トランキーラでいられない、パラグアイの桃太郎看護師

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日本から飛行機を2回乗り継ぎ、36時間かけて到着しました、南米の国パラグアイ。私の任地は古い歴史があり、碁盤の目に整備された町並みや独特の方言が、まるで京都のようです。

市の名前もぴったり、「ビジャリカ」と称して「美しく豊かな」という意味です。西洋風の建物や遠くに望むウブトゥルスの丘を眺めながら活動できるこの町は、夜も出歩けるほど治安が良く、私をずっと魅了し続けています。

過去に地方で活躍してきた看護師隊員方の功績が買われ、この県庁所在地のある都市にも配属が決まった経緯があります。日本の保健所と同じ機能を果たす私の職場は、人口1万人以上を管轄していますが、医師1人看護師2人だけという人員が極めて少ない体制です。

見た目は美しい町ですが、そこはさすがに国際協力の現場です。

ゴミのポイ捨ては、蚊の大量発生とデング熱を誘発し、過去最悪の事態を引き起こしています。町の中心地区でさえ貧困が見え、独居の身体障害者や掘っ建て小屋に暮らす結核患者がいます。雨が止まない時は赤土の道路がゆるみ、通学や通院を妨げます。

野菜の消費がゼロの家庭も多く、肥満や高血圧患者が多いです。瞳のきれいな子どもたちも、笑えば虫歯だらけで、不衛生による寄生虫の罹患(りかん)、さらには12歳で妊娠し就学困難なんてことも珍しくありません。

だからこそ、この国には初等教育や疾病予防に努める地域医療の充実が望まれるのですが、政権交代があるたびにガラリと人事が異動し、業務も振り出しに戻ります。

私の力は政治にまで及びません。残りの任期1年は、未来ある小学生の意識を変えようと、昔話の桃太郎をイメージして活動中です。同僚の同意のもと、仲間である看護学生を施設外に連れ出し、疾病予防や健康維持という目には見えにくい「宝」を探して活動しています。

私の活動のモットーは、「健康講座に必ず日本文化を取り入れること」です。

1人の人間として平等に扱われ、豊かな教育で育てられた私は、この国で何度も不平等への怒り、悲しみ、哀れみを感じます。そのたびに現地の友人は、「トランキーラ(スペイン語で「落ち着いて」の意味)、この国はこうなの」と言います。でも正直、私の一番嫌いな言葉です。なぜなら、本来は、私こそトランキーラと相手を慰め、力づける立場にいるのに、反対の立場に立つことばかりだからです。

日本も戦後のゼロから発展を遂げました。パラグアイも、今年はめでたく日本人移住80周年を迎え、深いご縁があります。互いの国が長所を持ち寄り、協力し合い、健康という「宝」を手にするまで、桃太郎のようにみんなで一緒に必死に戦えたらと、無我夢中で活動しています。

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美しい町ビジャリカ。教会前の公園で看護学生さんと

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地域の高齢者には道端でも血圧測定とコミュニケーション

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同僚看護師の補佐。デング熱の緊急対応を総合病院で


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世界のあいさつ紹介と、ハグをする彼らに手洗いの重要性を説明

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栄養講座にテーブルマナーを加え、食事への敬意を伝える

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犬も小鳥もカピバラも一緒。任地を訪れたJOCV仲間と


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