地図情報システム(GIS)を利用した防災マップ作成

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防災・災害対策隊員としてジャマイカに来てから9ヵ月が経ち、生来色白の私も多少日焼けしてきました。季節の変化がとても少ない常夏の島ジャマイカでは、過ぎた時間の経過が自分の日焼け具合くらいでしか実感できません。時折鏡を覗いていい色に日焼けした自分を見る度に、いつの間に9ヵ月も経ってしまったのだろうと、我がことながら驚いています。

この9カ月の間、ボランティアの活動としてさまざまな案件に取り組む機会をいただいたのですが、中でもとりわけ印象深いのが地図情報システム(GIS)を使った防災マップ作りです。最近は日本でも「ハザードマップ」と呼ばれる災害発生時の被害予測地図作りが盛んですが、同様のものをジャマイカでも作成しようという試みです。

私が配属先で活動し始めた当時、ジャマイカの国全体の防災担当機関が防災マップ作りを積極的に進めていたのですが、私のカウンターパート(注)である同僚の教区災害コーディネーターは、その利便性を認識しつつも、何から始めてよいのかわからずに戸惑っているように見えました。

そこで、同僚と話し合った結果、防災マップ作りの最初の一手として、日本でいうところの県に相当する行政区画の中にあるすべての避難所の位置を地図に反映させる作業にとりかかりました。インターネットを使って情報を収集しようとしたのですが、早速壁にぶつかりました。キングストンなどの大都市を除いて、ジャマイカには住所というものが存在しなかったのです。

「災害発生時の避難所として活用される学校などの建物の位置は、その土地に住んでいる地域の住民なら誰もが知っているため、住所を使って周知する必要はない。違う国から来たあなたがどうしてそんなことを知りたがるのか、私には理解しかねる」。

避難所の位置がわかる地図や資料を手に入れたいと、行政機関の職員さんに相談しに行くと、決まってこのような返事をもらい、その度に少なからぬショックを受けていたのが昨日のことのように思い出されます。

何週間か試行錯誤を繰り返した後に、実際の現場に行くより仕方がないという結論に至りました。同僚も理解を示してくれて、避難所となっている学校訪問の際に、私を連れて行ってくれることに。併せて、JICAボランティアが物品の調達に使用できる現地業務費という予算を申請し、全地球測位システム(GPS)を利用するための端末を購入させていただきました。

沿岸部から標高1000メートル弱の山間部までの間に散在する約70箇所の避難所を実際に訪問し、住所の代わりに緯度と経度を測定して記録しはじめたのが3月の上旬だったのですが、大雨や洪水が頻発したこともあり、ようやくすべての避難所の4分の3程度を訪問することができたところです。

「避難所訪問のために実際に車両で走行した経路も記録しているので、行政機関から各避難所へ移動する際の最短経路の算出や、悪天候時に通行できない悪路を地図上に落としこむこともできるんですよ。今、ちょうど画面に映っているんですが、ちょっと見てもらってもいいですか?」

機会があるごとにこんな話を行政機関の職員さんにしていたら、以前は私がやっていることを不思議そうに見ていた彼らも、最近では「完成した地図のお披露目が待ち遠しいね」と声をかけてくれるようになりました。

私の知らないうちに、国の防災担当機関向けの報告書に「JICAボランティアが防災マップを作成中なので期待してくれてよい」と同僚が報告しており、別件でたまたまその報告書を見た私は驚きました。

期待していただけるのはとても嬉しいのですが、完成までもう少し時間がかかるので、多少焦りも感じています。すでに今年もハリケーンの季節がやってきており、地域の災害対応能力が少しでも向上するに越したことはありません。

地域の防災・災害対策のために実際に活用してもらえるよう、一日でも早く完成させようと、日々奮闘しています。そうこうしているうちに、きっとあっという間に、また次の1ヵ月が過ぎてしまうのでしょう。ますますいい色に日焼けするのが、どことなく待ち遠しいような気もしてくるのが、自分でも不思議です。

(注)国際協力の現場で技術移転や政策アドバイスなどの対象となる組織、または行政官や技術者のこと

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任地であるセント・アン教区は風光明媚なところです

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山間部は沿岸部と違った風景が広がります

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山間部の学校は何とも言えない清潔な佇まいを感じさせます


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避難所に指定されている学校

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大雨の後は、山間部の道がしばしば倒木で塞がれます

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最近はポインシアナ(ホウオウボク)の赤い花が鮮やかです


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