日本人のいないJICAの国際協力!?−「より良い授業を」ザンビア人教員の熱い思い−

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「教材研究」という言葉を聞いたことがありますか。日本の学校で広く行われている「授業を実践するための準備」を指す言葉です。「教材をどのように用いて、子どもたちにどう問いかけたら授業を理解してもらえるか」という日本の教員の試行錯誤が、子どもたちの学びを支えています。

実は日本から遠く離れたザンビアでも、日本人の手を離れて、「Kyozai Kenkyu」という言葉がなんと日本語のままの表現で広がりを見せているのです。きっかけはJICAの本邦研修でした。研修で日本の教員の授業実践の様子を目の当たりにし、「教材研究」が持つ可能性を実感したザンビアの教育関係者が、「ザンビアに足りないのはこれだ!より良い授業を実現したい!」と、教材研究の実践をザンビアの校内研修や学校の授業準備に導入する活動を始めたのです。彼らは今、全国10州でワークショップ等を通して熱く「Kyozai Kenkyu」の重要性を語っています。

8月31日から9月2日にかけて、首都ルサカから車で約7時間の東部州ペタウケで、現役教員約300人が一堂に会し、授業実践能力強化のためのワークショップが開催されました。ザンビア教育省の東部州教育支援チームのオーナーシップのもと、教材研究のほか、授業計画・授業実践・フィードバックから成る「授業研究」や、これらの実践と試験結果の関係など、さまざまなトピックが取り上げられ、終日講義や演習が行われました。

もちろん、このようなワークショップに参加したからといって、教員の力量は一朝一夕に向上するものではありません。しかし、ワークショップを運営している東部州の教育支援チームメンバーはワークショップを少しでも良いものにしようと連夜反省会を行い、早朝から準備に取りかかっており、彼女らの姿からは、教育を改善したいという強い意志が感じられました。この様子から、東部州の子どもたちの学びはより良いものとなっていくだろうという希望を見出すことができました。

教材研究や授業研究など、このワークショップで取り上げられたトピックは全て日本発の実践であるにも関わらず、その場にいた日本人はオブザーバーとして参加していた私だけで、日本人の教育関係者が一人もいない中で研修が行われていました。この背景には、ザンビアと日本が長い年月をかけて築き上げた信頼関係があります。

ザンビアでは長年にわたり、青年海外協力隊の受け入れや技術協力プロジェクト、貧困削減無償資金協力など、日本による多角的な教育協力が行われてきました。「日本人に教わって理科が好きになり、先生になった」という人がいるほど日本の協力が浸透しており、それが今「Kyozai Kenkyu」を受け入れる土台となっています。

2011年に開始した授業実践能力強化プロジェクト(STEPS)では、全国の初中等学校への授業研究の導入を通じて、教員自身に「学び続けることの楽しさ」を知ってもらうとともに、子どもたちが「自分で考える力」を身につけることを目指しています。

現地で活動している3人の技術協力専門家は、ザンビア側の自主性を重んじながら、全力で彼らをサポートしています。専門家の一人、中井一芳専門家は、ザンビア教育省の同僚に、ザンビア自身の活動であると自覚を促すよう心掛けてきたそうです。トラブル・苦労も数知れず、人が育つには長い時間がかかりましたが、今ではザンビア側の関係者が自らの足で一歩一歩しっかりと歩み始めています。でも、まだまだ、これから。

「できれば日本の教育現場に早く戻りたいけれど、彼らが自分を必要としてくれるうちは日本には帰れないよ」と中井専門家は笑います。日本人のいないJICAの国際協力。その根底にはザンビアの人々とザンビアで生きる日本の人々の互いに対する尊敬、感謝、そして信頼がありました。

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各郡代表者が今後の教育改善計画について協議。約300人の現職教員が参加

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ワークショップ参加者が授業計画の作成に取り組む

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東部州教育局局長による講義


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