この国の音楽と活動

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私は、南米の大国ブラジルとアルゼンチンに挟まれた、小さな国ウルグアイで、音楽教師としてボランティア活動をしています。首都モンテビデオ市にあるNGOに配属され、特別支援学校3校を巡回指導しています。

国土のほとんどが平地、草原。牧畜業が主要な産業で、首都のモンテビデオを少し離れると、たくさんの牛や馬を見ることができます。一見するとヨーロッパのリゾート地に見えるマンション群もありますが、貧富の差は大きく、教育も公立の学校では午前、午後の2部制。午前から午後まで授業が行われる私立との格差があります。

現在、3人のカウンターパート(注)と一緒に音楽の授業を行っていますが、特別支援学校で働く音楽教諭はほぼすべてがパートタイムで、あちこちの学校を掛け持ちして生活をしています。

カウンターパートの1人は、ギターの弾き語りで授業を行っていますが、まさに自己流。以前はギターを片手にバスを乗り継いでは歌い、乗客が渡す小銭で生計を立てていたようです。

今も多くのアマチュア歌手?がギターを持って毎日バスに乗り込んできます。うまい人から聞き苦しい人までさまざまですが、乗客は親切で、多くの人が拍手をし、コインを渡します。お互い助け合って生きているところは素晴らしいと思います。

ただし、専門のはずの音楽教諭でも、日本のような音楽教育を受けた人はとても少ない現状で、音楽的なことを理解してもらえない場合が多く、難しさを感じています。

授業で歌う曲は、社会風刺の歌詞を持ち、独特の衣装で化粧を施して歌う、この国独特の「ムルガ」や、アフリカに起源を持ち、タンボールと呼ばれる太鼓で独特のリズムを刻む「カンドンベ」などが中心です。

タンゴもこの国の重要な音楽の一つ。

アルゼンチンの世界的なタンゴ歌手で作曲家、ギタリストとしても知られるカルロス・ガルデルは、実はウルグアイ出身。ウルグアイとアルゼンチンは、どちらがタンゴの発祥地かお互い競っているようなところがあります。

自閉症の子どもから大人まで学んでいる支援学校のカウンターパートの1人は、アマチュアのタンゴ歌手で、大人の生徒にもタンゴを教えています。

こうした環境の中で、私は今まで使われていなかったピアノを使って授業をしています。

音楽療法の手法を取り入れ、より授業内容を充実させるという要請で配属されましたが、まずは全く聞いたこともないこれらの音楽を聞いて楽譜を書き起こす作業から始め、次にアレンジする、の繰り返しでした。

あまりに多くの曲があるので、歌詞はほぼ諦めてカウンターパートに任せ、私はピアノでアレンジし、メロディーが際立つように演奏し、子どもたちが歌いやすくなるよう心がけています。

音楽室もなく、暗い部屋、廊下のような場所であちこちキーボードを運びながらの授業はどちらかというと力仕事に近い感じですが、子どもたちはいつも笑顔で「サシュリー(「さゆり」をスペイン語読みした発音)」と呼んでくれ、ほおとほおを合わせるあいさつの「ベソ」をしてくれ、元気をもらっています。

大人も子どもも、リズム感が良く、タンボールのリズミカルな演奏が聞こえてくると70代の女性校長まで腰を揺らして踊りだし、みんな本当にダンスがうまいので感心しています。

また、ここウルグアイでは毎年1月末から3月まで、あちこちで太鼓とダンスのパレードが行われます。リオのカーニバルほどの規模ではないにしろ、期間が長いことで有名で、みんながダンサーのようです!

残りの活動期間、この国の音楽文化を尊重しつつ、日本の音楽やクラシック音楽もできる限りたくさん取り入れた授業を行い、最後のコンサートに向けて、生徒の力が十分発揮できるよう、カウンターパートと共に働きたいと思います。

(注)国際協力の現場で技術移転や政策アドバイスなどの対象となる組織、または行政官や技術者のこと。

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草の根支援の竣工式にコンサート。手前がタンボールです

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配属先の個性化教育センターでの授業

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キーボードの練習中


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2人でキーボードを練習

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巡回指導先の一つ、NGO総合教育ケアセンターでの授業

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