2011年度 課題別研修 「大洋州における地域保健での生活習慣病予防」

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開講式の様子。5か国10名の研修員

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学生との交流会でも運動をすることを忘れません!

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口腔衛生の講義。口の中を清潔にすることは生活習慣病予防にもつながります!

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栄養プログラムでは各国の伝統料理を1つのプレートにまとめ、みんなで美味しく食べました。

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作った伝統料理のカロリーを計算中。早く食べたい!!

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体に無理をかけず、効率良く運動を実施します。

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帰国後に実施する活動計画を発表しました。

2011年10月中旬から11月中旬までの約1か月間、大洋州諸国5カ国(バヌアツ、フィジー、マーシャル、ソロモン、トンガ)から10名の研修員が、新潟医療福祉大学(新潟県)において、生活習慣病予防対策先進国の日本の取り組みや、各国の実情に合った生活習慣病予防対策プログラムの計画・立案方法について学びました。参加した研修員は、各国の医療機関において指導者的立場にある現役看護師や栄養士、各県保健局の生活習慣病予防部門のプログラムコーディネータなどです。

WHOの2008年の調査によると、世界で生活習慣病が原因で死亡する人の比率が最も高いのは、今回の研修参加国の一つであるバヌアツです。また、病的肥満率の統計では、上位10カ国が大洋州諸国で占められています。その内第3位が今回の研修参加国の一つであるトンガとなっています。このように、大洋州では生活習慣病予防対策が喫緊の課題となっています。

今回の研修を受け入れてくださった新潟医療福祉大学は、これらの生活習慣病予防対策を様々な角度から実践するための専門家集団の集まりです。コースリーダーを務めてくださった村山伸子教授は、今回の研修参加国の一つであるフィジー国にJICA専門家(栄養)としても派遣された実績があり、対象国の実情を深く理解されている方です。また、村山先生のみならず、他の分野の先生方(スポーツ、看護)や大学全体のバックアップもあり、研修員は十分すぎるほど充実した研修を受けることができました。

この研修の面白いところは、研修員自らが被験者となり、研修で学んだことの効果を実感できる点です。

研修初日、研修員は日本の健康診断のシステムを学ぶと同時に、自身の健康診断を実施しました。確認する項目の多さに、驚いている研修員もいました。研修員の国でも健康診断というシステムは存在しているのですが、定期的に実施されることはあまり無いようです。自身の診断結果の悪さを知って愕然とする研修員が多々いました。自国の地域住民に教える前に、自己の体調管理をすることの大切さを、身を持って学んだようです。

研修前半は、日本の保健医療の現状と生活習慣病対策などの概要から、各症状(糖尿病、循環器疾患、アルコール依存、喫煙、口腔衛生、メンタルプログラム)における現状と対策について学びました。

研修中盤は、日本の看護職の現状、生活習慣病予防への地域の取り組み、児童生徒の健康教育プログラム、高齢者のプログラムなどについて講義と視察を実施しました。また、生活習慣病リスクを減らすための運動プログラム(水中運動、ウォーキング、トレーニング方法)や栄養プログラム(自国の料理のカロリー計算方法など)を、実践を通して学びました。また、この頃になると、自身の健康を気遣い、毎朝ウォーキングをする研修員も現れました!

研修後半では、丸1週間かけて、自国の自分が担当する地域(もしくは病院)における生活習慣病予防対策プログラム作成を行いました。実践するプログラムのターゲットは?目標は?活動内容は?などについて先生方のアドバイスのもと、各自でアクションプランを作成し発表しました。

研修最終日前日、再度健康診断を行い、研修初日からどれだけ内容が改善されたかを確認しました。そして研修最終日、診断結果を受け取り、血糖値の値が改善された研修員や、減量に成功した研修員もおり、研修内容が有効であることを体感しました。

本課題別研修は、3年間を1フェーズとして実施されました。課題別研修は本邦研修終了後も、研修員の活動状況を確認するためにフォローアップ研修を実施することが可能です。2011年度の参加研修員のみならず、過去の2010年度・2009年度の帰国研修員が、日本で学んだことを生かして各自の活動を実施しているか、何か問題は生じていないか、地域の実情に適合したプログラムを作成しているかなどを確認するため、フォローアップを2012年2月に実施しました。このフォローアップ研修の様子については、また別の機会にお話ししたいと思います。一つだけ言える事は、どの研修員も活動状況に差はあるが、日本で学んだことを生かしながら活動をしていたということです。今後、引き続き彼らの活動計画に注目していきたいと思います。