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ヤンゴン日本人学校のチャレンジ(2) 生徒のアイデアをヤンゴン市長にプレゼン

2019年7月23日

マウンマウンソー市長にむけて「ヤンゴンをよくする提案」のリハーサル。YCDCは、日本人小学生のために、普段は政府機関やヤンゴン地域政府との会議で使用している大切な大会議室を用意してくれた。

小学生のプレゼン会場には、マウンマウンソー市長の他、YCDC幹部、JICA関係者がずらり。皆、この街をよりよくしたいという想いは同じ。

前回、自分たちが暮らす、ミャンマー・ヤンゴンでの身近な問題(1.ごみ 2.渋滞 3.電気 4.道路)の解決策を考え、JICAミャンマー事務所にプレゼンしたヤンゴン日本人学校4年生。その時のフィードバックやその後の授業を通じ、どうやったらヤンゴンがもっと良い街になるのか、みんなで考え続けた。
そんな生徒たちの姿勢に刺激された担任の岡本竜也先生。生徒たちのアイデアを教室にとどめるのではなく、これらの問題に実際に取り組んでいる人たちに伝えられないか、とJICAミャンマー事務所に相談。
すると、ヤンゴン市(ヤンゴン市開発委員会、以下「YCDC」)に、課題解決策を生徒達自身がプレゼン提案できることになった。

YCDCは、ミャンマー最大都市の行政機関であり、その担当業務は、道路橋梁や上下水道の管理からごみ収集まで幅広い。トップを務めるのはヤンゴン地域政府で開発担当の大臣を務めるマウンマウンソー市長。
地域の行政やそのトップに課題解決の提案だなんて、日本でもしたことがない生徒たち。ヤンゴン市歴史遺産の1つに数えられる、YCDCのCity Halの重厚な建物に緊張した面持ちで入っていくと、YCDCの職員が優しい笑顔で迎えてくれた。

まずは岡本先生から今回の訪問を受け入れてくれたYCDCに感謝の言葉と本日の発表内容の説明。この日のために生徒たちと一緒にミャンマー語を勉強した岡本先生の想いあふれる発表に場の雰囲気が和んだところで、ついに生徒たちからの発表時間がやってきた。

最初に、マウンマウンソー市長による歓迎の挨拶。日本人学校による訪問を歓迎するとともに、生徒たちの発表への期待が語られた。YCDCは、JICAミャンマー事務所にとっても都市開発分野の重要なパートナー。これまでも上水をはじめとする複数のプロジェクトで協働しており、今後も下水や排水のプロジェクトが控えている。特に、ヤンゴン都市開発プロジェクトは、今回生徒たちが気づいた都市問題に実際に取り組むものであるため、今回の発表はYCDC・JICAの双方にとって関心の高いものとなっている。

生徒が考えた「よりよいヤンゴン」アイデア発表

生徒たちのミャンマー語を交えた、渾身の発表にYCDCの幹部からも拍手が起こる。

市長の挨拶が終わると、いよいよ生徒たちの発表の時間。

まずはごみ問題チーム。
自分達が街中でみつけ、撮影した写真を見せながら「川にごみが捨てられている」「川のごみは海まで広がり、動物が食べてしまう」「ミャンマーに来た人がごみの多い国だと思ってしまう」と気づきを伝える。
では、それらをどうすれば解決できるのか。生徒たちは、実現は難しいかもしれないが面白いと思った“夢”のアイデアと、実現できそうなアイデアを発表。

この後の全てのチームが夢のアイデアと実現できそうなアイデアを発表するのだが、“夢のアイデア”については、全員ミャンマー語で発表している。
「ミャンマーの人たちに、どうすれば伝わるだろう」
そう真摯に考えた結果、発表の一部「夢のような解決アイデア」をミャンマー語にすることに決めたのだ。この日のためにミャンマー語を勉強し、何度も練習してきた生徒たち。資料の翻訳や発音をサポートしてきた日本人学校のミャンマー人スタッフも、今日の発表に同行しており、遂に訪れたこの時間を嬉しそうに見守る。

次は渋滞チーム。
渋滞チームは以前に訪問した消防署で「渋滞で現場に行くのが遅れてしまう」という話を聞いたことからなぜ渋滞が起きるのか、渋滞がさらに引き起こす問題点についても考えてみた。
それに続く解決アイデアは「ドライバー同士が譲り合うことが大切」「5年間無事故だった人にプレゼントをあげることで、安全運転に気を付ける人を増やす」「赤信号の時間を短くし、道の流れを良くする」。YCDC参加者も深くうなずく。

3番手は電気チーム。
電気チームも消防署で聞いた話から、電線が引き起こす火災とどうしたらそれらが防げるのか考え、声を合わせて発表。
実現できそうなアイデアとして「電線を高くする」「車道幅を確保できるよう電柱の設置場所を見直す」といった大人顔負けのアイデアがあげられた。

最後は道路チーム。
「道路に穴が開いていて落ちそうになった」「先がとがったものが落ちていてケガをしそう」といった自らの体験に基づき問題提起。露店商人や路上駐車が道路の幅を狭くしていることにも気づいた。
道路や歩道を整備することに加え、「屋台をしている人たちのことを考えながら、解消策を考えることが重要」と、問題解決の際に重要な関係者への配慮についてもきちんと意見を述べた。

発表を終えた生徒たちは整列し、ミャンマー語で今回の訪問に関して市長をはじめYCDCからの出席者に御礼。一生懸命練習したミャンマー語で感謝の思いを伝えた。

生徒の提案に、マウンマウンソー市長のさらなる提案は?

最後に、JICAミャンマー・唐澤所長より、改めて今回の訪問への御礼を述べられた。そして、
「発表を聞き、生徒の皆さんの視点の鋭さに驚いた。また、短期間で懸命に練習したというミャンマー語も素晴らしかった。皆さんの『自分たちの暮らすヤンゴンの課題解決』の発表は、YCDCとJICAで協力して取り組んでいることと同じ。」
と伝えると、市長からも
「YCDCの中で今回の発表を共有し、今後も日本人学校と協力してきたい。YCDCが懸け橋となることで、ミャンマーの生徒たちとも意見交換をできるような場を設け、皆でよりよいヤンゴンを考えていきたい」
との提案があった。

今日の発表を心にとめて、これからのヤンゴンを見つめていく。
ヤンゴン日本人学校のチャレンジは続く。

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