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「JICAってどんなネタがあるんですか?」現役教員がJICAの教材資源を掘り起こすセミナー開催

2019年12月4日

「え? JICAって日本の教育支援もしてるの?」
そうなんです、我々、国際協力事業で得た知見を日本の教育に還元すべく、研修やったり教材作ったり、開発教育支援事業に取り組んでおります。
10月、小・中・高の現役の先生方に掘り起こしていただいた、JICAの授業ネタ+αをご紹介します。

途上国を訪れた先生たちは、教室で

■増子美香先生(吉川市立美南小学校)の場合■

【算数をつうじた異文化理解】
世界共通の「数字」であっても数え方や計算方法は国によって異なるやり方があります。どちらが正しい、ではなく、様々なやり方があることを尊重しながら、「数の原理」が学べました。

【農村部の生活現場でまさかの!?】
自然豊かな村にホームステイ。湯沸かしはなく冷水シャワーや、蚊帳(かや)の初体験に驚きつつ、もう一つびっくりしたのが、スマホをながめてゴロンとするステイ先の家族の姿!想像していた「途上国ののんびり農村」と現実のギャップから得た気づきは、全教科で還元していきました。

■中島真紀子先生(筑波大学附属中学校)の場合■

【現場で入手した“場面”の再現】
Small Talkや新文法の導入の場面で、生徒の興味を喚起し、学びの意欲に火をつけるためには教師が体験したことや、実在する人物について扱うことが有効——例えば、アフリカのザンビアで出会った10代の少年たちや、数十年前からここでストリートチルドレンのケアをし続ける日本人女性が夢を語る場——何で?どうして?と気持ちが高まった生徒の学びと発信が、なんと英語の副詞的用法の学びにつながりました。

【1枚の写真が教材に】
What is this? にこたえずにはいられなくなるような、夜の虹の写真。この日中島先生がご紹介くださったEnglish Small Talk(注)は関連ファイルにてご紹介します。
(注)Small Talk:英語の授業導入につかえる小話や英語問答

■田中駿一先生(東京都立南多摩中等教育学校)の場合■

【実社会につなげられる学びを!】
研修参加時に在籍していたのは工業高校で、卒業後は就職する生徒がほとんど。ベトナムと日本の現状・課題を知り、考えることを通じ育んだ「望ましいコミュニティ形成への自身のあり方」や「他者理解力、自己発信力」は、卒業後に活かせる力になることを願っています。

【いきなり「ベトナム!」ではドン引きされるので】
生徒にとっては遠いよその国“ベトナム”を通して日本や自身を学べるよう7時間をデザインしました。まずは訪問・追体験の授業。その後生活背景を推察したり、課題を分析した後、日本についても見直してみると、共通した課題もみえてきました。生徒自身が自分の学びを自覚できるよう一枚紙ポートフォリオも活用してます。

途上国で起きていること、SDGsと日本の得意分野「水と衛生」の協力紹介

JICA・地球環境部・課長望戸から、水・衛生分野での国際協力事業についても発表しました。
SDGsのゴール6である水・衛生分野において、日本はこれまで国際協力トップドナーとして貢献してきました。水の協力というと「アフリカで井戸掘り」をイメージされる方も少なくありませんが、それは協力のほんの一部。
途上国でも、例えば、アジアとアフリカ、都市と村落など、場所が変われば事情も変わります。途上国で何が起きているのか——人々の暮らしや国の成長を支える水道インフラの協力からface to faceで伝えていく草の根レベルの協力まで——詳しい発表内容は添付ファイルによりご覧いただけます。
“どんな協力にもヒューマンストーリーがあります。数字やモノだけではなく、人と感動にも注目いただけるように、伝える努力をしたい”と締めくくりました。

白熱!パネルディスカッション

大型会合で挙手質問はしづらいと思い、休憩時間中に投函できる「質問ボックス」を設置すると、たくさんのご質問が!
その回答のごく一部をご紹介します。

Q:響く教材とは?
A:視覚教材は有効です。それは生徒が「なんだろう、これ」と思いやすいから。また言葉や写真はシンプルであっても、それが選ばれた背景、そこに込められた気持ちが指導書等に書かれているとありがたいです。(中島先生)
A:意外性が大事。例えば、東南アジアでパームオイルのプランテーション管理をしている女性の写真を見せて、「月給はいくらでしょうか」と生徒に尋ねる。「貧しい国の低賃金労働の話だろう」と思ってみている生徒は「100円」「1000円」と答えるが、「30万円なんだよ」と言うと、「ええ?」と一気に目がさめる。意外なあまりに持った高い関心が、環境と経済発展の衝突や、現実に「うーむ」と向き合う原動力になる。(田中先生)

Q:教師海外研修での学びとは?
A:旅行とは全く異なる。事前研修での学びや、参加者同士の意見交換もあり、世界を今までと違う視点でみられるようになった。生の情報を児童・先生に伝えられることができ、それが広がっていくことを感じている。(増子先生)
A:ザンビアの家庭科の先生が、私たち日本の教員から見れば「ないものだらけ」の中でも、現地で手に入ったものを工夫して使っている姿に感銘をうけた。そんな彼女が言っていた「teaching with passionが何より大事」という言葉が、今も胸に残り続けている。(中島先生)


3度目となった教科書会社向けセミナー。今回は、現役の先生方をお招きし、国際協力現場から得られる学び(ネタ!)を深堀り頂きましたが、よりよい教育に日々専念されている様々な立場の方々のヒントになったら幸いです。毎回同じことを言わせていただきますが、教科書・教材掲載を検討するために、もっと知りたい!と思っていただけたことは、お気軽にご相談ください。JICAには現場情報を語る人“財”(国際協力従事者も、それを教室で語る先生方も)がそろっています。

担当:広報室地球ひろば推進課・八星真里子

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