食卓にもっと魚を!-セントビンセントで「第1回魚料理コンテスト」-

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セントビンセントおよびグレナディーン諸島は、カリブ海の東に位置し、本島のセントビンセント島とその南に連なるグレナディーン諸島から成る。面積は琵琶湖の半分程度で、人口は約11万人。熱帯性の気候だが、東の大西洋から西のカリブ海へ抜ける風が涼しく、過ごしやすい。

私は現在、この国に協力隊員としてただ一人派遣され、首都キングスタウンの水産局で水産業の振興に携わっている。水産局と階下の魚市場は、日本の無償資金協力で建てられたもので、この縁から、建物の前にあるバスターミナルは「トーキョー」と呼ばれている。

市場に並ぶ主な魚は、シイラやサワラ、マグロ、カツオなど。たまに、サメやブラックフィッシュと呼ばれるイルカの仲間も売られる。JICAの技術協力「カリブ地域における漁民と行政の共同による漁業管理プロジェクト(CARIFICOプロジェクト)」で浮集魚装置(FAD)の導入が進んでからは、大きなカジキマグロも獲れるようになった。

このように豊富な水産資源がありながら、庶民が魚を食べる機会は決して多くない。水産局は「Put a Fish on Your Dish(食卓に魚を!)」のスローガンの下、魚食の普及に努めている。この活動を促進するため、私も魚料理イベントの開催を計画した。

このイベントは、日本の中学・高校に相当するセカンダリーの生徒が三人一組で調理したオリジナルの魚料理を、味や栄養の観点から、4人の専門家が審査する学校対抗のコンテストだ。同じカリブのドミニカ国に似た取り組みがあることを知り、同国の水産局職員から情報を得て参考にした。

教育省と保健省にも協力を仰ぎ、計画を始めたのが昨年7月。財源不足による延期と計画見直しを経て、2016年1月末、題して「Schools Fish Cook-Off」の開催にこぎつけた。

会場は、首都から車で約30分のバルワリーという漁村の学校で、地域の3校が参加した。漁民と地域の結び付きを意識し、地元漁師には食材の魚を提供してもらい、漁業組合長を審査員として招いた。

いよいよ調理スタート。器具がうまく作動せず焦る生徒も見られたが、それだけ真剣に取り組んでくれていることがうれしかった。制限時間の1時間を過ぎたが、完成しない。ここで強制終了とならないのがこの国らしいところ。30分の延長の末、料理が出そろった。

どのチームも想像を上回る出来栄えで、難しい審査となったが、バルワリー技術専門学校の「鯛のココナツ蒸しとマッシュド・スイートポテト」が優勝となった。頑張ったチームに順位をつけるのはためらわれたが、拮抗しただけあって結果発表は大いに盛り上がった。残った料理には見学の生徒たちが殺到し、私自身は味見のチャンスを逃してしまった。きっとおいしかったに違いない。

終了後、共催者や地元漁民から「参加できてよかった」との声が聞かれた。ようやく思い描いた活動のひとつを形にすることができたが、まだ、緒についたばかりだ。定期開催や規模の拡大など、やるべきことはある。より多くの学校と地域を巻き込んで、この国を代表する催しに育てたい。



(関連リンク)

第1回「中高生による魚料理コンテスト」で熱戦——漁業振興と健康対策を目指す、カリブの国セントビンセント(2016年3月23日、ニュース「トピックス」記事)

【セントビンセント及びグレナディーン諸島】第1回中学生による魚料理コンテストを開催(2016年1月28日、プロジェクトニュース)

カリブ地域における漁民と行政の共同による漁業管理プロジェクト(事業・プロジェクト、事業ごとの取り組み)

カリブ地域における漁民と行政の共同による漁業管理プロジェクト(ODA見える化サイト)

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首都キングスタウン

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日本の協力による魚市場と水産局の建物

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真剣に料理に取り組む生徒たち


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完成した魚料理を披露する生徒たち

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授賞式でスピーチする筆者(中央)

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優勝チーム


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