国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト 2009年度優秀作品

高校の部 入選

知るということ

北海道札幌清田高等学校 一年
石丸 睦

戦争は終わりの見えない問題のひとつです。私がこうしてこの文を書いている今も、同じ人と人とが、肌の色や民族、宗教が違う、またはお金や資源といったさまざまな理由で殺し合っているのです。

なぜ戦争は終わることがないのでしょうか。世界中の人が考えていることだと思います。なぜ戦争は続くのでしょう。自分自身の痛みに気付いても、世界が良い方向へ回らないのはなぜでしょう。

学校の授業で、イラク戦争についてのビデオを見ました。イラクに潜入したカメラマンが撮影したものです。今までニュースで見てきた映像とはまったく違いました。市内に乗り込んでくるアメリカ軍の戦車とサングラスをかけた兵士たち。へらへらと笑っている兵士もいれば、悲しそうな苦い顔をした兵士もいます。彼らに向かって叫ぶイラクの女性。

「あなたは何人の子どもたちを殺したの!」

瓦礫の山と化した家、遺体で溢れかえる病院、酷い怪我を負った人々、今にも消えてしまいそうな命を懸命に燃やし続ける幼いわが子の傍で、ただ手を握ることしかできない両親。今まで知っているつもりだったイラク戦争との違いに、私は深く驚きました。

このビデオを見て強く感じたことは、「どうしてこのことを知らなかったのだろう」ということです。これだけ衝撃的な事実がテレビのニュースで報道されていれば、記憶に残らないはずがありません。つまり、日本で最も多くの目に触れるであろうテレビのニュースで、これが報道されていなかったのです。

『知らぬが仏』という諺は皆さんご存知でしょう。真実を知ることなく、平然としている様子を指します。まさに私たちはこのような状態に陥っているのです。イラク戦争についての報道はまったくと言って良いほどなくなり、日本の多くの人が戦争は終わったと思っています。

イラク戦争に限らず、世界中で戦争は続いており、その被害者は毎日、毎分、毎秒ごとに増え続けています。国や症状が違えども、元をたどれば原因は戦争にあります。偉い人たちの勝手な理由のためにある戦争のせいで、愛する家族を失ったり、体の一部を失ったり、生き延びた後も重い後遺症と付き合っていかなければならなくなったり、その苦しみのあまり一度は助かった大切な命を、自らの手で絶ってしまうこともあるのです。

私たちは知らなければなりません。平和の大切さは誰にでも理解できるはずです。私たちに求められている事は、第一に世界で起きている惨劇を知り、慎重かつ的確な行動を始めることだと思います。瓦礫の下で喘ぐ人々が切実に求めるものは何なのか、知らなければ彼らの助けになることは到底できません。

数年前、私が家族旅行で沖縄に行った際、ひめゆり平和祈念資料館を訪れました。ひめゆりの塔の前に立ち、ぽっかりと空いている第三外科壕の穴を覗き込んだときは、心の奥底から震えがこみ上げてきたものです。そんな私の横で、小さな男の子がお父さんにこの落とし穴みたいなものは何なの、と訊いているのが聞こえました。私はその若いお父さんの返答に、多くの若い命が散っていった目の前の壕と同じくらいの衝撃を受けたことを、今でも鮮明に覚えています。

「ん。穴だよ、穴」

これからの世界を担う私たちが、これで良い訳がありません。

私たちは、知る必要があります。

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