400年の歴史 越中式定置網を世界へ

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氷見地区小型定置網協議会会長 草の根技術協力漁業専門家
浜谷忠さん

氷見市とJICA北陸は共同で草の根技術協力「タイ国資源管理型沿岸漁業の技術支援プロジェクト」を2005年から3年間の予定で実施しています。今回はそこで定置網漁業の専門家としてこのプロジェクトに関わっていらっしゃる浜谷忠さんにお話を伺いました。浜谷さんは氷見市でも現役の漁師です。現場から見た国際協力への思いを語ってくださいました。

事業の始まり

タイ国での草の根技術協力のきっかけは、2002年に氷見市で開催した「世界定置網サミット」に同国からの参加があり、是非、定置網漁業を導入したいとの申し出があったことでした。その後、氷見市は独自に2年間、タイ国への技術指導を行ってきましたが、その技術が定着するには、まだまだ協力が必要な状況でした。そこで2005年、地元の漁師からも強い希望があったこともあり、氷見市とJICA北陸とで草の根技術支援事業が実施されることになりました。

参加のきっかけは漁業への思い

私の若い頃は日本の漁業が最盛期で、私自身もトロール漁船やマグロ漁船に乗って世界中へ出漁しました。今はそのことが世界の漁業資源の減少につながったのかと思うと胸が痛みます。そして、漁業資源の保護のために自分が少しでもやれることがあればと思い、漁業専門家として活動しようと決心しました。氷見発祥の伝統的な漁法「越中式定置網」は漁業環境にやさしい漁法です。この漁法を海外に技術移転しようというのが私の夢です。

やってよかった国際協力

普段は氷見の海で何気なしに定置網漁業を営んでいましたが、自分自身それを海外の人たちに指導することを通じて、客観的にみることができたと感じます。そして、その定置網漁業というものが漁業資源に非常にやさしいことを実感できました。

活動を通じて、タイ国内でも獲れた魚の流通に変化が見られるようになりました。今までは漁師が消費者に魚を買ってもらっているというように見受けられましたが、年々漁師が魚を売る立場というものを強めているように感じます。それは、値段を自分で決められ、獲れた魚にも付加価値がつくようになってきているということだと思います。そして、魚の売り上げが沿岸漁業者の生活を潤すようになってきているのではないかと思います。

取り組みの先に見えるものは

研修員がまじめに取組んでくれたこと、彼ら自身、定置網による漁法が有効であることがわかってきたこと、そしてグループ化の大切さを認識しつつあること、これが指導していてやりがいを感じているところです。そ
れに加えて、タイ国内はもちろんですが、周辺諸国からも定置網を積極的に導入したいという依頼があり、確実に波及効果がでてきていることもうれしい限りです。
あとは何と言っても氷見市の水産団体や市民が積極的に支援してくれたことが非常に助かりました。

苦労と感謝

技術指導をしている際には、話した意図が通じたかどうか確認が難しく、最初は言葉の面で苦労しました。しかし、やっているうちに相通じるようになってくるものです。やっぱり漁業者同士だということを感じます。次にくるのは暑いことと食事です。やっぱり日本食が恋しくなりましたね。

技術指導を行っていく上で常に重要なことは、漁師の技量と漁具、漁村、漁業環境にあったタイ式の定置網漁法にするということです。また、事業後半の課題は、組織化を促進させることと、漁業経営を成り立たせていくことです。この二つの課題はお互い協力して実りのあるものにしたいです。

最後に、この事業が成功している最大の要因はJICAをはじめ東京海洋大学有元、馬場、武田教授、そして氷見の水産団体や市民の協力のお陰だと心から感謝しています。

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タイからの研修員を氷見に迎えての研修、タイからの研修員は真剣そのもの

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船に乗っての研修、タイの研修員にとって漁師の技量が試されるところ

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網の補修についての指導をしている、言葉で説明するよりも実際にやってみることが大切

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タイ式定置網で獲れた魚、氷見とタイ、獲れる魚は違うけれど、海から魚を上げる瞬間、それが漁師にとっては一番うれしい時であることは変わらない