来て見て知ったカンボジア−カンボジア視察報告−

【写真】大塚 忠寿さん石川県青年海外協力隊を支援する会 専務理事
大塚 忠寿さん

 石川県青年海外協力隊を支援する会の20周年記念特別事業の一環として、現地で活動している隊員を訪問し、活動状況を実際に見てみようということで、平成27年9月2日から6日までの5日間(実質4日間)カンボジアを訪問した。この視察には、当会の会員7名とJICA北陸の堀内支部長、清水担当職員を併せて9名が参加した。
 私にとっては初めてのカンボジアであり、当初、カンボジアに対して持っていたイメージとは異なる部分が随所にあった。
 このようなイメージを払拭してくれたのは、最初の訪問地である首都プノンペン市の、JICAカンボジア事務所での事前研修であった。
 特に、小島次長が説明してくれた「カンボジア事情早わかりー来て見て感じて カンボジア!!」であり、まさにカンボジアの早わかり手引書といったものであった。
 全体としてみると、かなり以前から、カンボジアに対して日本政府やJICAが相当の支援をしてきたという印象を受けた。この辺りを中心に、順次カンボジア視察報告を展開していきたい。
 表題を、「来て見て知ったカンボジア—カンボジア視察報告」とした。

世界遺産アンコールワットの国

【画像】 カンボジアといえば、何といっても世界遺産「アンコールワット」である。アンコールワットの1日入場券は、一人20ドルであるが、多くの観光客が世界各地から訪れる。その入場料収入だけでも、日本円に換算して、6億4千万円にのぼるといわれている。
 このアンコールワットは、12世紀前半、アンコール王朝時代にヒンドウー教寺院として建立されたものであり、遺跡をめぐっていて、カンボジアの内戦時代によく守られてきたなと感慨を覚えた。
 このように、歴史を積み重ねてきた世界遺産中の遺産ともいうべきアンコールワットも、長い年月の間に、所々で崩れたり、破損したりしており、これらをフランスをはじめ各国が、保存・修復にあたってきた。日本も1994年にアンコール遺跡救済チームを結成し、保存・修復に力を入れてきた。
 また、日本の大学も参加しており、我々が視察したアンコールワットを望む池の端の建物の前には、早稲田大学が保存修復にあたっているとのパネルが掲示されている。
 さらに、上智大学を中心とした日本の大学や研究機関が「アンコール遺跡国際調査団」(国内9大学、研究機関)を結成し、保存修復にあたっているという。この中には、金沢大学も加わっていることが後日の調査でわかった。
 なお、金沢大学には、カンボジアで最大の湖であり、カンボジアの歴史の移り変わりに関わってきた「トンレサップ湖」の地質調査をし、分析を行ってきた学者がいた。

経済成長著しい国

【画像】 カンボジアは、内政混乱期を脱して約20年になるが、都心部は活気があふれ、経済も徐々に上向きになってきている。
 特に、近年は、周辺国の中で、最も経済成長が著しく、最近の経済成長率は7%を超えている。これはいわゆる経済特区(SEZ)が大きく貢献しているものとみられる。
 SEZの主要なものだけでも、カンボジア国内には10か所あり、その中で最も大きいSEZは、首都プノンペン近郊の「プノンペンSEZ」であり、ここには日系企業が約40社進出している。最近では、平成27年5月に、アートネーチアのカンボジア工場が操業している。
 北陸三県では、富山県のタイワ精機(精米機製造)が、このSEZに進出しているが、石川県の企業の進出はなく、カンボジア国内全体でもゼロである(福井県の企業は1社進出)。
 このSEZでは、縫製企業2社を視察した。生産品目はすべて日本向けであるが、1社は、いわゆるチャイナプラスワンであり、もう1社は脱チャイナの企業であった。対中国との関係をみると、このSEZにおいて二つの方向をみることができた。
 二つの工場とも、いかに生産性を上げるかに苦心しているようであり、たえず目標と実績をチェックし、習熟度アップなどの対策をたてているとのことであった。
 もう一つ工場管理者が懸念しているのは、最近の最低賃金の上昇傾向である。まだまだタイやベトナムに比べて低いが、今後どうなっていくか注目されている。

産業構造面からみると農業の国

【画像】 カンボジアは、外資導入などにより経済面で成長が著しいが、産業全体から見ると農業国である。人口の65%が稲作を中心とする農業に従事しており、米は、隣国のタイやベトナムに輸出している。
 近年、カンボジアの農村部では、タイやベトナムに出稼ぎする人が多く、逆に人手不足になり、その一方で、農業の機械化が進んだ(安達カンボジア事務所長)とのことであり、工業を中心とする経済発展は、今後、農村部にも一段と変化をもたらすのではないかと思われる。
 現在、カンボジアは、1人当たりGDP(年間)が1000ドル程度であり、周辺国に比べてまだまだ低く(タイの1/6、ベトナムの1/2),いわゆる発展途上国が次のステップへ進むGDPライン3,000ドルにはほど遠い。
 このラインにいかに近づけるか、国内産業の各分野で課題を解決していかなければならない。

青年海外協力隊やシニア隊員が活躍している国

 今回のカンボジア訪問の主要な目的の一つは、カンボジアで活動している青年海外協力隊員やシニア隊員の活動している現場を訪問し、実情をみることにあった。
 カンボジアは、東南アジアの中では、最も多くの隊員が派遣されている国であり、教育分野をはじめ多くの分野でカンボジアの発展に協力している。これは、日本の目に見える国際貢献であり、その最前線に立って活動し、貢献している状況を見ることができた。
 特に、カンボジアの人口構成をみてもわかるように、40〜50代が少なく、逆に若年層が多い構成(平均年齢24才、日本46才)であり、この若い層の人材をより強化し、厚くしていくことが長期的な課題であり、派遣隊員の一層の活躍が期待される。
 今回の視察では、8人の隊員(青年2人、シニア6人)に会い、懇談した。いずれの隊員もそれぞれの分野で先頭に立ち、懸命に活動していることに感動を覚えた。
 この中で、北陸三県出身者は、石川県出身の宮下ゆかりさんだけであったが、派遣先を訪問した際、通訳をしてくれたり、活動の内容を丁寧に説明していただいた。特に、運動会を通じて生徒との一体感を醸成したり、地域の人々もまきこみ盛り上げており、その積極的な取り組みに視察メンバーのみなさんは一様に感心していた。
 このようなすばらしい体験を日本に帰ってから関係者に伝えてほしいし、これからの仕事に生かしてほしいと願うものである。

最後に、これから発展が期待される要素を持つ国

 カンボジアはインドシナ半島の中心部に位置し、東はベトナム、西はタイに隣接し、現在、ハノイ〜プノンペン〜バンコクを結ぶ南部経済回廊やカンボジアを通る東西回廊、南北回廊が整備途上にある。日本もODAを通じて経済回廊の整備などに当たっており、南部経済回廊には、その象徴的な橋「つばさ橋」が完成している。
 このような経済回廊が順次完成し、また、日本が参加するメコン川流域経済開発が進展
していけば、カンボジアの位置的有利性が一段と増してくるであろうし、さらに、東南アジア諸国連合(アセアン)という経済市場の中心に位置する国として、さらに発展が期待されるのではないかと思う。カンボジアの今後の発展過程に注目していきたい。
 特に、当面、電力、道路網などのインフラ整備の状況や人材育成機関の充実、SEZにおける機械加工関連企業の集積がどのように進展していくか注視していきたい。