国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト 2009年度優秀作品

高校の部 審査員特別賞

アルバイトを通して感じたこと。

福島県立富岡高等学校 一年
田口 ひかり

私は夏休みの期間中、近くのサッカービレッジで、四日間アルバイトをした。仕事の内容は大会に出場する少年達の昼食を用意するという仕事だった。何百人もの少年達が一つの体育館の中で昼食を食べるので大忙しだった。食事はバイキング方式だったので、私はなくなりそうな食材のトレーを新しいのに代え、残ったトレーの中身を新しいトレーに移し換えていた。すると従業員の方に

「いちいち移し換える暇はないよ。古いのはもう捨てなさい。」

と言われた。それを聞いた私はとても驚いてしまった。私は、幼い頃から両親に、

「食事はつくってくれた人、食べたくても食べることのできない人の気持ちを考え、残さずしっかり食べなさい。」

と、常に言われていたため、食べ物を捨てるということは考えられないことだった。古いといっても出して二十分も経っていないし、色も形も変わっていない。いくら忙しかったとしても食べ物を捨てることはできないと思った私はそのまま作業を続けていた。しかし徐々に仕事は忙しくなり、古い食材を新しいトレーに移し替えるという作業ができなくなっていった。はじめは罪悪感を持ちながら食材を捨てていたのだけど、だんだんに

「こんなにあるのだからちょっとくらい捨てたって、別にいいだろう。」

という感覚に陥ってしまい、おかまいなしにどんどん食材を捨てていた。そんな時、一人の少年が

「それ捨てちゃうの?もったいないよ!」

と私に言ってきた。そこで私はハッとした。今、この男の子が私に対して抱いている気持ちは、さっき私が従業員の方に対して抱いていた気持ちと同じなのではないか、いつの間にか自分の気持ちが変化してしまっていることに気付いた。自分の中で良くないと思っていたことが、ずっとその環境にいることで「別にいいか。」という気持ちに変化していた。私はそんな自分に嫌気がさした。両親から教わり続け、守ってきたことを破ってしまった私。「ちょっとくらい捨てたって…。」と思ってしまった私。そのちょっとを食べられずに死んでいく人達がこの世の中に何人いるか。私が捨てた食材で何人の命が助かるのか。と考えると、私は私のしたことにとても腹が立った。いつも食事を残す弟を「もったいない」と叱っていたその本人が今、もったいないことをしている。私は少年の言葉によって本当の自分をとり戻した。それからはどんなに忙しくても、食材を移すことを怠らず、絶対に捨てるようなことはしなかった。

アルバイトを終えた今私は、自分の中で起こったことは、今の日本の社会にもあてはまるのではないのかと考えた。私達の住む日本は、とても裕福でほとんどの人間が家を持ち、勉強や仕事をし、おいしい食事を食べることができている。一方で世界の中には、帰る場所も、勉強する環境も、食事を食べることもできず、病気になったり、餓死してしまう人間が何人もいる。今、私が過ごしているこの時間の間に世界では同じ人間が命を落としているのである。私達日本人は、そのことの重大さをまだしっかり理解できていない。なぜなら私がアルバイトしていた時のように、日本はありすぎるくらい、物が身の周りにあふれ返っているからだ。自分達は裕福だから、少しくらい捨てたって困ることはない。だから、食べ物に限らず簡単に物を捨てることができてしまうのである。裕福な国に住む私達が、貧困で苦しんでいる人達の気持ちを考えるということは難しいことである。なぜなら自分達の環境とは全く異っているから。しかし、大切なのは自分達が裕福な環境の中にいるからこそ、もっと周りのことに目を向け、自分は何をすべきか考えることだ。私はアルバイトで大切なことを学ぶことができた。これからは自分を客観的に見つめ、今の自分は本当に正しいか問いながら生活していきたい。

プログラム紹介