「これまで」と「これから」、南アフリカの民主化を生きて

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私は1973年の生まれで、1994年、21歳のときに全ての人種が参加する総選挙が行われ、アパルトヘイトが完全に廃止されました(注)。歴史に残る人権侵害が残した傷を消し去ることはできませんが、今日、それを乗り越えようという若い世代が生まれています。

幸運だったと思うのは、少なくとも私の家庭では、偏見はタブーだったことです。両親が農場を営んで黒人も雇用していたため、隔離政策は生活の中にリアルに存在していましたが、働いている人たちはみな、謙虚でした。彼らが暮らす村にある収蔵庫を見に行ったのも大切な思い出です。

進学のために町を離れて別の地域で暮らし始めてからは、黒人たちと友情を育むようにもなりました。

南アフリカ史上初めて、黒人を含む全人種が参加した制憲議会選挙と州議会選挙が実施される日の前日、1994年4月26日には、首都の中心部から大統領府まで行進する行列に巻き込まれる体験をしました。白人たちが「変化の時がやってきた」と声を上げていて、とても不安になったのを覚えています。

翌日は、私も一票を投じる列に並びました。この選挙が実施されたことで、実質的にアパルトヘイトの完全撤廃が実現したのです。

この日は「自由の日」と呼ばれ、今では国の祝日になっています。カラフルな旗、かたくなな心をやわらかくしてくれる国歌、そして、世界の中でどこよりも進歩的な憲法を生んだ「虹の国」南アフリカを祝う日です。

2013年12月12日には、国家の父として「タタ・マディバ(タタは父の意味、マディバはマンデラ氏の出身氏族を示す)」と呼ばれたネルソン・マンデラの国葬が行われました。タタ・マディバに敬意を表し、さまざまな人が並ぶ葬儀の列に、私も加わりました。外見はばらばらでも、流す涙から「気持ちはひとつ」だということが伝わりました。

民主主義が実現した今、私はようやく「これまで」と「これから」を理解できるようになりました。それを理解できた私が掲げているモットーは「出会う人はみな、それぞれ人知れず何かと戦っている」です。

(注) 1991年に当時のデクラーク大統領が「アパルトヘイト撤廃」を宣言しましたが、その後も1994年の総選挙まで混乱が続いたため、筆者は1994年を「アパルトヘイトの完全撤廃」としています。


(Original text: written by Janet VENTER)

Past Tense

I was born in 1973, 21 years before the abolishment of apartheid, a human rights violation that cannot be erased from history books, but rather from the maturity of today’s youth.

Fortunately, I was raised in a home where prejudice was taboo. I lived on a farm, and although segregation was a reality, the workers were always humble.

Some of my fondest memories are visits to the farm store located in the workers’ village. Everything seemed so different, yet so appealing.

After moving to the city to start my studies, staying in a commune, I forged significant friendships with black people.

On 26 April 1994, I was caught up in a march from Church Square to the Union Buildings. I was afraid, as white people were saying that “change was coming”. A day later, I stood in an endless queue to cast my vote.

Freedom Day, celebrated annually in honour of The Rainbow Nation, produced a colourful flag, an anthem that softens hardened hearts, and a constitution regarded as the most progressive in the world.

On 12 December 2013, I found myself in another queue to pay my respects to the late Tata Madiba, the Father of the Nation, alongside a kaleidoscope of people. Although we didn’t all look the same, our tears expressed the same emotions.

Today, as democracy has come of age, I finally understand the “before” and “after” journey, making this my motto: “Be kind, for everyone you meet is fighting a battle you know nothing about”.

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ブラム・フィッシャー国際空港にあるお気に入りのアート

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ケープタウン大学にて、JICAの川北博史専門家(左)ら

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昨年のラグビーワールド杯を、JICA南ア事務所のみんなで応援


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事務所のクリスマス会にて(後ろが筆者、前は同僚のコロフェロ・ンコエさん)

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