国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト 2009年度優秀作品

高校の部 入選

意識改革

大阪市立工芸高等学校 三年
右田 恵里華

現在、長期優良住宅が提案されたり、省エネ住宅が着目される等、建築はいかに地球にやさしいものをつくるかがキーワードになっている。太陽光発電システムやエコ家電の普及に国がのりだしてきたのも良い傾向であると言える。

しかし、一軒の家を建てるのに必要な資源は六十トンとも七十トンともいわれていることをご存じだろうか。その上、成熟した都市で家を建てるには、必然的に既存建築物を解体することが条件になってくる。一軒の家を解体すると四十トン以上のゴミが出るとして計算すると、一つ家を建てるのに動く資源は百トン以上ということになる。元々建築という行為そのものが自然破壊だ。詰まるところ「建てない」ことこそが何より地球にやさしいということになる。しかし、現代社会から建築を無くすことは不可能である。衣食住という言葉が意味する通り、人は住むところなくしては生きていけない。原始時代のような生活に戻るというのも一種の手かもしれないが、発展をし続けた現代人には極めて困難であるし、何か違う気もする。私は建築によって人々とその周り全てを幸せにしたい、という夢を持っていたが、こういった矛盾を目の前にし、動くことができなくなっていた。

そんなとき、アメリカやイギリスでは築百年を越えた住宅が中古住宅として普通に売買されていることを知った。調べていくうちに、海外では持続可能な社会を実現するために、既存建築物に対してリノベーション(大規模改修工事による用途機能の変更)やコンバージョン(用途転換)が積極的に行われているという事実も知った。これこそが私達が取り組むべき課題ではないだろうか。新しく造りだすのではなく、既存建築物をリファインする(老朽建物に新しい命を与える)、そこにこそ美しい未来は存在すると考えた。

既存物を再生して利用することは自然破壊防止の他にも数多くの利点が考えられる。例えば、文化的建造物保存である。現在の日本には「スクラップアンドビルド(壊して建てる)」という思考が根強くとりついている。これのせいで未来に受け継がれるべき街並や景色が、その価値を広く知られることのないまま破壊されるというケースが多い。これも建物を修繕し保存、再生利用することで、景観保持へと繋がり、建物を受け継ぐことで地域への愛着はより一層深まるだろう。コスト面で考えると割に合わないと考える人が多いだろうが、その思考こそものを大切に使うという意識を低下させてきたのである。「安ければ、長期使用できなくても良い。」この意識が人々の心にすみついた原因は、多かれ少なかれ住宅の短命化にあると思う。未来を考慮しない安直な箱の中で生活してきたから、人の意識も自ずと変化していったに違いない。そしてその意識は自身の使用物だけに止まらず、他人や動物、そして地球環境問題に対する意識にまで範囲を広げていくことになってしまった。

このように、建物が人々に及ぼす影響は良くも悪くも甚大である。どんなに時代をさかのぼろうと人類の背景にはいつも建築があり、それは時代に応じて変化し、時代を変化させてきた。だからこそ、現在人類が抱える諸問題をいち早く解決するためには、持続可能な建築を行っていくことが必要なのである。環境保護と謳いながら建築を行うのはどう考えても矛盾しているが、地球と私たちが共存していくためには、今こそ持続可能な都市を創造していかなくてはならない。そしてそれは「使い捨て」から「再生利用」へと人々の意識を変えてゆき、地球と私たちの美しい未来創造のための行動へと繋がっていくだろう。

プログラム紹介