秘露国のアマゾンにようこそ−ビックリがいっぱい−

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「ゆったりと蛇行して流れる川、そして濃い緑の熱帯雨林がどこまでも続く南米アマゾン......」と聞くと、たいていの日本人は「ブラジルの話だ」と思われるのではないでしょうか。ところがアマゾン川の源流の幾つかは、ペルーにもあるのです。

私が赴任しているロレト州は、ペルー北東部に位置し、ブラジル、コロンビア、エクアドルと国境を接しています。日本とほぼ同じ面積を持つペルー最大の州ですが、その大部分が熱帯雨林で占められているため、人口は100万人足らず。その約65パーセントが州都イキトスをはじめとした数都市に集中しています。先住民(11の言語グループ)約11万人を含めた残りの35パーセントが、広大な原生林の中の川に沿って散在する集落で、ほぼ自給自足の生活をしています。ロレト州に広範に残る原生自然は、その自然資源(遺伝子)の多様性と酸素の供給源として、質・量両面の重要性から、国際的な協力のもと保全していく必要があります。

私は環境教育隊員として国家自然保護区管理事務局イキトス事務所に所属し、管轄する五つの保護区の内部や周辺集落の住民に環境教育をしています。またイキトスの都市住民に対しては自然保護区の重要性を、現地の同僚と共に啓発しています。保護区の風景や自然の多様性は「素晴らしい」の一言に尽きます。痛感したのは日本とのスケールの違いです。ある保護区の面積は200万ヘクタール、神奈川県の約8倍です。別の保護区はイキトスから定期船(中型フェリー)で川をさかのぼって2週間もかかります。風土が性格を特徴づけるといわれますが、ロレトの人々はとにかく時間におおらかです。船の出航が一日二日遅れても、決してせかせかしません。

課題もあります。2008年のペルー中央準備銀行の報告書によると貧困率(注)は49.8パーセントと高い状況にあります。人口は1981年に比べて倍増(年増加率約3パーセント)しており、人口増に伴う問題も起こっています。野生動物のすみかとなる森林が焼き畑やプランテーションの拡大で減少している上に、狩猟が加わり、その種類や数は減少しています。

都市と集落に共通の問題として、適切な廃棄物処理システムの欠如によるゴミの散乱や、ゴミ集積場から流れ出す汚水による河川などの汚染があります。都市部でのゴミ問題は景観的、衛生的に良くないだけではありません。ここではカラスより二回りも大きい黒コンドルが生ごみに集まってきます。黒コンドルは空港に離着陸する飛行機のエンジンに巻き込まれて大事故につながる危険性もあるため、自治体も積極的に対策に取り組んでいます。

「ロレトは水と森ばかりで使える土地がない。だから仕事もない」。地元の人からよく聞く言葉です。しかし川と森の雄大な風景の中、特に夜明けの朝露の中、カヌーで水面を滑りながら動物の息遣いを感じるなんて、地球の反対側から来た私にとってロレトは、まさに魅力あふれる秘境です。ペルーの漢字名「秘露」に深く納得します。

たくさんの自然のビックリを秘め、空港から少し離れたらもう大自然の中。こんな環境にあるロレトの地域経済発展のためには、エコツーリズムの促進が有効です。州を挙げて積極的に宣伝していますが、外国人訪問者の大半が欧米人で、アジア人はまだ少ないのが現状です。日本のみなさん、マチュピチュやナスカに代表されるペルーの文化景観だけでなく、ここロレトでペルーの、いや地球の大自然を体感してみてください。秘露国のアマゾンにようこそ!

(注)ペルー国家統計情報局の定義による。

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果てしなく続く熱帯雨林と蛇行する川、手前に三日月湖も見える

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保護区近くの集落。元気いっぱいの子どもたち

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ひげ白ピチィコはサルの一種。ロレトには16種類のサルがいる


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集落付近や狩場での聞き取り調査で、動物の増減を知る

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船着き場に現れたシウィはアリクイの仲間

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ゴミ置き場に集まる黒コンドルはかなりの迫力


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