障害当事者だからできること

Twitter Facebook はてなブックマーク メール

カリブ海にあるドミニカ共和国のリゾート地、ラロマーナ県に赴任して2年が過ぎようとしている。海辺にはリソードホテルやレストランが立ち並び、世界中から集まった観光客でにぎわっている。

かくいう私は、隣家とせめぎ合うようにして建てられた、トタン屋根の家にホームステイしており、大音量で流れる音楽の振動に何度も起こされたり、夕方から翌朝までの断水など日常茶飯事。このカルチャーショックも「ささいなこと。大丈夫!」と思えるようになった自分に驚いている。

Hogar del Nino(オガール・デル・ニーニョ、スペイン語で「子どもの家」の意味)は、私の配属先のNGO東部福祉慈善団体が運営する普通校とろう学校が併設された小中一貫校で、私はろう学校で教えている。実は私自身もろう者である。

赴任したばかりのころは、ろう学校が普通校の奥にあり、隔離された感じでちょっと寂しい気がした。また行事や活動が普通校より少なく、「同じ人間なのになぜこんなに差が?」と疑問を抱いていた。配属先の幹部に「ろう者も聴者と同様の扱いをお願いします」と何度も訴えると、次第に私の願いに心を開き、耳を傾けてくれるようになった。そして現在、さまざまな点で歩み寄ってもらっている。

たとえば、以前は聴者とろう者は制服が異なっていたが、同一にしてもらったり、ろう生徒だけで行っていた国旗掲揚も、一年ほど前から合同で行うようになるなど、かなりの変化があった。今では休み時間に聴者とろう者が一緒にバレーボールやおしゃべりを楽しんでいる。そんな姿がほほ笑ましい。

開発途上国に住んでいると、ろう者であることで不自由な思いをすることが何度もある。2014年12月6日、配属先が資金集めのためのマラソン大会を行った。私は生徒たちと一緒に走ることになり、週に3回生徒と練習し、大会当日は開催地の首都へ生徒たちを引率した。そのため、保護者と連絡をとる必要があったが、その手段は電話しかなかった。メールで連絡できる環境が整っていないからだ。何もかも電話という状況に、途上国は経済力だけでなく情報網も発展途上だと思い知らされた。少しでもろう者が人の手を借りず自立できるように何か方法を考えなくては、と思った。

日本大使館の草の根・人間の安全保障無償資金協力プログラム(注)で、配属先が運営する成人ろう者を対象とした職業訓練校の教室が増築され、完成式典が12月10日に行われた。訓練校には調理師や美容師、家具職人、配管技師、手話講師などの養成コースがある。訓練校を通して、ドミニカ共和国のろう連盟や職業訓練庁(INFOTEP)、JICAの連携がさらに進むことを願いつつ、私も精一杯、障害者雇用の発展をサポートしていきたい。

(注)途上国の地方公共団体、教育・医療機関、途上国で活動しているNGOなどが現地で実施する比較的小規模なプロジェクト(原則1,000万円以下の案件)に対し、外務省の在外公館が中心となって行う資金協力。

【写真】

カリブの海はきれいだ。右が筆者

【写真】

笑いの絶えない職場で、同僚たちと

【写真】

生徒に手話を教える筆者(左)


【写真】

マラソン大会を終えた後、生徒たちと共に

【写真】

教室が増設された職業訓練校。その完成式典に参加

【写真】

青空教室。絵カード使って手話を指導


Twitter Facebook はてなブックマーク メール