エクアドルの老人ホーム

Twitter Facebook はてなブックマーク メール

南米エクアドルの首都キト。私は、キト市郊外の地域の高齢者施設で、理学療法士として活動しています。キト市役所管轄の慈善財団が運営している老人ホームで、入所者の多くは元ホームレスや、身寄りがなく市により保護された人々です。入居者は約105人で、最高齢は103歳を迎えたばかりの女性です。

活動当初は驚くこともたくさんありました。例えば、車椅子はフットレスト(足を乗せる部分)がなかったり、ブレーキが利かなかったりする物がほとんどでした(現在は多数の新品が寄付されています)。

オムツ交換は、廊下の手すりで立位をとって行われ、外からも丸見えです。入居者の洋服や靴は寄付で賄われており、サイズが合っていない物を身に着けていることも多々あります。元ホームレスの方も多いため、物乞いをするような仕草や、ごみ箱をあさっている姿を見ることもあります。

このような特殊な施設での私の主な活動は、同僚の理学療法士と共に入居者のリハビリを行うことです。同僚の理学療法士は知識も技術も持っており、私はここで何ができるだろうか、何が求められているのかと、活動当初から悩んでいました。

さらに、私にとって一番の壁は、入居者との意思疎通でした。スペイン語という言葉の壁に加え、入居者の多くには視覚や聴覚障害、言語障害、理解力の低下など、コミュニケーション能力の低下があります。運動意欲がない入居者も多くいます。自分がしてほしいことが伝わらないもどかしさ、相手の訴えを理解できない悔しさなど、日本以上に感じることがたくさんあります。

施設要員の一人として活動しながら、訓練をスムーズに進める方法を試行錯誤しつつ、同僚に対しては、高齢者に対しての訓練のバリエーションを増やす選択肢の一つになれば良いと思い、ここではあまり見られなかった道具を用いての訓練を行うようにしました。

輪投げやお手玉などを不要品で作成し、さまざまな目的で訓練に使用しています。意思疎通が困難であっても、対象者の動きを引き出すことができ、意欲の向上も見られました。

維持期(症状や障害の状態が安定した後)の高齢者の変化というのは、はっきりと目に見えるものばかりではありません。そんな中でも、些細な変化が見られたり、入居者との信頼関係を作れたりした時の喜びは、日本にいる時以上に感じます。

その他、施設職員に対しての勉強会実施、集団運動の導入など、同僚と共同して活動を行うことができました。

残り任期は2ヵ月。私がここでできることを、最後まで精いっぱい行い、任期を終えたいと思います。

【写真】

最高齢103歳の入居者(写真中央)の誕生日会

【写真】

食堂での昼食風景

【写真】

端座位(たんざい)訓練中。治療ベッドは全てこのように高さがある


【写真】

作業療法の一場面。この道具は作業療法士の手作り

【写真】

手作りの輪投げを使用し上肢の運動を行っている入居者

【写真】

カウンターパート(同僚)と共に集団運動中


Twitter Facebook はてなブックマーク メール