生産体制の総合強化で純所得2倍

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ペルーのアンデス山脈に位置するカハマルカ州で、JICAは2011年から小規模農家の生計向上を目的とした技術協力プロジェクトを行っています。プロジェクトは紫トウモロコシ(注)、エンドウ豆など換金作物の生産体制の強化を通じた所得向上を目指しており、紫トウモロコシとエンドウ豆では、技術指導の結果、種をまくだけの伝統的栽培方法と比較し、単位面積当たりの純所得が平均で2倍以上に増加しました。今回は紫トウモロコシ生産に関する取り組みの概要を紹介します。

「需要に合わせた産品の生産」、これは産業の基本です。市場調査の結果、紫トウモロコシの価値基準は、主に1)色が濃いこと、2)病気や虫食いがないこと、3)サイズが大きいこと、の3点だと分かりました。しかし、伝統的栽培は無肥料で病害虫対策もせず、雑草除去さえも行わないのが一般的です。これでは価値の高い紫トウモロコシは生産できません。そこでプロジェクトでは、品種の選定、畝の作り方、種まきの方法、肥料の使い方、病害虫管理の方法など、畑の準備から収穫までの基礎的作業全般について指導しています。

基礎的作業であっても栽培管理の習慣がない農家には追加作業と感じます。農家に限らず習慣を変える作業は誰にとっても難題です。この解決策の一つとして頻繁に農家を訪問し、作業を忘れないようにしてもらうことがあります。

プロジェクトに参加する農家は、自身の農地の一部、約0.1~0.2ヘクタールを、技術指導を実践する農地とし、それ以外は今まで通り、種をまくだけの伝統的な方法で栽培しています。私はその実践農地を巡回して、技術指導を行っています。巡回指導はより多くの時間と労力を要しますが、農家自身の農地のため、管理意識を高めやすい、1回の作期で両方の手法を比較できるというメリットがあります。山岳地域の作期は年1回に限られるため、後者のメリットは特に重要で、結果的には指導時間を削減できると考えられます。

これまでに2回の作期で栽培技術指導を行い、平均単収(単位面積当たりの収量)は伝統的栽培方法の約3倍、単位面積当たり純所得は2倍の水準まで改善が進んでいます。ごく少数ですが伝統的栽培方法の単収の約8倍(単位面積当たり純利益約11倍)を達成した農家もあり、この農家は「適切に栽培管理を行えば収量と品質が大きく向上することを学んだ。今後も継続していく」と語っています。このような成功農家の存在は他の農家のやる気の向上に非常に役立ちます。

さらなる所得向上には栽培技術改善による生産品の量、品質の改善だけでなく、資材調達や販売方法などを改善し、販売価格を上げることと費用削減が必要です。しかし、栽培管理の取り組み途上の農家や農民組織にとって、多くの作業に対応するのは大変です。このため、運送業者や卸売業者など得意分野が異なる業者の協力を得て、資材などを複数農家や組織で共同購入あるいは生産し、農産物を共同で集出荷、直接販売するなど、生計向上のための体制構築を目指しています。

一難去ってまた一難、常に新たな課題も出てきていますが、ペルー人と日本人が皆で知恵を出し合ってプロジェクトを進めています。

(注)南米原産の濃紫色または黒色のトウモロコシ。煮出して砂糖や果物で味付けしたジュースはチチャモラーダと呼ばれ、ペルーでは日常的に飲まれている。

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伝統的栽培方法の畑。栽培管理が十分でなく生育・収量が悪い

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プロジェクト参加農家の畑。適切な管理がなされている

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収穫を喜ぶ参加農家とプロジェクト関係者


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参加農家が生産した高品質な紫トウモロコシとチチャモラーダ

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農民組織の会議。組織自身による継続的な活動の実施が目標だ

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ペルー政府主催の農業フェスティバルに出店


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