ブータンの保健体育カリキュラムを作成中

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ブータンの学校カリキュラムを掌握する教育審議会(REC)に配属され、保健体育カリキュラム作成を行っている。今年の3月までに就学前の年長児学年~小学校3年生の活動案作成を終え、現在は4年~6年生案を作成中である。

そこで、ブータンにおける保健体育カリキュラム作成の変遷を説明したい。1999年に教育省方針決定最高機関が体育カリキュラムの必要性を重要視して、「各校において週1回の実施の必要性を認める」との決定を行い、体育が正式科目となった。しかし、授業の目標や具体的な内容などを盛り込んだ「活動案」の提示がない教科認定は、「意義ある体育の授業が行えていない」という課題を生んだ。

2009年に年長児学年~6年生の活動案「保健体育アクティビティブック」が配布された。しかし、RECの予算不足の影響から、その活動案を受け取れたのは国内のすべての小学校のうち約半数(約250校)にとどまった。

2011年、教育省の部局長級会議の「健康教育の必要性にかんがみ、保健教育を導入した保健体育カリキュラムの学校導入を目指す」との答申を受け、RECは2012年より新たな取り組みを開始した。

次に、現在私が取り組んでいる保健体育カリキュラム作成の取り組みを説明したい。新しいカリキュラム案では、学習内容を以下のように分けている。それは、(1)「身体・運動能力分野」の中の重視分野は「運動能力」養成分野、(2)「他者関係能力分野」の中の重視分野は「国民総幸福量(GNH、注)理念」養育分野、(3)「健康教育分野」の中の重視分野は「健康的生活習慣」育成分野、の3領域。

また保健体育カリキュラムを作成する際に、私は、(1)ブータンの教育理念に沿った活動案の作成、(2)簡単な道具を利用して実施出来る活動案の作成、(3)日本で一般的な活動案も参考にした活動案の作成、の3点に留意している。

例として、4年生の授業案「(A)『協力し合って、目的地へ進もう』、(B)『協力し合って、次の段階へ進もう!』」を紹介したい。(A)で食生活に関する「実践法」を学習後、(B)では、「各食事の持つ栄養素」などに関する基礎知識を学習する。児童は質問用紙を「縄跳び活動・障害物競走・ボール投げ活動」を行った後に抜き取り、チームへ持ち帰り、それぞれのテーマについてチーム内で討議する。

(A)は(B)で学ぶことを前提とした授業であり、(B)と合わせて一単元として実施することでこの単元の体系的な理解を深めることをねらいとしている。

RECが行ったこれまでの調査では、ブータン児童の運動能力傾向は「敏捷(しょう)性」「身体調整力」などがほかの能力と比較して低い結果を示している。そのような実態にかんがみ、「縄跳び活動」「障害物競走・ボール投げ活動」の導入を試行した。

私は「ブータン教育理念」と「日本の体育活動」を融合させる手法により、保健体育カリキュラム作成を試行している。「ブータンの児童に適合する」カリキュラム案作成を目指して活動を継続したい。

(注)ブータンが、金銭的・物質的豊かさ(GNP)だけを追求するのではなく、伝統的な社会や文化、環境などにも配慮しつつ、国民一人ひとりの精神的な豊かさを重視するという考え方に基づき、国民全体の幸福度を示す尺度として提唱している概念。

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ランゴ小中校(パロ県)5年生の手洗い指導の際の素直な笑顔に感動!

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シャバ小学校(パロ県)での柔軟体操指導。楽しい体育活動を目指している

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教育事務所長(チュカ県)によるチュカカーニバル点火式


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チュカカーニバル終了後の、事後研修集会参加者(前列左から2人目が筆者)

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カツォ小中校(ハ県)で取り組み中の器械運動公園の完成予想図

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ウォンチュ小中校(チュカ県)の生き生きした児童の表情に感動!(中央が筆者)


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