本気と本気がぶつかるとき

Twitter Facebook はてなブックマーク メール

1992年4月、青年海外協力隊としてマラウイの地に降り立った若者がいた。中川総、27歳。隊員活動と並行して、やがて彼は剣道の普及に取り組み始める。遠い東洋の国のスポーツをアフリカの地でゼロから発信・指導していくのは決して簡単ではなかったはずだ。道具は中川氏が日本から持参した二本の竹刀のみ。子供たちはモップの柄を使って練習していたという。

時は流れ2017年1月、一人の大学生がマラウイにやって来た。黒田潤一郎、剣道歴16年。中川氏との対談をきっかけに、5週間の休暇を使ってマラウイ行きを決めたのは、25年というマラウイにおける剣道の歴史の中で、一度も世界大会に出場したことがないという事実を耳にしたからであった。

その情熱の源は何なのかという私の問いに彼は答えた。
「本気と本気がぶつかるとき、物事は動くんです」
その意味するところを問うと、彼はオースティン・ソンバさんの存在を教えてくれた。中川氏のかつての教え子であり、マラウイで剣道を普及させた功績が讃えられ、彼が代表を務めるマラウイ剣道協会は2013年に日本の外務大臣表彰を受賞した。

マラウイに剣道を普及させたいというソンバさんの本気と、遠い日本からマラウイへやって来た黒田氏の本気が出会った瞬間を私は見た。そして歴代・現役の協力隊の中にも、マラウイでの剣道普及に尽力している人たちがいたことを知った。中川氏と黒田氏の間にあった長い歳月は、決して空白ではなかったのだ。

ある土曜日の午後、私は再び道場へ足を運んだ。屋根などない青空道場で、今日も力強く竹刀を振るマラウイの青年たちがいた。彼らが手に握っているのは、もうモップの柄ではない。立派な竹刀だ。防具を身につけた彼らの姿が美しく見えた。

【写真】

入門して間もない子どもたちを指導する黒田氏

【写真】

後列右から三人目がソンバさん。前列右端は筆者。

Twitter Facebook はてなブックマーク メール