国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト 2009年度優秀作品

高校の部 優秀賞

「まもりたいもの」

三重県立木本高等学校 二年
原 桜花

私には守りたいものがある。とてもとても大切に思うものがある。

高校一年生の夏、私は青少年赤十字のメンバーとしてパラオ共和国を訪れた。透き通った美しい海、空いっぱいに広がる夕焼け、優しくあたたかい人々を思い出す度私の胸には熱い思いが込み上げる。現地ではたくさんの高校生や赤十字職員の方々や副大統領までもが私達を歓迎してくれた。この国際交流は一週間だったが、私の今までの人生の中で最も幸せで夢のような七日間だった。みんなと固く抱き合い、別れを惜しんだ旅立ちの夜。もう一度会える保証はどこにもない、そう思うとあとからあとから涙が出てきて飛行機の中でも声を殺して泣いていた。帰国してからの私はホームシックならぬパラオシックにかかり、夜になると寂しいから八時には寝る様にしていた。何でも良いからパラオの情報を手に入れたくて、ネットで隈なく調べていた時のことだ。頭に冷水を浴びせかけられたような衝撃を受けた。地球温暖化による海面上昇の影響でパラオの一部の道路や民家が浸水する時がある、と書かれていたのである。私はその時、他国への移住を余儀なくされている島国・ツバルのことを思い浮かべた。きっとツバルにもパラオの人々と同じようなあたたかい人々が住んでいるのだろう。彼らは住み慣れた故郷を離れ、思い出や文化を置き去りにして異国の地で生活を切り開いていかなくてはならないのだろうか。何て悲しい、何て理不尽なことだろう。私はパラオの人々がパラオの国を失うなんてことを想像したくない。

日本はCO2排出量第四位の国だ。私達日本人の出す二酸化炭素により、ツバルやパラオの人々を間接的に苦しめているのではないか。そう気付いた日から「地球温暖化」は私にとってより身近な、一刻の猶予も許されない問題へと変わった。

私達の生活には「もったいない」がたくさんある。コピー用紙も紙コップも割り箸も一度使ったきりで捨てられる。夏の店の中は寒いほどにクーラーを使用し、一たび外へ出ればもの凄い温度差にくらりとする。私は自分に出来ることを日々実践している。外出時には自分の箸を持ち歩いたり、一枚の紙も無駄にしない様にノートを詰めて書いたり、地産地消を心がけて買い物をしたりする。「一人がそんなことをしても意味ないよ。」そう言われる時もある。しかし一人でも多くの人が地球の危機的状況を知り、自らの生活を見直すことで世界は確実に変わっていく。そのために私は、学校や弁論大会でパラオのことや環境問題について発表している。そんな私を側で見ていた友達が、紙を大切に使うようになり、「エコのためにこうしよう」と提案してくれるようになった。「ああ伝えてきて良かった。」と心から嬉しく思った。

「自然は友だち。」いつか誰かが言っていた言葉の意味を、今なら理解できる気がする。パラオでの海面上昇の問題を知り、環境について考えているうちに、私は「自然」をとても愛していることに気付いた。私が十三歳まで育った家は、360度を緑に囲まれた山奥にあった。畑には毎日鹿や猪が来るし、学校まではバスで一時間の道のりだった。道路脇の木々の間からこぼれる陽の光は、とても美しい。初夏にはあじさい、秋には日々色を変えゆく紅葉が見られ、七年間のバス通学を苦に感じたことは一度もなかった。

美しい自然と共に育ってきた私は今、地球環境を守る仕事に就きたいと考えている。この地球は人間だけの住み処ではないのだ。生きとし生けるものすべてが幸せに暮らすことのできる、持続可能な世界を実現したい。

パラオでの思い出は、今も私の原動力として、輝きを放ちつづけている。私はいつか、パラオの人々が「地球温暖化はもう大丈夫。浸水の心配もなくなった。」と笑って話してくれる日を夢見る。

プログラム紹介