10月の中旬、タジキスタン共和国から6名の研修員がやってきました。タジキスタンは中央アジアに位置する旧ソビエト連邦の共和国です。この研修は乳幼児死亡率の軽減、妊産婦の健康改善を目的として2005年から石川県立看護大学のご協力により、実施されています。
タジキスタンの衣装を着て研修開講式に出席するみなさん
ほのぼの健康館での赤ちゃん検診の様子
作成した教材について説明するモフルさん
見学を終えてスタッフと意見交換する研修員
タジキスタンでは、5歳未満の乳幼児の1割以上が医療などの問題により死亡しています。背景には、出産や出産後のケア、そして小児科の設備やシステムが十分に確立されていないという問題があります。そこで地域の中で健康教育などを行い母子保健に関する理解を高めるべく、これまでの過去3年間の研修ではタジキスタンからの病院長など組織運営に携わる方々を対象に研修を実施し、4年目となる今回は現場での経験が豊富な看護師さんや保健師さんを対象に日本での母子保健と医療を学んでもらいました。
研修中は石川県立看護大学での講義のほか、石川県かほく市内の福祉施設も訪問しました。訪問先のひとつであるほのぼの健康館では市内の妊産婦や乳幼児を対象に、医師、栄養士、看護師、保健師が連携して子育て教室を行う様子を見学しました。
赤ちゃん健診では、体重の測定から医師による健診、栄養面の指導や子どものあやし方について丁寧に母親にアドバイスをするスタッフの話からたくさんのことを学びました。
研修員の1人であるモフルさんは「栄養士さんや看護師さんなど立場が違っても、連携して情報共有することにより、より良い対処が施されていることなどが参考になりました。職務内容の相違に関わらず協力していける部分は協力していきたい。」と語ってくれました。
また、看護師のルトフィヤさんは、「百聞は一見にしかず。実際に現場の方たちが活躍している様子を見て、私たちでもできるという勇気をもらいました。一気に全ては変えられないけれど、できることから取り組んでいきたい。」と意欲的に話してくれました。
妊娠中に必要な栄養バランスを説明した図
研修中には、母子保健の教材作りも行いました。取り組んだ内容は栄養素のバランスや母乳保育の利点を説明したものなどさまざまです。母親になる女性が気軽に楽しく理解できるよう、布などの身近な素材を使い、模型を作るなどの工夫をし、色合い鮮やかで分かり易い教材作りに努めました。最初は自分たちで教材や活動計画案を作ることに多少の戸惑いがありましたが、みなさん思考を凝らして課題に取り組みました。
この研修を通してみなさんは、指示を待つばかりではなく、自ら考え行動していくことの大切さを知り、自信を持つことができたようです。一方現地では、これまでの研修員たちの働きかけもあり、今では母子健康手帳の全国的な導入が検討され、保健センターで健診が拡充されるなどの動きもあるそうです。今回研修を受けたみなさんがタジキスタンに帰られたら、同じ石川で学んだ仲間として、これまでの研修員と連携して、さらに効果的な活動が進んでいくと良いですね。
今後、母子保健がさらに改善され、お母さんたちが安心して出産し、子どもたちがすくすく元気に育てられる環境づくりが進むことを期待しています。