上條所長とERIKOさんの対談

2017年3月27日

スペシャリティ・コーヒーの日本へのプロモーションを目的として、モデルで定住旅行家のERIKOさん(なんプロメンバー)にホンジュラスのコーヒー産地を旅していただきました。協力隊員の活動現場や先住民(レンカ族)コミュニティー訪問など、10日間の日程は盛りだくさん。ホームステイを控えた金曜日の午後、ホンジュラスの印象やコーヒーなど、様々な話題についてお話しいただきました。

(聞き手:上條 直樹事務所長)

上條所長
ホンジュラスに3年ぶりに来られて、気づいた変化や全体的な印象はどうでしょう。
ERIKOさん
3年前は大使館に来ない方がいいと言われたくらい治安が悪かったのですが、今回は肌感覚として安全になった印象です。それに、インフラがすごく良くなってますね。きれいな道が増えていると思いました。
上條所長
進歩は遅いですが着実に進歩していることは私も感じていることです。
ERIKOさん
田舎はやはり安全でしたし、都市部とは違うと思いました。

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上條所長
コーヒー生産地を訪問されて、地元の人々と話す機会があったと思いますが。
ERIKOさん
コーヒー農園のお宅にも泊めさせていただきましたが、最も印象に残ったのはレンカ族のコミュニティー訪問です。先住民のみなさんが織物を紡いで生活しているところです。これまでその存在自体を全然知らずにいました。民族衣装を一緒に着させてもらい、食事も摂らせていただいたのですが、すごく喜んでくださり、花火まで打ち上げて下さいました。村の子供たちも全員集まって国歌を歌ってくれたりと盛大な歓迎をしていただきました。村の中を歩いて、少しお話もさせてもらいました。
上條所長
私も会ったことはないのですが、会って話すこともできるんですね。どんな人たちですか?
ERIKOさん
思っていたよりもっと日本人に近くて、恥ずかしがり屋な感じでした。街中の人は感情を外に表す感じですが、レンカ族の人はちょっと奥ゆかしいというか、気持ちが深いというか。すごくうれしかったです。
上條所長
では、親近感を強く感じたということですか?
ERIKOさん
そうですね。食べ物もおいしかったですし。

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上條所長
ホンジュラスのコーヒーを召し上がってどうでしたか?いろいろな国でコーヒーを召し上がっていると思いますが、特徴はいかがでしたか?
ERIKOさん
私が訪問したマルカラやラ・パスでは、結構酸味が強いものが多かったです。聞いた話ですが、「アジア人は酸味が強いのが大好きでよく買ってゆく。日本人は特にそう」と言われました。私個人としては酸味が強いのはあんまり。なので、ちょっと濃い目のチョコレートの味がするコーヒーが自分の好きなタイプ、ということが今回テイスティングをして初めてわかりました。カッピングをしたこともなかったですし、コーヒーの味の違いに初めて自分で気づくことができました。
普通に飲ませていただいていたコーヒーですが、仮に帝国ホテルで出されてもおかしくないと感じました。
上條所長
すごい。それほど、ハイクオリティーということですか?
ERIKOさん
そうですね、ハイクオリティーだと思います。スゴく。
それから、コーヒー鑑定の体験をさせていただいたのですが、コーヒー鑑定士のレベルが高い。経験値や知識の量が多く、自分たちがカッピングしているコーヒーがどういうプロセスを経て作られ、どういう物語を持っているのかということをちゃんと把握していらっしゃる。何を聞いてもすぐに答えてもらえましたし、JICAの研修に参加した人は知識を自分たちだけで持つのではなく、できるだけ多くの人とシェアして、その価値を拡げてゆくことを実践していました。一人だけしか日本に行っていないとしても、その価値が大きく広がっていることをすごく感じました。
上條所長
日本で学んだ知識を拡げて下さいとはお願いしているものの、なかなかそうはいかない部分があります。それが実践されていたとしたら素晴らしいことだと思います。
ERIKOさん
そうですね。私が訪問したところは全てそういう感じでした。たぶん、ホンジュラス人の性格からして、話したい、自分の経験をいろいろ伝えたいということがあるんだと思います。
上條所長
自分の想いを伝えたいというホンジュラス人の一面はホンジュラスにとって強みですね。
ERIKOさん
そうですね、本当にそう思います。

