2012年度 課題別研修「中東CBR事業促進II」

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障がいを持つ方々がデザインから作成した自主製品(カレンダー)

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障がい児を持つ親の会の活動を視察

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企業を訪問し、障がい者の一般雇用の現状を視察

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グループホームで、障がいを持つ方自らが食事を作り、配膳された食堂

2012年6月18日から2012年7月22日までの約1ヵ月間、中東2ヵ国(エジプト、ヨルダン)の研修員5名が、福井県において、地域で暮らす全ての障がい者とその家族が地域社会への平等参加を実現するための取り組みや手法について学びました。参加した研修員は、各国の社会福祉関係省庁の行政官や社会福祉施設職員、障がい者を持つ親の会の代表者などです。

CBR(Community Based Rehabilitation)とは、医療アプローチのみならず、教育・職業・余暇活動など、障がいのある人を取り巻く地域の社会的な環境の改善・開発までを考慮した障がい者支援手法のことです。しかし、具体的なアプローチに関しては、CBRプログラムを取り入れる国や地域の状況に応じて異なっているのが現状です。これに伴い、障害分野における異なるニーズや立場、物の見方などのバランスをとる方法を示す良い例として、2010年11月にWHOからCBRガイドラインが発表されました。
研修の対象となっている中東地域では、障がい者とその家族の生活する地域社会を巻き込んだ障がい者支援手法が、少しずつ実施され始めています。しかし、依然として障がい者支援手法を、個人の機能不全として定義し、医療的見地からのリハビリテーションに偏って捉えられることが多いのが現状です。また、障がい者に対して差別的な社会の慣習や制度が、彼らの社会的障壁になっています。そのため、障がい者は地域社会との接点を持たず、保健・医療・教育・就労・余暇活動等の機会を均等に享受できず、社会参加が困難な状況です。

今回研修を受け入れてくださった「リハビリテーション分野の国際協力の会」の皆さんは、福井県立大学看護福祉学部社会福祉学科 小林明子教授(代表者)を始め、作業療法士、理学療法士そして実際に障がい児を持つ親の会の方々などさまざまな立場の方です。そのため、多角度から障がい者を取り巻く社会的・物理的バリアを取り除く方法を学ぶことができました。

写真は、研修員のある一日を追ったものです。
1枚目は、「社会福祉法人かすみが丘学園」を訪問し、障がいを持つ方々がデザインから作成した自主製品(カレンダー)の写真です。ここでは、知的障がいを持つ人への生活支援体制や就労支援体制の取り組み、そしてボランティアや地域とのつながり、グループホーム・ケアホームの役割を学びました。
2枚目は、障がい児を持つ親の会の活動を視察した写真です。ここでは、在宅で障がい児(者)をもつ親たちと交流し、親の会の発足理由や活動内容を知りました。また、親の会が果たしている機能や役割を考え、自国と比較して自国の課題を見出すことに努めました。
3枚目は、通販サービス大手ニッセンのグループ会社で、通販物流を担う(株)通販物流センターを訪問した時の写真です。障がい者の一般雇用の現状を知り、会社が行っている援助体制を知ることが目的です。障がいを持つ方も一般の方々と共に物流ラインの中に入り、重要な役割を担っていました。
4枚目は、かすみが丘学園系列のグループホームの様子です。障がいを持つ方自らが食事を作り、配膳をします。グループホームでは障がい者の自立生活の大切さやグループホームの支援体制について学びました。

1ヵ月間という短い間ですが、研修員は多くのことを学び、研修最終日には福井県で学んだ事を踏まえ、今後自国でどのような活動を実施していくのかについて発表をしました。

2010年度から続いた当研修は2012年度を持って終了となりました。過去の研修員らが福井県で学んだことを生かし、少しでも自国のために活躍することを祈っています。