朝市とテレレとパラグアイ

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私は、パラグアイ・ブラジル・アルゼンチンの三国国境から車で30分ほどの所に位置する人口約8万人の中都市、ミンガグアス市で活動しています。世界遺産であるイグアスの滝からも近く、ミンガグアスの人たちは観光や買い物などでブラジルに出かけ、パラグアイの公用語であるスペイン語、グアラニー語に加えて、ブラジルの公用語、ポルトガル語も理解します。町はUrbano(ウルバノ、スペイン語で「都市部」の意味)とCampo(カンポ、「田舎」)に分かれており、カンポに住む人のほとんどが小規模農家です。

私の配属先は市役所で、主な活動は農牧省と農業組合が開催している朝市の運営支援です。豊かな自然が広がり、人々ものんびりと幸せそうに暮らしているパラグアイですが、中南米でも最も経済格差が大きい国の一つで、特に農村で格差が顕著だといわれています。朝市は、小規模農家が生産物の販売を拡大し、現金収入につなげることを目的に、5年前に始まりました。

「小規模農家の現金収入を増やす」という目的で任地に来たものの、私がミンガグアス市に来た1年4ヵ月前の時点で、すでに朝市には多くのお客さんが来ており、農家の人たちも生活するには十分な収入を得ていました。その状況を見て、当初は何をすればいいのか分かりませんでした。まずは朝市や農家の人の生活を知ることから始めようと思い、朝市で生産物を販売している人の家を訪問して一緒にご飯を食べたり、朝市の開催中にパラグアイで広く飲まれている冷たいマテ茶「テレレ」を販売者の人たちと飲んだりしておしゃべりをしていました。

ちなみに、「テレレ」は基本的に、一つのコップ、一つのストローで回し飲みをします。チャンポの人たちと一緒にテレレを飲むと「一つの物を共有する連帯感」を感じます。着任したばかりのころは躊躇(ちゅうちょ)することもありましたが、今では率先して「一緒にテレレを飲もう!」と言うようになりました。

その後少しずつ自分のできることをやってみようと思い、ウェブサイトや市役所のラジオ放送を使った広報活動や、販売者のネームプレート作成、農牧省の朝市担当者を対象に売上計算の改善、朝市の販売者への家計簿指導の講習会なども開催してみました。

さまざまな要因で、物事が思うように進まないことや活動が停滞する時期もあり、平たんな道のりではありませんでしたが、自分なりにできることに取り組めています。

現在は、昨年9月に新設された朝市の広報活動や基盤作りを中心に活動を行っています。新たな地域での朝市で知名度もなく、販売者も売上も既存の朝市に比べてまだ少ないですが、地域の人口や立地などを考えると可能性はあると考えています。

これまでの活動の成果や反省を踏まえて、何かを教えるのではなく、「一緒に働いて一緒に考える仲間になる」という姿勢を常に忘れないようにしています。

また、「地域住民に地元の新鮮な農産物を食べてもらう」ということを念頭に、地域の皆さんに朝市の存在を知ってもらうため、朝市のチラシを作って各家を訪問したり、学校の生徒や保護者の会合に参加して朝市をアピールしたり、より地域に密着した広報活動を意識しています。

日本とは、生活や仕事のスピードが全く違うパラグアイ。これまで過ごした1年4ヵ月間で、自分自身も大きく変わりました。もともとせっかちな私は、物事がうまく進まなかったり、仕事の進め方やスピード、仕事に対する考え方が違うことに愕然(がくぜん)としたり、そもそも自分がこのミンガグアス市に本当に必要なのか、と悩んだり、苦しいことが続きました。でもパラグアイにも慣れた最近は、以前よりゆっくりのんびりと、あまり固く考えずに、パラグアイの人たちとテレレを飲みながら仕事をしています。

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新設された朝市。少しずつお客さんも増えてきました

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朝市終了後のミーティング

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農家の人たちと一緒にテレレ


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地域の学校の会合で朝市の広報活動

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カンポ。トウモロコシや大豆の畑が広がっています

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農牧省の担当者とミーティング


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