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上條所長
ちなみに、ホンジュラスコーヒーを日本で飲むとしたら、どんな時に飲むのが良いと思いますか。
ERIKOさん
お昼を食べた後に、よくカフェでおしゃべりをしていますね。ああいう感じだったりとか。あとは朝、目覚めた後に飲むとか。すごく繊細な味ですよね。いろんな用途、シチュエーションに当てはまるようなコーヒーだと思います。日本人は好きだと思います。
和食は出汁の微妙な、繊細な味で構成されていると思いますが、それを食べている日本人にとって、酸味がありフルーティーなホンジュラスコーヒーの繊細な味は美味しく感じると思います。
上條所長
どんなシチュエーションでも合ってしまう。それは不思議な、ホンジュラスコーヒーならではの面白い部分ですね。酸味はあるけれど、特にクセがあって相性の良い悪いがあるという感じではないということでしょうか。
ERIKOさん
そうですね。強い、ボディーがあるコーヒーだと、デザートを食べながら飲むのが美味しいと思いますが、ホンジュラスの酸味のあるエレガントなコーヒーは、コーヒーだけで飲めるという感じですね。
まだ一般のホンジュラス人の中ではコーヒーを飲む習慣があまり定着していません。コーヒーにパンやクッキーを漬けて食べることが田舎の方では普通ですし、すでに砂糖が入っていたりもするので、都会の人が飲むのとはちょっと違うのかもしれないですね。
上條所長
いろいろな飲み方みたいなものも日本に紹介してゆけば、ホンジュラスコーヒーを飲む人たちも増えてくるかもしれないですね。
ERIKOさん
そうですね。

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上條所長
コーヒーの帰国研修員や協力隊員と会ったり話したりした印象は?
ERIKOさん
私が会ったのは藤具さん(コミュニティー開発/マイクロファイナンス)、渡辺さん(助産師)、岩水さん(感染症・エイズ対策)、古賀さん(小学校教師)です。みなさんホームステイしているので、地元の方との距離感がとても近い。
一番お話したのは助産師さんですが、日本とホンジュラスの出産観がとても違うというのが印象的でした。彼女が話していてすごく印象的だったのは、ホンジュラス人は「人のせいにしない」、「医療のせいにしない」ということ。自分の身体だったり、産まれて来た赤ちゃんの状態がどうであっても医師のせいにしない。処置が良くなかったとは言わず、運命だったと受け入れてしまうことがあるみたいです。彼女は日本でも働いていたのですが、日本のように責められることが全くなく、ホンジュラス人の女性は「本当に強い」っておっしゃってました。
上條所長
それは知らなかったですね。でも、そういう医療のところだけではなくて、自分に責任を持って、しかも強いというような女性が開発の世界でも必要になってくるのでしょうね。
ERIKOさん
そうですね。ボランティアということで、現地で活動することだけでものすごいことなんですけれども、逆に日本人を助けることがあると強く感じました。日本にいる同世代にはない価値観を隊員の皆さんは持っていると思うので、それをもっと発信することで、日本人が抱えている問題に対する解決の糸口があると思います。今度は日本に対してのボランティアというか。
上條所長
日本人が助けられるということもあるのではないか。そういうところには隊員が発信してゆくと。
ERIKOさん
そうです。それはすごくしていった方が良いと思います。

