パナマの夏、アツイ教諭研修

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パナマの学校は、3月に新学期が始まり12月に終了する。乾期で「夏」と呼ばれる1~2月は長い夏休みとなり、この期間を利用して教育省主催の教諭対象研修会が行われる。この研修会には、教育省配属のJICAボランティアが協力するのが恒例となっている。

現在パナマには、6人のボランティアが教育省に配属されている。

算数教育では、池田枝里青年海外協力隊員(以降JOCV、小学校教育、兵庫県出身)、藤原明子JOCV(数学教育、新潟県出身)、三國谷真喜子シニア海外ボランティア(以降、SV、小学校教育、北海道出身)——の3人。

理科・環境教育では、吉田智美JOCV(理科教育、北海道出身)、松下博幸JOCV(環境教育、愛媛県出身)に筆者を加えた3人。

この6人全員が協力し、「算数教育」と「理科・環境教育」の2つのテーマで、1 月25~29日と、2月1~5日の2回にわたり教諭研修会が開催された。

この研修会の参加者は小・中・高等学校の教諭で、各会場の参加者は30~40人。JICAボランティアによるプログラムのリピーターもおり、昨年の参加者が、教諭をしている家族や親戚を連れて参加してくれた会場もあった。

パナマでは、貧富と同様、教育の格差も大きい。都市部には経験豊富な年配の教諭が集まっているが、地方には経験の浅い若年の教諭が多い。また教育施設・設備の面からも、都市部と地方部では、条件に大きな違いがある。

算数、理科の学力については、経済協力開発機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA)で下位に位置しており(注)、中でも、初等教育での学力アップは重要である。パナマ初等教育の算数で教える内容は、精選されておらず、日本以上に多い。授業を見学した印象では、児童の習熟度に合わせた授業ができていないため、学力向上には結び付きにくいと感じており、授業改善と、教諭の指導力・学力引き上げが必要だ。

研修会では、算数教育については「算数授業における小学校教諭の教授法の改善」を目的に構成し、日本の小学校で使用している教材や教授法の紹介と、その実践授業を行った。また、理科・環境教育では、「児童・生徒の関心と意欲、さらに科学的思考法を高める」ことと「環境教育の啓発」を目指し、設備の有無にかかわらず、廃品や身近で入手可能な材料で実施できるような実験と実習を行った。合わせて、日本の学校を紹介するDVDの上映や折り紙、切り紙、箸の使い方などの日本文化紹介も織り交ぜた。

算数と理科・環境教育での進め方は対照的だった。算数では、日本の授業のように座席指定で授業態度を重視して厳しく対応した一方、理科・環境教育ではグループ実験が主体で、話し声が途切れることがなく、携帯電話で実験の写真を撮るなど雑然としていた。理論や計算は苦手な人が多いが、実験や実習には子どものように楽しみながら生き生きと取り組む。厳しく実施した算数教育でも、研修会の最後には、日本式に全員が起立して礼をしながら「ありがとう」と言ってくれた。

研修会の実施に当たり、最もハードルが高いのは言葉の問題である。研修内容を伝えるため、「いかにして言葉足らずの部分を参加者に理解してもらえるか」を工夫しなければならない。半年前から準備を開始し、研修内容の検討、教育省との調整、テキストや物品の準備など、打ち合わせを重ねながら進めた。

われわれにとって、研修会への協力は、実にアツイ体験であった。参加した教諭にとっても、研修会がアツイ体験となり、現場に戻ってからその体験を活用して授業改善につなげてくれることを願っている。

(注)これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る調査で、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について実施。調査時点で15歳3ヵ月~16歳2ヵ月以下の学校に通う生徒(日本では高等学校1年生が対象)。2000年から3年ごとに実施。パナマは2009年の調査で65ヵ国中、64位だった(日本は7位)。

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算数の研修会での池田JOCV

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算数の研修会での藤原JOCV

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参加者の発表を見守る三國谷SV(中央奥)


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理科の実験指導を行う吉田JOCV(左)

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環境教育指導をする松下JOCV(左から3人目)

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理科の実験指導をする筆者(中央)


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