コロンブスの卵−養蜂農家と同じ体験をして初めてわかること−

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モザンビーク南部イニャンバネ州のジャンガモ郡経済活動事務所に、野菜栽培分野の青年海外協力隊員として派遣されています。活動に取り組む中で、農家の収入向上に貢献できる分野の一つとして、養蜂の普及を、同じ州に派遣されている村落開発分野の隊員5~6人とともに進めています。

季節ごとに年4回、ポルトガル語と日本語が堪能な日系ブラジル人の養蜂専門家を講師として招き、私たち隊員がOJT(実地研修)を受けて、知識や技術を習得し、現地農家への普及につなげています。

日本にはいないアフリカミツバチの飼育方法を身に付けていくためには、農家の養蜂箱を触りながら覚えていくしかありませんでした。それでは失敗する可能性が高く、農家に迷惑をかけることにもなりかねません。そこで改善案として、隊員のトレーニング・センターとしても使える共同養蜂場を作ることを考えました。配属先である郡の経済活動事務所の職員の支援で場所を借り、巣箱のほか最低必要な用具を手配して、運転資金は隊員同士で出し合っています。

ここでは養蜂の実習をするだけでなく、農家と同じように隊員が一つのチームを作って「組織化」し、利益を求める活動を行っています。これが共同養蜂場設立の最高の成果といえます。

コロンブスの卵(注)のように、わかれば比較的単純なことですが、農家の本質的な問題点は、私たち隊員には見抜きにくいものです。自分たちが同じ経験をして初めて、問題の深さや難しさを痛感し、だからこそ農家に効果的なアドバイスができるのだと感じています。

単純に「農家の目線になる」だけではなく「組織の中での農家」といった目線でも見ることができるようになりました。農家が「できなかった」理由が身にしみたと同時に、「なぜ農家への技術移転がうまくいかないのか」「組織化するとはどういうことか」と悩む私たちに大きな気付きを与えてくれました。

また、私たちが誤った方向に進みそうになると、専門家が助言をしてくれたり、資金を援助してくれることもあります。農家の組織にはこのようなサポートがないため、問題解決に時間がかかってしまいます。しかし隊員の組織の中で起きた問題は、今後、農家組織でも起こり得る問題としてとらえ、未然に防ぐことができるようになりました。

モザンビークではいまだに手作業による養蜂が主流です。それでも遠心分離によるハチミツの収穫やろ過の方法を普及することで品質が向上し、安価に手に入る容器の紹介や、副産物としてのミツロウの加工方法の紹介、農家と共に地域の販売先を開拓することなどによって、経済面でも目に見える成果が出ています。

(注)誰でもできそうなことでも、最初に行うことはむずかしいという意味。

【写真】

共同養蜂場で養蜂箱の状態を確認する隊員(右が筆者)

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