2007年度 草の根調査団現地レポート

JICA草の根技術協力事業は、日本のNGO、大学、地方自治体、および公益法人の団体がこれまで培ってきた経験や技術を活かして企画した途上国への協力活動を、JICAが支援し、共同で実施する事業です。

今回は、JICA北陸で草の根技術協力事業を担当している梶亘平(市民参加協力調整員)が、3月に北陸の団体が実施している活動『中国内モンゴル自治区アラシャン盟(県)における包括的貧困遊牧民の生活支援と地域教育を通じた砂漠化防止事業(パートナー型・2007/4〜2010/3)』のため、中国を訪問し、プロジェクトの進捗状況を確認してきました。多くの関係者との意見交換を通じて見えてきた活動現場の様子を報告してもらいます。

JICA草の根技術協力事業 in 中国

【写真】

包む会の大沢さんと梶調整員

【写真】

すぐそこまで砂漠が迫っている

【写真】

砂漠に残る水流の跡

【写真】

遊牧民との意見交換

【写真】

帰国前の北京の様子

NPO法人世界の砂漠を緑で包む会(以下「包む会」)の活動現場についての報告です。同団体は、砂漠化の原因の一つと言われている放牧を減らすために、遊牧民の現金収入の向上を目指した活動を展開しています。

3月14日、北京から銀川へ。そこから車で走ること約1時間。プロジェクトサイトのあるアラシャン左旗(地区)に到着しました。約17万人が暮らしているこの地域に隣接するように、大きなゴビ砂漠が広がっています。多くの関係者との意見交換の中で、砂漠化の面積の拡大による砂嵐が、この地域に暮らす人々の生活を苦しめていることを再確認しました。

遊牧民自身は「できれば以前のように遊牧を続けたいが、そのためには砂漠化の拡大を防ぎ、草原の回復を待つことが大事で、これが我々の生活を守ることでもある」と考え、納得した上で、放牧を控えて緑化事業に参加していました。

包む会は、地域の小学校への環境教育にも貢献しています。対象校からは、「身近に起きている環境問題を取り上げることで、生徒の環境保護に対する意識が高まるので、今後とも積極的に取り入れて行きたい」との報告がありました。今年度から(植林)体験と知識の統合を目指した環境教育プログラムが実施される予定となっています。そのことからも彼らの環境教育に対する関心の高さと意気込みが伝わってきました。

私が訪問した2日間の間も、現場では日中両国の専門家を含む多くの関係者が、緑化に向けた活動を行っていました。これまで日本で培ってきた経験と技術を生かした活動の中に、中国側関係者との信頼関係の高さを垣間見ることが出来ました。まさに草の根技術協力のメリットがフルに生かされた事業だと思いました。
帰国前に立ち寄った北京は、砂嵐による影響のためか視界がとても悪くなっていました。砂漠化が進むアラシャン左旗(地区)から飛んで来る砂によるものなのかもしれません。

今年はプロジェクトの第2年次(全3年)となります。これまでの活動による成果が、今まで以上に、目に見えた形で表れてくることが期待されます。