アミーゴ文化から見るドミニカ共和国

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作家で文化人類学者でもある上橋菜穂子氏は、オーストラリア大陸の先住民族アボリジニーの心のあり方を「ケアリング、シェアリング」という言葉で表現し、それは「身内ではない他者たちと良い関係を築くためである」と書いている。

ここドミニカ共和国でも「分け合う文化」が色濃く残る。マンゴーの季節にはたくさんのマンゴーが人の手から手へ渡っていくとともに、人と人を結び付ける。また、食事は多めに作り、アミーゴ(仲間)たちと分け合えるようにする。そうした交流がこの国の人たちの喜びであり、生き方であることは、日本人としても大いに学ぶべき点であるが、その背景には当国の抱える貧困の実態もうかがえる。

例えば、国の労働人口の44パーセントは個人商店や屋台、あるいは建設業や農業などの個人労働者。そのうち97パーセント、全賃金労働者の57パーセントが、インフォーマルセクター経済(公的な統計に含まれない経済活動)に属しているという調査結果がある(注1)。課税を回避できる一方で、法が定めた労働基準や社会保障制度によって保護されないため、リスクと隣り合わせだ。そこから落ちこぼれないためには社会的つながりが何より重要になる。

さらに、国内総生産(GDP)は年平均5パーセント以上の成長を遂げている(1970〜2008年)にもかかわらず、他の中南米諸国と比較しても教育や格差削減への政府支出は低調だ。世界銀行によると、貧困率(注2)の値は30.5パーセント(2016年)で、1990年代と比較してあまり変化はない。これらのことから、この国が抱える固有の社会構造を分析した上で、効果的な貧困対策の在り方を考えていく必要性を感じる。

各隊員は人々の間に入り、世代間で固定化しつつある貧困層の問題に向き合い、ともに解決を模索している。ある貧困地域の学校で働くボランティアは「ここは衛生環境が悪く、犯罪多発地域であることのみが知られるが、実際には人々のまなざしは温かく、お互いを守ろうとする意識が強い」と言う。助け合う文化が「残っている」というよりは、彼らは今まさに人とのつながりによって生きている。

単なるマンパワーや資金援助では社会的つながりの網の目の中で自立している状態に穴を開けることになりかねない。活動では、人々と連帯しながら問題解決に向けて少しずつ歩調を合わせていくことをいつも念頭に置いてやっていきたい。

(注1)出典はドミニカ共和国戦略的開発のための国際委員会報告書
(注2)世界銀行の定義では、1日あたり1.90米ドル未満で生活する人の割合



(関連リンク)

各国における取り組み ドミニカ共和国

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マンゴーは安いもので1個5ペソ(約11円)から買える

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サンコーチョという家庭料理。たくさん作ってみんなで分け合う

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街のどこにでもコルマド(個人商店)があるので便利


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選手とコーチは師弟ではなくアミーゴ関係で対等だ

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サトウキビ畑のハイチ人労働者は厳しい労働条件と生活環境にある

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貧困地域の子どもを対象としたイベント。とにかくエネルギッシュ!


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