「ひとりひとつ」、モノの支援ということ

Twitter Facebook はてなブックマーク メール

2017年3月、青年海外協力隊発足50周年記念ソングの印税で、私の任地に76本のリコーダーが寄贈されました。

私は今、このリコーダーを使い、小学校で音楽の授業をしています。

「音楽」という教科のないベナンの小学校にリコーダーを導入した理由はいくつかありますが、その一つに「一人に一つのものが行き渡るように」という願いがありました。

ここでは「モノの支援」ということについてお話したいと思います。

ベナンの小学校では、子どもたち一人一人に学用品が行き渡らず、数人で一つのモノを共有しています。切れないハサミ、粘着力のない糊、芯の折れた短い鉛筆といった、非常に質の悪いものを、順番を待ち、あるいは奪い合うようにして使っています。教科書さえも一人一人には与えられていません。

協力隊の活動は、「モノ」の支援が目的ではありません。しかし私は、この実態を見て、一人一人が自分だけのためのものを持つという豊かさを、一度でいいから体験してほしいと思いました。

リコーダーは76本。一人に一つ、十分に行き渡る数です。

しかし「一人に一つずつの楽器を持たせたい」というこのシンプルな願いは、初日に見事に打ち砕かれます。

贈呈式を行った日、生まれて初めて見るリコーダーに触れたいあまり、多くの子どもが殺到し、奪い合いが始まりました。リコーダーが何なのか、使い方さえもわからないのに、です。力のある子が二本も三本も独り占めしたり、こっそり持ち帰ろうとしたりする子が続出したため、現場は、大人が慌てて回収するという大混乱に見舞われました。

そのため、リコーダーの贈呈式なのに、記念写真を撮る時にも子どもたちにリコーダーを持たせてあげることができず、隊員としては、大変切ない思いをしました。

モノは十分にあるのに、音楽の授業以前の問題が山積みでした。現地教員の協力のもと、最初は代表の子に一本だけ持たせる、次に何人かで共有しながら、というプロセスを経て、ようやく音楽の授業を開始できたのは、それから二ヵ月後のことでした。

これが、私が隊員として直面した現実です。
「モノ」の支援だけでは何も変わらないということ。
そして、だからこそ、私たち協力隊員はここにいるのだということ。

奇しくも、今回の寄贈の元となった歌のタイトルは「ひとり ひとつ」。この76本のリコーダーが、「一人に一つ」行き渡り、大切に受け継がれていくようにと願いながら、今日も試行錯誤の日々を送っています。



(関連リンク)

青年海外協力隊50周年イメージソング「ひとり ひとつ」アンダーグラフ真戸原直人さんがアフリカの子どもたちと演奏——歌唱印税でリコーダー寄贈(2017年5月26日、トピックス)

各国における取り組み ベナン

【写真】

1本のリコーダーに、興味津々の子どもたち

【写真】

1人に1本ずつ配って、リコーダー授業

【写真】

2017年3月、リコーダー贈呈式


Twitter Facebook はてなブックマーク メール