【参加国】
ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、コモロ、ギニアビサウ、マリ、モーリシャス、モーリタニア、セネガル、セーシェル、チャド
生まれて初めて見た雪と戯れる研修員
2011年2月中旬から3月中旬までの約1ヶ月間、アフリカ12ヶ国から20名の研修員が、富山国際大学(富山県)を研修受入先とし、富山県、岐阜県、沖縄県における様々な観光開発の取り組みについて学びました。
アフリカにおいて産業としての観光は有望視されています。しかし、各地域において観光資源は有するものの、地域住民、地域産業を巻き込んだ、地域に裨益する観光は十分に開発されていません。
一方、日本では地域の特性に応じた観光開発が民間会社、地方自治体、地域住民の連携により実施されており、地域振興において重要な役割を果たしています。本研修は、日本が持つこれらのノウハウを研修員が学び、自国で役立ててもらうために実施されました。
一口に観光開発と言っても、様々な観光の形があります。また、ターゲットとする観光客層や、その時代が求めているものによっても、開発方法は異なってきます。開発途上国では外貨獲得手段の一つとして、観光産業分野が徐々に発達してきています。しかし、これまでは外部資本が主導となって開発を進める「外発的観光開発」が一般的で、必ずしも地域の人びとへ恩恵が及んでいるとはいえません。外発的観光開発を行えば、大量の観光客が訪れ、多くの外貨を獲得することができます。しかしその代償として、環境問題や地域文化の衰退、そして一部の人だけが富を得る不平等などが発生する可能性があります。外発的観光開発も観光開発の一つの形であり、必ずしも「悪」とは言えません。しかし、地域住民も恩恵を受けることができ、地域の環境や文化も守りながら共に発展できる「内発的観光開発」が現在見直されています。今回参加した研修員は、この内発的観光開発を開発手段の一つの方法として学びました。
合掌造り家屋の囲炉裏を囲んでの講義
ハトムギ茶の袋詰め体験中!
かまぼこ細工は難しい!
焼けるまで4つ数えて!
イチ・ニ・サン・シ!
内発的観光開発には、行政・民間(観光関連産業)・地域住民の連携が欠かせません。これらがうまく機能している例として、富山県南砺市の「相倉合掌集落」を視察しました。相倉合掌集落は世界遺産に登録されており、合掌造りの住居のみならず、相倉の風土に適応した生活様式そのものが世界遺産の評価に繋がりました。現在も住居およびその生活様式を相倉の人々は守り抜いています。ここには地域住民の地域・文化に対する誇りのみならず行政の支援が欠かせません。世界遺産に登録されるまで、行政は地域住民と一丸となって様々な取り組みを実施してきました。また世界遺産となった今も、南砺市の支援は続いています。
同様に、地域と行政が一丸となって発展した例として、氷見市の細越地区のハトムギ生産組合の取り組みも見学しました。
この他、行政・民間・地域住民が連携した内発的観光開発の1つの例として、岐阜県高山市の取り組みについても、講義を受け見学も実施しました。また、大型観光開発でありながら環境に配慮し、地域の文化も守り、なおかつ地域住民へ裨益している良例として、沖縄県の観光開発例を視察しました。各県の観光地を視察し、研修員は「こんなにも国内旅行を楽しむ日本人がいるのか」と皆一様に驚いていました。今まで観光開発といえば、外貨獲得のみを目的としたものだと思っていた研修員には新鮮な風景だったようです。
この他にも、日本でもまだ新しい分野である「産業観光」の例として、富山県の株式会社梅かま、日の出屋製菓産業株式会社にもご協力頂きました。「(株)梅かま」において研修員は、富山県独特の細工かまぼこの作業工程を見学し、そして自らも細工かまぼこ作りを体験しました。「日の出屋製菓産業(株)」では、地元で獲れたお米を使用した製品作りへのこだわり、そして地域住民に開けた店舗、工場の取り組みについて講義をしていただきました。その後、名産品の一つである「しろえびせんべい」ができるまでの作業工程を見学し、最後はみんなで「しろえびせんべい」の手焼きを体験しました。
観て・触って・体験して、地域の文化や名産品を学ぶと同時に、客の購買意欲をそそる仕組みになっており、客もそして会社も恩恵を受けられるようになっているのが産業観光の特徴です。
研修最終日のアクションプラン発表会では、多くの研修員が「地域住民と連携した観光開発」をテーマに上げていました。とりわけ印象に残っているのは、ブルキナファソとカメルーンのアクションプランです。ブルキナファソ研修員は、富山県の合掌造りを参考に、「自国の伝統的な家屋の保存を通した観光開発」を掲げ、またカメルーン研修員は「地域住民の生活、農業、畜産、工芸を体験できる体験型ツーリズム」を掲げました。観光開発はすぐに結果のでるものではありません。成功までに時間はかかりますが、今回の研修員が富山県などで学んだことを生かし、自国の発展に力を注いでくれることを期待します。