農家自身が「考え、理解し、納得する」こと
私は野菜栽培隊員として、ブカラマンガ市の現地NGOの農業プロジェクトで活動しています。具体的には山間部でコーヒーなどの単一栽培をしている農家を対象に、家庭菜園での野菜栽培づくりを支援しています。一緒に働く農業技師2人が病害虫対策や作物管理といった専門分野を支援する一方で、私は「働きやすい家庭菜園」の普及を目指して取り組んでいます.
コロンビアの農業技術レベルは一見すると高いですが、それは農家技師による功績が大きく、農家自身に技術が浸透しているとまでは言えません。換金作物用の畑(マメ科、モロコシなど)を観察していると、きちんと整理されていて驚きます。等高線状に針金を張り、そこに糸を吊るすことでツル性作物を管理したり、スプリンクラーや点滴かんがいを利用したりしている畑も見かけます。
これらの実用的な管理は、その多くが農業技師によるものであり、コロンビアにおいて農業技師の貢献は素晴らしいです。一方で、農家は依存的と言えるでしょう。彼らに技術導入の理由や原因を学んでもらい、自助発展できるよう、これまでの習慣を見直してもらうことが今後の課題です。
目に見える技術の導入は容易ですが、考え方や習慣を変えることは難しいです。「制限のあるスペースで繊細な野菜を栽培すること」は、多くの農家がこれまで続けてきた「土地の制限なしに野菜を栽培すること」とは概念的に大きく異なります。習慣を変える重要性を説くのは難しく、うまくいかずに菜園が機能しなくなることも度々ありましたが、「考え、理解し、納得する」プロセスを大切にし、なるべく干渉せずに農家自身に行動してもらうように促しました。
自助発展に大切なことは、考える習慣をつけることです。例えば、作物が成長しやすいように土を盛る「畝立て」を行うモデル菜園を設けると、多くの農家が実践するようになりました。「なぜそうするのか」を考える機会を提供し、その後に技術説明をすることで、経験から学び、考えることが習慣化されていくと思います。習慣化されれば、それは今後発展を支える大きな力となるはずです。
(関連リンク)

等高線状に張りられた針金

指導前の菜園とスプリンクラーかんがい

モデルの農地を数ヵ所設け、様々な農業技術の重要性を実感してもらいます

傾斜地が多いので、土壌が崩れないようにするテラス栽培なども実施

最近は菜園の野菜を使ったサラダが食卓に並びます

家庭ごみや家畜のふんを肥料として生かすミミズ堆肥を普及