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上條所長
特に隊員に関してですが、同世代の日本人と触れ合って思ったことは?
ERIKOさん
皆さんポテンシャルが高い。また、協力隊になるまでの経緯を聞くと、とても難しいことを初めて知りました。選考など、特に専門の方などはそんなに大変な試験なんだ、と感じました。私も大学で講師をさせてもらうことがありますが、海外に興味がない学生が多いです。そのような中で若い方たちが頑張っている姿を見て、すごくビックリしました。結構両極端な時代なのかな、と感じました。海外で活躍する人はするし、その中間でどうしようかという若者がとても少ない時代のように感じます。
上條所長
そういう若い人たちを見てどう思いますか?積極的に今の若い人たちも海外の経験をした方がいいのか、それともそうでないのか。勧めたいですか?
ERIKOさん
得られるものがとても大きいと思います。それに守られた環境があります。私は一人で旅をし、現地で定住させてもらいますが、何も守られていない状態なのでとても羨ましいと思います。JICAボランティアの状況は整っている、そういう意味で、いわゆる保険がある状態なので、国際協力に興味がある人にとっては、個人で行うよりも入口、敷居が低いと思います。
上條所長
関心がある人は登竜門として積極的にこういうプログラムを活用していただきたいという印象でしょうか。
ERIKOさん
そうですね。あとは彼らがこちらで経験していることが日本で大きな影響を与えるように思います。特に教育現場や医療に携わる関係者に対して。たとえば、自分が教えてもらっている先生が何かにチャレンジしている姿を見ることはとても影響力があると思います。そのため、特に教育者は積極的に参加して欲しいなと思います。2年間退職しなくても参加できるとも聞きましたので、ぜひ行っていただいたら、もっと日本も変わるのではないでしょうか。

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上條所長
今回の滞在を経験して、日本に発信したいことについて。特に、若年層世代に対して。
ERIKOさん
日本が海外に対して実施していることをもっと知ってもらいたいと思います。自分たちが考えているよりも多くの人が日本のことを知っていて、日本に助けられていると思っている人たちがいるということを。それは日本にずっといると分からないことだと思います。そういうことをもっと知ってほしいと思います。
また、日本が戦後、経済成長する前に中南米の国々は本当にたくさんの協力を日本にしてくれたので、今そのお返しをしているという長いストーリーがあります。そういうことを知らないと、なぜ日本は国際協力をしなければいけないのか、という考えになってしまいます。そのため、そういう物語をぜひ知ってほしいと思います。中南米のお話は少ないので、ぜひ教科書に入れていただきたいと思いますね。世界で一番大きな日系コミュニティーがある場所ですし、日本とは本当に深い関わりがありますので。

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上條所長
全体を通じて何かJICAに求めることやアイディアがあればお聞かせ願いますか?
ERIKOさん
もっと発信をしていただきたいですね。国際協力に興味がある人だけが見るのではなく、もう少し身近なテーマを切り口にして。例えば、ホンジュラスの子育てや働き方、親子関係や老人との関わりなど。全く興味がない人でも、これらのテーマは日常的にあることなので興味を持たざるを得なくなると思います。それは多分、隊員の人たちが現地の人々と常にコンタクトを取ってよく知っていることだと思います。それを記事にして何かで発信をしてゆき、ホンジュラスという名前が広まっていったらいいですね。それにコーヒーはもっと有名になってほしいと思います。

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上條所長
ERIKOさんのブログなどを読ませていただいたのですが、地道な活動、効率性優先ではなく、それまでのプロセスが大切と書かれていました。それは私たちの中では人間の能力開発とか組織強化。キャパシティー・ディベロプメントと言われるものですが、それらが大切と考えています。そもそもそれらを実施するためには人間の意識を改革する必要があります。これには長い時間がかかり、瞬間を見ると何も変化が起きていないように感じられます。けれども長い時間を経ると変化が見えてくることがある。とても地道なものと感じますが、ERIKOさんの地道やプロセスについてのお考えは?
ERIKOさん
短い期間で成果を求めると失敗できません。失敗は財産、HOW TOになるのに、そのHOW TOを持たずに成功しようとしてしまうやり方が定着している。けれど、これは最終的には効率が悪いやり方と私は思っています。そこに至るまでのプロセス自体が大事で、到着するまでの物語を作ってゆくことだと思います。一つ一つのプロセスに意味があって、今が大切であり、結果はその後のオマケと考えています。日本的な、あるいは資本主義的な考えかもしれませんが、今は我慢して、いつか良くなるという考え方がありますが、そうではなくて今も楽しみながら、充実しながらやるということが本当にたくさんのKNOW HOWと失敗を生んで行き、結果的にもっと大きなものを動かすと考えます。
ラテンの人たちはプロセスを楽しむことが得意だと思うので、向いていると思います。
上條所長
逆に、そのラテンの文化、仕事や人生に対する姿勢みたいなものも、もっと日本に入ってくるといいかもしれませんね。
ERIKOさん
そうですね。本当にそう思います。
上條所長
本日はどうもありがとうございました。

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