかがでした?
鈴:子どもや保護者の方から、年賀状で「記事を楽しみにしている」と言われましたね。
日本と南アフリカの学校をスカイプで繋ぐ際の事前指導に、記事を読んだという学級からは、現地の様子がイメージでき、子どもたちがスカイプ授業をとても楽しみにしてたそうです。
教育委員会は……南ア新聞について話していませんでしたね。派遣前にアピールすればよかったかなと、今さらながら思っています。
これから隊員に行かれる方は、在籍校や市役所、教育委員会にも、自分から提案してみるのもありだと思います。勿論、自治体によって協力隊員の派遣者数が多い等、難しいこともあるでしょう。しかし、提案することは悪いことではありません。新聞づくりは、日本にいる人々に新しい視点を提供できましたし、何より自分の考えを整理するのに役立ちましたよ。

(※1)在籍校:日本の学校に籍を残したまま青年海外協力隊に参加する場合、籍を残す学校のことを在籍校といいます。派遣前に所属していた学校となることがほとんどです。

トンガ・砂田先生に聞きました!様々な地域・団体にトンガを発信!

J:砂田先生の「トンガだより」送付先は実にバラエティに富んでますよね~。
砂田先生(以下、砂):在籍校の他に、協力隊応募時にお世話になった校長先生や教頭先生の異動後の学校にも送っていました。
在籍校では、国際関係等に関心が高い先生が毎号を授業で扱ってくださりました。長門市役所はトンガがラグビーが盛んなこともあり、その関係で市長に激励いただき、また市役所の方と仲が良いことから送付。私自身が所属していた山口県のAppleユーザー会も送付先の一つで、昨秋に日本で開催されたイベントにFace Timeを使って参加したり、色々と活動を手伝ってもらいました。キッズプラザ大阪からは、「トンガの絵本を送ってほしい」という依頼をうけたことが発展し、毎月送るように。
また、山口県にいる国際協力推進員(JICA山口デスク、地域のJICA窓口)と、JICA中国(広島県)に第1号を送ったところ、広島県庁にも送ってみては? と提案がありました。トンガ派遣前の訓練期間を過ごしたJICA駒ヶ根訓練所にも送ってみたら、「図書館に掲示するからこれからもよろしく!」と言われ毎月送っていました。
トンガではJICA関係者のみならず、日本大使館の方々とも親しくさせていただきましたが、親交のあった大使夫人にお送りしていたところ、大使からも「ぜひ読みたい」と言われ、全号お送りしました。

J:色々な読み手がいるわけですが、つくる時に工夫した点は?
砂:メインの部分は、子どもでも読めるようにルビをふってます。小さな文字での記載部分は、大人が子どもに説明するようしたらいいかな、と。写真とカラー部分を多用し、目を引くように心がけましたが、トンガのネット環境はあまりよくなくて、画質を落とさないと添付できないので、受け取る側で写真が鮮明でなかった場合もあったようです。

J:確かに砂田先生の鮮やかな写真満載の記事は、まず目が奪われます。しかしネット環境にはそんなご苦労があったのですね……。
砂:でも、作成を続けてよかったです。思いもよらぬ嬉しい反応もいただけたんです。
例えば、ゴミの現状やサイクロン(※2)の被害を伝えた際は、支援を申し出てくださった方がいました。
それから、日本にいるトンガからの留学生の多くが「ラグビー奨学生」ですが、日本に留学させてゴミ処理等の技術や知識を学んでもらい、トンガに持ちかえってもらったり、トンガに日本の何が生かせるかを考えてもらうようになれたらいいね、とおっしゃってくださった方もいます。
トンガだよりを作成する際にはその場面を思い出しながら、読む相手のことを考えつつ作成します。これが第三者の視点を頭に体験を振り返ることとなり、物事をより深く考えることにつながりました。そして身近なトンガの人々はもとより、トンガで活動する協力隊員達、日本で支えてくれている家族や友達、自身のことなどをもおもんばかれたと思います。さらに、トンガだより作成により、新しい人間関係が生まれ、広がりました。帰国してからもその関係は続きつつ、また新しい広がりを見せています。トンガだよりを作成したことは、本当に良いことづくめでした。

(※2)サイクロン:北インド用で発生する熱帯低気圧。熱帯低気圧は発生地域により、台風、ハリケーン等呼び名がさまざま。

報告:広報室地球ひろば推進課・八星真里子

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