ない、ない、ないの中で

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マラウイの医療現場には「ない」があふれている。薬が「ない」、医療器具が足り「ない」、ベッドが「ない」、病院食が「ない」。さらに、水が「ない」から手を洗え「ない」、電気が「ない」から酸素が供給でき「ない」、医療スタッフが足り「ない」から患者全員を診ることができ「ない」…。こんなないない尽くしの国に赴任して1年3ヵ月。この国の医療を支える中央病院と地域医療を担う県病院で看護師として活動を続ける中で、見えてきたことがある。

例えば、この国には何もないのかと言うと、そうでもない。中央病院では、寄付で集まった物が部屋に所狭しと積み上げられ、管理できていない状況だ。私は看護師として、こうした環境を改善すべく、日本流の「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」(5S)を徹底する「カイゼン」活動に取り組んでいる。活動初日、「ここを改善してほしい」と連れて行かれた倉庫を見た時は気が遠くなった。

県病院では治療薬がなかったり、停電で酸素が供給できなかったりしたために救えなかった命も少なくない。だがこれも、「ない」ことだけが問題なのではなく、物や設備・施設の管理環境整備、医療器具の使い方、感染症対策など基本的なことがきちんとできていれば、救えた命があったと思う。この国の医療の現場を見てきた中で、今改めてカイゼン活動の重要性を感じている。

「ないから、ちょうだい!」「マラウイだから仕方ない!」

そんな現地の人たちの言葉にうんざりすることもあるが、人手が足りない中でも夜を徹して働き、患者を助けられない日々にもくじけずにいる現地の同僚たちの姿を見ていると、私も少しでも彼らとともに患者さんのためにできることを続けたいと思う。

医療の現場にいると、色んな国や団体の支援を目の当たりにする。残念なのは連携がとれないこと、つながっていかないこと。本当に必要なところに手が届かないもどかしさ。助け合い、協力すれば、救える命がもっとあるはずなのに。私一人の力では到底およばないことが多すぎるが、私が携わる現場だけででも何かの架け橋になれるように頑張りたい。この国で、ところどころに感じる先輩隊員たちの足跡を励みに、pang’ono pang’ono(ゆっくりゆっくり)諦めずに続けていきたいと思う。



(関連リンク)

各国における取り組み マウライ

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中央病院の倉庫は物であふれかえっている

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期限切れの薬品や医療物品。救急車1台がいっぱいになる量を処分

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仲間と病棟を巡回し、カイゼンの指導を行う


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5Sを採り入れた病棟を見学

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5Sを実施した処置カート。必要な物を誰でもすぐ使えるように

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県病院の使っていなかった倉庫をスタッフや学生と大掃除


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