ホンジュラス国首都圏斜面災害対策管理プロジェクト専門家インタビュー(第2回原崇専門家)

2021年10月7日

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タジキスタンでの地形判読講習の様子

2019年2月より開始された「首都圏斜面災害対策管理プロジェクト」の日本人専門家チーム3名にプロジェクト活動の醍醐味について教えて頂きました。

第2回目は原崇専門家((応用地質(株))とのインタビューです。原専門家は、理学部で地質学を学ばれ、入社後は地質工学関連の仕事に従事されてきました。特に、斜面災害を斜面の地質や地層構造の観点から解析し、災害の防止を検討することを得意分野とされています。原専門家はこれまで、20年間の経歴のなかで、西アジアのアルメニアやトルコなど、ラテンアメリカだけではなく世界各地でご活躍されてきました。

Q1.「首都圏斜面災害対策管理プロジェクト」での主な業務はどのようなものなのでしょうか?

私の担当は地質調査とその解析です。プロジェクトではテグシガルパ市内の危険性の高い地すべり地や落石地などの斜面を調査し、地質や地形的な特性に合わせて適切な対策工の実施まで行うことが支援内容とされています。テグシガルパはすり鉢状の盆地の中に形成された都市ということもあり、街中心地から輪を描くように急斜面が広がっています。ここ数十年で人口が大きく増加したことで、貧困層を中心として斜面地域での住宅建設が進みました。地すべりなどもこうした貧困層が密集して住むような地域で起きていて、ただ単に地質や地形条件だけではなく、すでに住み着いてしまった人たちの生活を守りながら、最善の対策工を決定していくことが大切なことになります。調査では住民からの聞き取り調査を行ったり、市役所の職員らと様々な地すべりサイトを訪問したりと、広い目でこの街の特徴をつかみながら、予算に限りのある市役所の懐事情を考慮しつつも、住民に寄り添った防災事業が促進されるよう日々努力しています。

Q2.プロジェクトの業務は順調でしょうか?

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執務室でのデスクワークも得意です。

新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響で、現地に行くことができなくなり、これまで行ってきた技術移転が行えなくなりました。このことで、当初予定していたスケジュールからかなり押していますが、カウンターパートらの協力でなんとか予定通りに業務を完了させることができるかなと思っています。

ここでの仕事をする上でとても気に入っているのが、カウンターパートである市役所職員、ホンジュラス自治大学の先生方等の参加意欲の強さとプロジェクトを主導していこうという主体性です。カウンターパートの多くはこちらの活動を全力でサポートしてくれて、一緒に作業をしようという意欲がとても伝わってきます。そうされるとこっちも頑張ろうという気になります。まさに、正のスパイラルです。

Q3.専門家として技術協力プロジェクトにかかわる楽しさについて教えてください。

私の専門は地質なのですが、専門家として海外に行ってその国の地質屋さんと仕事をする機会があります。地質はその国その土地での特徴がありますので、その土地の地質を一番知っているのは日本の専門家ではなく地元の地質屋さんです。私は専門家として現地のカウンターパートに技術支援を行いますが、その反面、彼らから現地の地質のことを学ぶことができます。彼らと現地の地質について意見交換や議論をするのは楽しいです。

Q4.このプロジェクトでの技術移転を通し、カウンターパートへ期待することなどありますか?

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プロジェクトでの地下水の検査方法の指導

今、気候変動による大規模な土砂災害が世界各地で発生しています。今まで起きなかった場所や規模で災害が発生する恐れがあります。そういった状況の中で少しでも住民の被害が軽減できるよう、市役所や大学など関係省庁が対応できる技術や知識、経験を、このプロジェクトを通して少しでも身に着けてほしいと思っています。

Q5.ホンジュラスでの生活は、楽しいですか?

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カレーをたのしむ原専門家

テグシガルパの生活はとにかく外を自由に出歩けないのがとても残念です。車で旧市街地(セントロ地区)の雰囲気のある街並みの中を通りながら、こういうところを散歩や買い物を気ままにしたいと思うのですが、それがままならないのが残念です。ホンジュラスの人たちはみんな陽気でとてもいい人たちばかりで、一緒に食事をしながらワイワイ談笑する時間は本当に楽しいです。コロナの影響でそれさえもできない状況が続いていますが、もう少し自由にできるといいなと常々思っています。あと、ずいぶん慣れましたが、斜面災害が起きる場所は貧困層が多く住む場所ということもあり、安全面にも気を遣います。そういう場所に行くときには市役所の警備が同行してくれるのですが、護衛なしで自由に見たいところを見て調査ができるようになるといいなと思います…。

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