パナマ土着の環境保護活動-ウミガメおばちゃんの奮闘記-

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パナマのとある海岸沿いの小さな町。観光地でもなんでもないこの静かな町で、小さな宿を経営する一人のパナマ人女性がいます。彼女は宿を切り盛りする一方、この町の海岸に産卵のために毎年訪れるウミガメの保護活動を積極的に行っており、近所では「ウミガメおばちゃん」として知られています。昨年9月、当初は釣りが目的で訪れたこの町で偶然出会い、彼女の活動に心を打たれて以来、何度もこの地を訪れるようになりました。

この海岸には、6月ごろ~12月ごろまで毎年たくさんのウミガメたちが産卵のために訪れます。ウミガメは世界的に見ても、護岸の開発や海洋汚染や密猟など主に人間の活動が原因でその個体数が減少しており、今後は絶滅を食い止めるためにも何らかの対策が必要とされている動物の一つです。

ここパナマでもその例に漏れず、この町の海岸でもかつては野良犬などによる卵の捕食や、販売目的で密猟を行う人間による被害が頻発していたそうです。「ウミガメおばちゃん」は、そのような被害から少しでもウミガメを救おうと、たとえ夜中であろうとまだ薄暗い早朝であろうとほぼ毎日、ウミガメが産卵に来る夜間の満潮前後の時間帯にボランティアで海岸のパトロールを行っています。

彼女の活動の主な内容は「卵を無事に孵化(ふか)させて子ガメを海に返すこと」。

活動の流れとしては、まずウミガメが産卵した場所を、親ガメの足跡や卵を埋めた跡を手がかりに探し当て卵を回収。その後、ほかの動物や密猟者から卵を守るため、ご主人と共に海岸に設置した小屋に埋め直し、およそ50日後に孵化するまで待ち、最終的に産まれた子ガメを海に返すというものです。

愛情たっぷりに保護した卵から孵化した子ガメを海に返す時の彼女の姿は、まるでわが子を見送る親ガメさながらです。もう10年以上もこの活動を続けている彼女は、いとも簡単にこの一連の作業をやってのけますが、素人にはその広大な砂浜を前に卵の場所どころか、亀の足跡を見つけることすら至難の業です。

回収した卵の個数や日時などの情報は逐一ノートに記録しており、そのデータを基にその年のウミガメのコンディションもチェックしています。また、卵が埋められている砂の温度によって産まれてくるウミガメの性別が決定されるそうなので、どちらか一方の性別に偏らないよう、砂の温度管理にも気を遣っています。

これだけの膨大な作業をボランティアでやっているということはもちろんですが、海外から来た専門家などではなく、政府の援助を受けているわけでもなく、現地のパナマ人が自主的にやっているということに僕はとても感銘を受けました。

卵の管理については素人の僕には手が出せませんが、何かお手伝いができないものかと思い、先日、海岸の清掃作業を行ってきました。直接海の恩恵を受けながら暮らす現地の人々は決して海岸にごみを捨てたりしないにもかかわらず、海岸にはかなりのごみが落ちています。その主な要因として、環境教育の認知度がまだまだ乏しいパナマでは、国内各地でポイ捨てがいまだに日常的に行われていることが挙げられます。

雨季になるとそれらのごみは雨によって川に集まり、やがて海へ。そして最終的には海岸へと流れ着きます。ウミガメがエサであるクラゲと間違えて誤飲する危険のあるビニール袋をはじめ、ビンや缶、ペットボトル、さらにはタイヤやサッカーボール、人形など、人間が捨てたありとあらゆるごみがこの海岸にも流れ着いていました。

一人で黙々とごみを拾っていると、近くで遊んでいた漁師の子どもたちがやってきて言いました。「僕らも手伝うよ!!」

彼らが捨てたわけでもない海岸のごみを、自らすすんで拾ってくれた子どもたち。もちろん彼らも「ウミガメおばちゃん」の活躍は知っているそうで、こうやって将来の「ウミガメおばちゃん」や「ウミガメおじちゃん」が育ってくれればいいなと勝手に期待してしまいました。

そしてこの町で「ボランティアとは何か」を言葉以外の何かで教えてもらったような気がしました。

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マレーナの海岸から見る夕日

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自分たちの設置した小屋でウミガメの卵を保護する女性

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夜の海岸パトロールで、発見した卵を回収する女性


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保護のため小屋の中に埋め直されたウミガメの卵

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卵から孵化し、海へと歩き出す子ガメたち

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自主的に海岸のゴミを拾う近所の子どもたち


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