マナティが暮らすセルバの未来-ペルーの熱帯林を育む次世代に種まき-

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私の住むイキトスは、ペルー東北部に位置するロレト州最大の都市で、首都リマから1,000キロほどです。周囲を3つの川に囲まれ、陸路は100キロ先までしか通じていないため「陸路では行けない世界最大の都市」と称されています。道路に代わって輸送に使われているのが、世界最大の流域面積を有するアマゾン川です。

ペルーというとアンデス山脈のイメージが強いかもしれませんが、国土の約60パーセントは熱帯林に覆われています。ここイキトスはアマゾン熱帯林の真っただ中にあり、街から少し離れると見渡す限りの森林が広がっています。現地ではこの熱帯林のことをセルバ(Selva、スペイン語で「熱帯林」の意)と呼んでおり、日本では見ることのできない動植物が生息しています。

私にセルバの自然について教えてくれるのは、地元の子どもたちです。彼らは森へ入るとあっという間に木に登り、食べられる果実を取ってきたり、めずらしい昆虫を見つけてくれたりします。また、森には薬用植物はもちろん、お皿として使う葉、屋根に使う葉、筆になる草などがあり、人々が身近な自然をうまく使って暮らしてきたことがわかります。

その一方で、セルバでは森林の乱伐、河川や森林地帯への廃棄物の投棄、野生動物の密猟・密売、石油の採掘に伴う土壌や河川の汚染など深刻な環境問題を抱えています。

私の所属するアマゾン・レスキュー・センター(CREA)は、このような厳しい環境の中で保護された野生動物を再び野生に帰す活動を行っています。特に力を入れているのがアマゾンマナティの保護です。2007年から現在までに、28頭のマナティが保護され、15頭が再び自然保護区へと帰されています。

CREA設立当初は、地元でもアマゾン川にマナティが生息していることを知っている人が少なかったため、多くの人々にこの現状を知ってもらおうと施設を開放し、現在では国内外から年間2万人が訪れるようになりました。観光客はマナティに直接エサをやり触れ合うことができるため、マナティのいるプールにはいつも人だかりができています。マナティのおだやかで人懐こいその姿に、私もすぐにファンになりました。

私は環境教育を行う部門に配属されており、同僚とともに学校やコミュニティーをまわっての緑化プロジェクトや、CREAを訪れる幼稚園児から大学生までを対象としたワークショップを行っています。現在は、日本の事例などを紹介しつつ、これまで行われてきた活動内容にもう一工夫、織り込むことで、子どもたちに自ら考え、行動できる力を身に付けてほしいと考えています。

来る4月22日はCREAにとって年に一度の特別な日、元気になったマナティを野生に戻す日です。今年は3頭のマナティが野生に帰される予定です。解決しなければならない課題は多いですが、50年後、100年後のセルバでもマナティが健やかに生育できるよう、残り1年、未来を担う子どもたちに種をまく活動をしていきたいと思います。



(関連リンク)

CREA(Centro de Rescate Amazónico)公式サイト(外部サイト)新しいウインドウで開きます

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保護されたアマゾンマナティ。とても人懐こい

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ワークショップの最後には、マナティとご対面

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アマゾン川沿いのコミュニティーでの活動


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自分で考え、解決する力を身に付けてほしい

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セルバには不思議な生き物がたくさん!

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森の案内人は子どもたち。みんな木登り名人!


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