自由に、感性のままに学ぶ-ペルー北部ピウラ川自然観察-

Twitter Facebook はてなブックマーク メール

少年少女のころに親しんだ身近な自然。記憶の中、片隅にではあるけれど、強く焼きついたそれをふとした瞬間に思い出す。そんな体験をしたことはないでしょうか。私はピウラ川の川縁でその感覚に浸っていました。

ペルー北部に位置するピウラ州。標高約3,600メートルの山岳地帯でワルマカ川と呼ばれる主な源流にいくつかの中小河川が合流し、全長280キロメートルのピウラ川が生まれる。280キロというと、多摩川の二倍以上。

ピウラの人々にとっては、恵みをもたらす川であると同時に、エルニーニョ現象が顕著なときには水災害を引き起こす不安の種にもなります。大規模な現象が予測される年にはブルドーザーが川に入り護岸工事が行われます。ゴミが多いせいか、病院が排水を垂れ流しているといううわさのせいか、この川はひどく汚染されていると言われることもしばしば。

そのピウラ川で授業をすることを思いついたのは、ピウラ市内の6つの小中学校で巡回型の授業をしていたある日。自然と向きあえない室内授業にどこか物足りなさを感じていたころでした。

「自然に対する情操」、この言葉が私の頭の中には常にありました。それは自然環境への問題意識を持つためには不可欠で、環境保全への第一歩。何より、そうした建前的なことよりもずっと純粋なもので、自然との関わりの中でしか培うことができない、というのが私の考えです。

早速、下見に行くと、きれいな川とは言えないけれど、想像していたより多くの生き物が生息していることが判明。この川の違った顔を見せたい。思い立ったが吉日、タモ網の作製など授業への準備を始めました。

治安の関係上、ピウラでは子どもたちだけで川や林に遊びにいく姿を見ることはまれです。虫取りや魚取りといった外遊びが概念としてないため、網など売っているはずもなく、市場で見つけた小さな虫かごは、なんと800円。珍しいから高価だとのこと。

川の授業は立地的に実施が可能な数校の子どもを対象に実施しました。川には小さな驚きや発見が溢れていて、自分の興味の向くままにそれらを求めていく子どもたちの姿は、愉快でもあり懐かしくもあります。捕まえた魚を、ちょっとした豆知識を交えながら観察。最後は生き物を元居た場所へ返す。

「さぁ、帰るよ」「えぇ〜」というのがお決まりです。

ピウラの強い日差しに、足に触れる水はひんやり冷たい。川岸を走り回る子ども、腰まで川に入っている子もいれば濡れたくないのか控えめに足を浸けている子もいる。

乾期のおかげで落ち着いた水かさと静かな流れ。水たまりに残された小魚をさらうサギ。時折ロバを連れて対岸へ渡っていく者にあいさつをしながら、子どもたちと自作のタモ網を構えて魚を取る。

興奮を抑えきれず川へ飛び込む少年。顔をしかめて一段と彫りが深くなる先生。川縁で円になっている少女たちは何かを発見したらしい。子どものエネルギーに耐えきれず壊れるタモ網。ああ、俺のタモ網・・・。

いつかその日が昔になったころ、子どもたちが川での授業を思い出してくれたら、その情景の中に何かがあるような気がしています。

【写真】

魚に近づく時はサギをイメージしてそっと静かに

【写真】

岩の下を探る子どもたち。ハヤのような魚、ドジョウなどが見つかった

【写真】

教科書では見ることもできなければ、ふれることもできない生きた魚を観察


【写真】

豆知識を披露。楽しい思い出にウンチクが入り込む余地があるかは疑問だけれど

【写真】

ずぶ濡れになったことをこの後、叱られるとは知らない笑顔。それもいい思い出

【写真】

授業最後の一場面


Twitter Facebook はてなブックマーク メール