遺跡保護には住民の協力が不可欠−遺跡をもっと身近に感じてもらいたい−

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ペルーの首都リマ市中心部から南へおよそ30キロメートルのルリン谷に、砂漠の中に神殿や建物が点在している「パチャカマック遺跡」があります。ここは、インカ帝国時代を含め、1500年以上もの間、ペルー中央海岸部で最も重要な巡礼地でした。古代ペルーにおいて、アンデスの儀式の一つとして、部族長たちが、ここパチャカマックに神託を聞くために長い巡礼の旅をしてきました。

パチャカマックは地震を司る神で、頭が少しでも動くと天変地異が起こると信じられ、大変恐れられていました。遺跡にある建物のほとんどはアドベと呼ばれる日干しレンガで造られています。時の統治者たちが執務に使用していたといわれている傾斜路のあるピラミッドや、壁に魚や鳥などを鮮やかに描いた彩色神殿、そしてインカ帝国時代に立てられた太陽の神殿からは海や島々、肥沃なルリン谷を一望することができます。隣接する博物館は1965年に開館し、今年で50年になります。現在、新しい博物館を建設中で、2016年1月のオープンを予定しています。

私は2013年10月から青年海外協力隊員として、ここパチャカマック博物館で地域住民に自分たちの歴史や文化を知ってもらうための教育活動を行っています。今では多くの観光客を受け入れていますが、スペインがこの地を征服して以降、不法居住、盗掘に遭い、土地は荒らされました。パチャカマックの歴史的・文化的価値を知らなかった住民はこの土地をRuinas(ルイナス、スペイン語で廃墟)と呼んでいました。

地域住民が遺跡の価値を認識し、自分たちの歴史、文化に誇りをもってもらうことが遺跡の保護にとって重要です。考古学者が調査発掘をしたり、技術者が修復作業をしたりしても、住民の参加と協力がなければ遺跡の保護は成り立ちません。過去の歴史を教訓に、まずは住民に遺跡に対する興味関心を持ってもらうため、博物館ではさまざまな教育プログラムを実施しています。

子どもたちが対象のワークショップでは、遊びから遺跡について学んでもらえるよう「歴史」「神話」「キープ(注)」「土器」などテーマを設けています。特別ツアーでは博物館で飼育しているリャマとともに遺跡を散歩することもあります。パチャカマック島にある神話をもとにした絵が飛び出すカードや、オリジナル年表など、同僚たちと教材開発も行いました。日本文化の紹介を兼ねて神殿に残されていた壁画のモチーフになった魚や鳥の折り紙を教えたこともあります。

今まで遺跡に来たことがなかった子どもたちが、「とっても楽しかった。今日パチャカマックに来たことをお父さん、お母さんに話すよ。折り紙も見せてあげるんだ」と笑顔で帰る姿を見ると、とてもうれしく、教育活動の重要性を感じます。

(注)リャマの毛などで編まれた縄で、縄につくる結び目の数や位置によって文字を持たないインカの人々が、重要な情報を伝えていたといわれている。

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インカ時代に建てられた太陽の神殿

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折り紙のワークショップ

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リャマと一緒に遺跡を散策


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博物館の菜園管理に子どもたちも参加

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おっかなびっくり、リャマにえさをあげています

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