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海外にいる先生からのおたよりがきたよ!~教員隊員による○○新聞事例&コツ その2 手書き通信~

2019年5月22日

前回はつい先日帰国したばかりの小学校の先生方の通信をご紹介しましたが、続いてお話をうかがったのは、数年前に帰国された、元中学教員・前原先生。2度のJICA海外協力隊経験があり、それぞれのタイミングで手書きの通信を作成されています。
(1999年~青年海外協力隊でニカラグア、2011年~シニア海外協力隊でマレーシア)

前原先生に聞きました!2度の協力隊、それぞれの通信の違いは?

中米・ニカラグアでの活動風景

JICA聞き手(以下、J):2度協力隊に参加する、という方も稀ですが、2度とも通信を発行しているという事例は、特にレアなのではと思います。約10年の間があいていますが、1度目と2度目で通信の違いってありますか?
前原先生(以下、前):ニカラグアは派遣時は若くて(笑)、柔軟性や楽観性が足りなかったのです。そういうことで毎回「不満の気持ち」がそこここに読み取れます。今度こそは、と思ってペンを執ったマレーシアだよりはおおらかで前向きな内容です。これは、現地の配属先(教育委員会)の同僚の影響もあります。ニカラグアでは特に周りから関心をもたれませんでしたが、マレーシアでは同僚や先生、生徒たちが興味を持ってくれ、仕上げるたびに何を書いたか説明して、と言われ、全号ファイルに保存してくれました。「私の視点からのマレーシアをマレーシアの人々に伝える」という緊張感がありました。マレーシアだよりを通して、現地の同僚が私のことを理解してくれました。「マレーシアだよりの作成は大事な活動の一つだから、勤務時間中にやっていいよ」とも言われました。

J:なるほど~。通信って、日本の読み手に伝えるためのもの、と思いきや、内容を振り返ることで、自分自身の変化・成長もはかれるし、現地でのコミュニケーションツールにもなるのですね。
前:さすがに3度目の協力隊はないので、それぞれの時に、状況や気持ちや発見を文字に起こしておいたことは本当に良かったと思います。自分にとって財産になります。
コミュニケーションツールというのは言い得て妙で、私が通信を書いているのを見ながら「椰子の木とパームはちがうんだ、知ってるか?」「ドリアンはもっと丸いぞ」「私たちの生活や文化を紹介してくれてうれしいなあ、日本のことも知りたいな」「これを読んだ日本の人の感想を聞かせてね」など、たくさんの会話が生まれ、互いの気持ちへの理解がありました。通信を書く私のまわりには、いつも誰かが気にして様子を見に集まってきていたことを思いだします。

東南アジア・マレーシアでの活動風景

J:マレーシアだよりは日本でもずいぶん多くの方々に読まれた、と聞きましたが。
前:派遣前、中学校に「マレーシアだより」を書くので掲示・活用お願いします、と伝えたところ、市内に中学校は三つという地域だったので、全校で掲示されました。

J:全校!前原先生のお人柄に加え、小規模な地域だからこその実現でしょうか。それにしても、先生の手書きの文字・イラストの通信からは温かみを感じますね。作成の際に心がけたことはありますか?
前:内容が単調にならぬよう、次の三つの内容がバランスよく入るように気をつけました。

(1)その国・地域の情報(派遣国の歴史、文化、気候、宗教、自然など)
(2)そこに暮らす人々の生活や習慣
(3)そこで暮らした自分の生活や活動

(1)については主観的な視点も大事ですが、信用できる資料を確かめてから書くようにしました。配属先の同僚にも「資料にはこう書いてあるけど本当?」と聞いたこともあります。「へえ、僕たちの国はそう書かれているの?」「私たちが知っているのと同じだわ」など色々感想を聞くことができましたし、同僚たちも「自分の国のこと」を改めて知るいい機会になったと言っていました。

J:なるほど! 異文化について客観的な情報、そしてそこには一体どんな人々がどのように暮らしているか、そこに飛び込んだ日本人(前原先生)はいったいどのように過ごしているのか、というわけですね。どれか一つだけだと「ネットで調べればわかる」「主観すぎる」となりかねませんが、三つの視点が含まれると、面白みが深まりますね。 2度目のマレーシアだよりで、試みた点はありますか?
前:イラストとマレーシア語の紹介を多くしました。配属先の同僚たちが興味を持ってくれていたこともありますが、読む人が見やすい、読もうと思える紙面を心がけていたらそうなりました。ニカラグア通信では自分の思いや説明がとても多く、ぱっと手に取った時「あ、読みたい」と思えない紙面になってしまいましたので。
それからマレーシアだよりでは「こんなことがあって困っています。みんなだったら、こういう場合どうする?」「みなさんの周りにこんなことありませんか?」など、読み手へに投げかけをするようにしました。遠いよその国のことでも、私のことを知っている生徒は少なからず身近に感じてくれるかもしれませんが、市内全校に配布されていましたし、より「身近に考える」には、ただ読むのではなく自分の状況と重ねてみる機会も、あってもよいのでは?と。通信を受け取ってくれる先生たちには、通信でふれた私の出会ったそのできごとを別便メールで少し詳しくお知らせしました。そして、生徒たちの日常で目にする、思い当たる問題、事柄につなげてもらいました。朝礼終礼の時間の小話としてであったり、道徳や社会科の授業で取り扱っていただけました。「前原先生はがんばっていると思うけど、こうしたほうがいいと思います」など、生徒たちから意見(返事)をもらったこともあります。生徒たちのほうがよっぽど大人だな、と思うと考えさせられたり嬉しかったりでした。

「○○通信」について、鈴木先生、砂田先生、前原先生情報提供ありがとうございました。
「通信作成 は日本への情報発信以上に得られるところがあった」と3人ともがおっしゃっていたのが印象的。記事にした内容が、今から通信や情報発信を考えている先生方のヒントとなり、これからも世界各地からの「○○通信」が日本のあちこちで、そして発行元の国の中で学びと笑顔を生み続けることを期待しています。

報告:広報室地球ひろば推進課・八星真里子

(※ニカラグア通信は前原先生ご結婚前の旧姓で掲載)

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