ブラジルに日本の「スモールベースボール」を伝える

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「JICAのボランティアを必要としている町が他にもたくさんありますが、その全部に派遣してもらうことはできますか」

2013年3月、すべては配属先の会長の何気ない一言から始まりました。私の配属先はブラジル中西部にあるマットグロッソ州クイアバ市の日本人会「ニッポセントロオエステドブラジル協会」です。野球、太鼓、剣道、ゲートボール、日本語教育に加えて、年1回の日本祭りなどを行っています。

ボランティアを必要としている町が10ヵ所くらいあると聞き、JICAの企画調査員(注1)に連絡したところ、「さすがにそれは難しいかもしれないが、学生の短期グループ派遣(注2)なら可能性がある」と言われました。もし実現できたら、日本の野球の特徴である「全員野球」や「つなぎの野球」、いわゆる「スモールベースボール」をブラジルの人たちに実際に見せて体験してもらうことができる。そう思った私は、本格的に動き出しました。

日本のチームが数週間にわたって交流試合や野球教室を行うのはブラジルでは初の試みでした。JICAだけでなく、総領事館、ブラジル各地の野球連盟や日本人会、また母校である日本体育大学の協力のおかげで実現にこぎつけることができました。

2014年3月6日、日体大野球部員14人とコーチ1人がブラジルに到着。3週間で、3州8町で野球教室を開き、交流試合6戦を行いました。私も全日程に同行し活動をサポートしました。

日体大の選手たちの礼儀正しさや活動に取り組む姿勢は大好評でした。現地の日系人の中には、「50年ぶりに日本のきれいにそろった礼を見た。みんな礼儀正しくて素晴らしい。来てくれて本当にありがとう」と涙を流す人もいました。

日体大は5勝1分けと負けなしの試合を見せ、唯一引き分けたチームは前年のブラジルチャンピオンでした。日体大は長打は少ないものの小技でつなぎ、積極的な走塁で加点、安定した守備で守り抜くという典型的なスモールベースボールで勝利していきました。試合後には「なぜ彼らはフライを打ち上げないんだ?」「なぜあんなに守備範囲が広いんだ?」「どんな練習をしているんだ?」など質問攻めにあいました。

一方のブラジルはパワフルな打撃が多いのが特徴です。登板した日体大の投手も「大きい体であのフルスイングはさすがに怖いですね」と言っていました。日体大側もブラジル野球の良さを感じることができ、双方にとってプラスの経験になりました。

今回関係したすべての人が「来年以降もぜひ継続してほしい」と言ってくれました。また日体大の野球を目の前で見たブラジルの子どもの中には「将来、日体大に入りたい」と言って、日本語を勉強し始めた子もいます。日体大の選手も「ブラジルが本当に大好きになりました。今度は長期派遣で来たいです」と頼もしいことを言ってくれ、充実した表情で帰国しました。

今後も日本とブラジルが双方の野球の良い所を取り入れてさらに発展し、野球で夢をかなえられる環境を、協力して作っていきたいと思います。

(注1)ボランティアの調整を担当する役割
(注2)大学と連携して個人ではなくグループで活動する派遣形式

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日体大とマットグロッソ州の選手たち

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美しくそろった礼(左側)

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真剣勝負の交流試合


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