高齢社会福祉におけるデイケアサービスの日系研修が、県立看護大学と羽咋市社会福祉協議会の協力によって始まり、早くも1ヶ月以上が経ちました。そこで7月30日(水)に研修現場を見学させてもらいました。今回はそのパラグアイ研修生の様子をお伝えしたいと思います。
お年寄りと会話を楽しむ北川さん
久々にあった研修員の皆さんに、「研修も半ばを過ぎて疲れが溜まってきた頃では?」と聞くと、「これまで体調を崩すこともなく元気にやっています!先週の休みには皆で能登を一周してきました。」と皆さん。暑さにも負けずに、石川での生活を楽しんでいる様子で安心しました。
午前中は羽咋市在宅総合サービスステーションでの実習があり、研修員の皆さんそれぞれに2、3軒のお宅で訪問介護や訪問介助などの実習を行いました。
実習について聞くと、「介護らしいことはあまりせずに、ただ会話をしていたのですが、帰りがけに訪問した先のおばあちゃんが、『あいそんない(石川県の言葉で“寂しい”)。もっと話したい。』と言ってくれて嬉しかった。会話をして楽しい時間を一緒に過ごすのも大切ですね。」と福井さん。
一度の訪問ですっかり打ち解けて、帰り際にはお土産にとお菓子までいただいたそうです。実技だけではなく、触れ合いを通して高齢者を支えられる部分も多くあるのですね。
毎日みんなで揃ってごはんを食べているそう
お昼の休憩をとった後に、再び午後からの実習が始まります。
お昼ご飯は皆さんが寝泊りする民宿で、毎日当番を決めて交代で調理しているそうです。
この日食卓に並んだのは、野菜の炒め物に、お蕎麦、野菜サラダとボリューム満点のごちそう!
「日に日に知り合いも増えて、毎日のように皆さんからトマトやナスなどの採れたての野菜をたくさんもらいます。ほとんど買う必要がないのでとっても助かっていますよ。」と若森さん。この日の食材もいただいたもので作ったそうです。
まだ、羽咋市で過ごして1ヶ月半も経っていないのに、地域の人たちにすっかり溶け込んでいる様子です。
左からお手伝いをする若森さん、福井さん
スイカを切り分ける水本さん
さて、お昼ご飯を済ませ、いよいよお昼からの研修がスタート!
午後から研修員の受け入れ先となるのは、羽咋市にあるグループホーム「さくらさくら」です。グループホームとは、介助を必要とする人が、施設において共に助け合って生活するものです。
まずは管理者の井表さんからホームについて説明を受けました。「さくらさくら」では、入居者のご家族とこまめに連絡をとり、ホームでの様子を伝えるよう心がけをしたりして、地域の方との交流も積極的に行っており、自然と周りの理解が得られるような仕掛けを作っています。
様々な取り組みを聞きながら、「へぇ〜。なるほど。」と感心する皆さん。
その後、若森さん、福井さんペア、そして北川さん、水本さんペアと分かれて実習を行いました。
「さくらさくら」では、入居者の部屋も個室に分かれていて、それぞれに慣れ親しんだ家具を家から持ち込めるようになっているので、同じ部屋の作りでも、中の様子を見ると、一つ一つ入居者の色が感じられます。
そして、入居者の高齢者もスタッフに全て任せるのではなく、スタッフと一緒にできることをしながら生活しています。本当に家にいるみたい。施設という感じが全然しない。」と福井さん。施設とは思えないアットホームな雰囲気に皆さん驚いている様子でした。
ホームではスタッフと入居者が協力して、洗濯物をたたんだり、おやつのスイカを取り分けたりと、日常の生活が見られます。そこに研修員も交わって更に会話が弾みます。
「へぇ〜!外国から来たの〜!」と地球の反対側から来た珍しいお客さんに興味津々の入居者の皆さん。研修員も入居者のお年寄りの輪に入って、会話を楽しんでいました。
高機能の福祉用具に驚く研修員
簡易は歯ブラシの説明を受ける若森さん、福井さん
午後の研修を終えて、「ありがとうございました!」と疲れも見せず元気にホームを後にした皆さんに続けてお話を聞きました。
「研修が始まって1ヶ月以上経ちましたが研修はいかがですか?」との質問に、「研修を受ける中で、日本も昔は家族介護の意識が強くて、地域で行う介護はなかなか受け入れられないという、パラグアイの日系社会と似た状況にあったことは知りませんでした。実習を受けながら、そこからどういう風に状況を変えてきたのか話を聞けるのも励みになります。」と北川さん。
「同じ日系社会でも、福祉の地域差があります。特に私の地域ではまだまだ福祉が進んでいないので、無理せずに取り入れられるものから、少しずつ活動に取り込んでいきたいです。」と水本さん。
「日本とパラグアイの日系社会のお年寄りの違いについて驚いたことはありますか?」とお聞きすると、「日本では認知症のお年寄りがとにかく多いことに驚きました。日系社会では身体的な介護を必要とする人はたくさんいますが、認知症の方は少ないですよ。」と水本さん。
これは意外でした。同じ日本人といっても、住む地域が違うことによって、食生活やライフスタイルも変わり、一般的な病気の傾向も変わってくるのですね。
日本の高齢化社会を見た今、逆にパラグアイの日系社会について見えてきたものもたくさんあるかと思います。
それぞれの特徴をうまくつかんで、独自の活動につなげていって欲しいですね。
丁寧に説明をする管理者の井表さん
8月に入って1週間の実習を終えると、いよいよ研修も終盤に入ります。研修のレポートを作成し、皆さんが今回の研修で学んだことを帰国後にどのように活かしていくのか、8月26日(火)に県立看護大学で行われる閉講式で発表することとなっています。今から発表を楽しみにしているのと同時に、これから暑さもだんだんと厳しくなる中、体調をくずさずに無事、研修を終えることをお祈りしています!