国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト 2009年度優秀作品

中学の部 優秀賞

「チョコレートの向こう側」

薩摩川内市立川内南中学校 三年
小田原 珠実

弟は、「酒の肴」と言われるようなしぶい食べ物が大好きだ。甘いものには見向きもしないが、アイスとチョコだけは別らしい。特にチョコには目がない。弟を店に連れて行くと、必ずそれを買い物かごにしのばせているのだと、母が苦笑しながら話したことがある。私も“ダイエット”という言葉を頭にちらつかせながら、弟のチョコをよくちょうだいする。くせになりそうな独特の甘い香りとほどよい苦さが、私を至福の世界へと誘う。そんな私が、チョコと子供奴隷の意外な接点を知ったのは、貧しい人たちの自立を支援するボランティア団体に登録した時だった。

インドに住む少女の里親となった私は、ネットであれこれ検索しているうちに、子供奴隷の存在を知った。たまたま、インドの少女に支援の手は伸びたが、世界には、今も多くの子供達が、学校に行くどころか、家畜同様の扱いを受けながら働いている現実があるという。チョコの原料となるカカオ豆の産地、アフリカはその最たる国だと知り、愕然とした。何気なく食べていたチョコの中には、過酷な労働で流した子供達の数え切れない汗と涙が練りこまれていたのである。

そんな私の脳裏に、借金で一生奴隷として生きなければならない、ある一家の取材番組が蘇った。奴隷一家の少女は、掃除していた雇い主の娘の部屋で人形を見つけ、一瞬その手を止めた。瞳を輝かせながら人形を見る姿は、ごく普通の女の子となんら変わりはなかった。取材班が訊ねる。「自分の人形がほしい?」少女は静かに首を振った。「家族みんなで元気に暮らすことが唯一の幸せだから。」少女は不運な境遇に対する恨みではなく、家族愛に溢れた感謝の気持ちを口にしたのだ。恵まれた環境下で、不平不満ばかりを並べてきた私は、「本当の幸せって何?」との問いを突きつけられた気がして、胸が痛かった。少女をみる限り、一概に、豊かさ=幸せとは言えないのかもしれない。それでも、最低限の生活は全ての人に保障されるべきであると思う。繰り返される戦争が、貧困や飢餓を招き、多くの人々を苦しめているという構図が変わることはない。戦争にかける莫大な資金を、貧しい人達のために投資できたなら、どれだけの人が人間としての尊厳を保ちながら生きることができるだろうか。私は、この世から子供奴隷という存在が完全に消滅し、世界の子供達が笑顔で学校に通えるよう、自分にできる活動を考え続け、実行していきたい。

先日、インドの少女からカードが届いた。同封された写真には、おしゃれをした少女の姿が映っていたが、奇しくも弟と同じ歳だというその身体は、比較にならないくらい細かった。今は医者を目指し、学校で懸命に勉強しているという。「自分の受けた恩恵を、今度は私が多くの命を救うことで恩返ししたい。」

拙い文字の横で、描かれた花々がどれも楽しそうに笑っていた。

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