芋と畑と夢見るおじいちゃん

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私の赴任先はタンザニアの奥地、イフンダの村々。大自然に囲まれたこの地域の人々の暮らしを活性化させることが活動の目的だ。活動の一つが、自給自足のための農作物を社会に流通させるものに発展させ、収入向上を図ることだ。この活動は、成功体験を通して人々に自信と誇りや、挑戦することへの意欲を持ってもらうことも目指している。

まず、村人と食品加工会社を結びつけることから始めた。契約栽培に向け、サツマイモの試験栽培を実施。私の計画に協力してくれた農家の中に、70歳を超えるおじいちゃんがいる。妻、娘、孫の3人を支える現役の大黒柱である彼は、お年寄りとは思えないほど活発で、バイタリティーにあふれている。そんな彼の一家は自給自足で細々と食事をまかないつつも、その農作業に必要な出費に苦悩し、毎朝飲むチャイ(お茶)用の砂糖をひとつまみ買うことすらも負担だという。将来に思いをはせることはなく、「夢はない」と彼は語ったが、貧苦に悩んでいるようには見えなかった。

試験栽培は、困難の連続だった。野ウサギや干ばつの被害に加え、おじいちゃん本人がマラリアを患って倒れてしまったこともあった。私もくわを握ったが、彼の家族が一丸となって助け合い、畑で汗を流して立ち向かった。苗を守れず、何度も振り出しに戻り、そのたびに挫折を味わったが、だからこそ私たちはますます絆を強めたのだ。

以前「夢はない」と言ったおじいちゃんが、ある日こう語った。「試験栽培が成功して継続的な収入が得られるようになったら、家が欲しい。土壁ではなく、れんがの家だ。孫が安心して暮らせる住まいを」。それは孫の先の未来を思っての言葉だった。

農作業を終えた私は泥だらけの服と長靴という姿だったが、すれ違う村の女性に「あなたはきれいだ」と言われた。「とんでもない、こんなに汚れているのに」。私がそう否定すると、彼女はこう続けた。「努力している姿が美しい」と。この言葉に、私は感銘を受けた。イフンダの人々は豊かではないが、そもそも豊かさとは何か。イフンダを少しでも豊かにしたいと願う私だが、人々は利便性の低い生活の中でも幸福な笑顔にあふれている。このJICAの活動は、私の価値観を変え、人生において大切なものを見つける大きな旅となるはずだ。



(関連リンク)

各国における取り組み タンザニア

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おじいちゃんの暮らす土壁の家

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食品加工会社から預かった大切な苗を植える

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野ウサギによる被害防止のために、柵を作った畑に水をまく様子


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干ばつ被害にもめげず、丁寧に苗を植え替える

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おじいちゃん一家が一丸となってつくった畑

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家族みんなの夢と未来への希望のために畑を耕す


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