2011年度 草の根調査団現地レポート(中国内モンゴル自治区)

今回、草の根調査団は中国・内モンゴルで砂漠化防止活動を続けているNPO法人「世界の砂漠を緑で包む会」が実施した草の根技術協力事業「中国内モンゴル自治区アラシャン盟における生態環境保全および持続可能な発展のための農牧民研修と社会参加促進事業(2010年2月〜2011年9月)」の終了時評価のため、中国・内モンゴル自治区を訪問しました。プロジェクトで計画された活動がどのように実施されたか、またその成果について現場から報告します。

JICA草の根技術協力事業 in 内モンゴル視察報告

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植林した土地の向こう側には広大な砂漠が広がる。

中国・内モンゴル自治区アラシャン盟(県)では、遊牧民の人口増加による過度な放牧、気象変動による降水量の減少、農地開発による地下水の過度の利用などにより砂漠化が急速に進んでいます。崩れた生態環境、拡大しつづける砂漠、農牧民の収入低下という問題解決のために、プロジェクトでは砂漠化防止のための植林を続ける一方、生態環境保護と農牧民の収入源確保のため、羊の放牧から施設で鶏や豚を育てる牧畜へ、従来の農業から少ない水で栽培できる節水農業やハウス栽培へ転換するため、農牧民にこれらの生態産業の研修を実施してきました。

総合研修センターの設立

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展示ホール(プロジェクトの展示予定)

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研修室(講義中心)

本プロジェクトの柱のひとつに農牧民が生態産業の研修を実施する「総合研修センター」の設立がありました。以前の草の根事業(支援型)で建設した施設を増設して、展示ホールや研修室が整備されました。これにより20以上のコースからなる幅広い分野での研修が可能になりました。

テンゲル砂漠のかん木植林事業

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ニクジュヨウ〜養命酒の原料にもなる

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カンゾウの苗木(風邪に効く漢方成分)

拡大しつづける砂漠を食い止めるため、砂漠にかん木(低い木)を植林してテンゲル砂漠(ゴビ砂漠の一部)の東淵に長さ10キロメートルにわたるグリーンベルトを築きました。かつては日本から持ち込んだ松の木など、さまざまな植物を植林して試行錯誤を繰り返してきましたが、従来砂漠の地に自生していた植物でなければ、砂漠に根付かないことがわかりました。現在は、砂漠に自生する三大植物として、ハナボウ、ソウソウ、サーカイゾウの植林を主に行っています。ハナボウは主に種を採り、中国政府機関が買い上げてくれます。ソウソウにはニクジュヨウという漢方の成分となる植物が寄生するので、セットで植えて農牧民の収入向上を図る有効な手段として力を入れています。

従来の産業から生態産業への転換

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点滴かんがいで栽培するナツメ

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農牧民が作った養鶏場(鶏卵用)

砂漠地域の伝統的農作物として、とうもろこしやひまわりがあります。農地では主にこの二つを栽培していますが、多くの地下水を使用するため、砂漠化の要因となる地下水の減少に拍車をかけています。そのためプロジェクトでは、代替作物としてナツメを導入し、節水農業の研修モデルとして10種類以上のナツメを栽培しています。細い管をナツメの根元に設置して、少量の水が落ちる設計にし、点滴かんがいを行っています。これにより70パーセントの節水が実現します。

また羊、ヤギ、ラクダなどの放牧の代替策として養鶏の研修を実施しています。研修センターで養鶏の研修を受けた農牧民が自宅で養鶏を営んでいます。

子どもたちへの環境教育

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生徒たちによるモンゴル伝統のダンス

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「う〜ん、どこにあるのかなあ〜?」

中国政府の政策によって、これまで草原地帯にあった遊牧民の小中学校は閉鎖され、学校は街中に集められました。そのため子供たちは親元から離れ、街にある学校の寄宿舎に住んでいます。

プロジェクトではアラシャン地域の小中学生を対象に環境教育を実施しています。私たちが訪問した日は、ほとんどが遊牧民の子供であるアラシャン左旗第8小学校の生徒たちが研修センターで環境教育を受けました。この日は私たちの訪問を歓迎して、モンゴル族伝統のダンスを披露してくれました。

生徒たちは自然の植物の中に自然にないもの(先生が隠したミニカーやぬいぐるみ)を探し、見つけたものを先生に報告しました。この後、鶏の採卵も体験して楽しそうでした。

今後も「包む会」は砂漠化防止のための植林事業と農牧民の生態産業への転換を支援していく計画です。その活動は草の根事業「中国内モンゴル自治区アラシャン左旗における農牧民潅木植栽専業合作社の支援事業(2011年4月〜2012年10月)」に受け継がれることになります。