ブータン保健体育教育の現状と、改善に向けたささやかな取り組み

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現在、私は、ブータンの王立教育審議会に所属し、保健体育教育の前進に取り組んでいる。

2015年3月~11月にかけて、ブータン東部パロ地区の9小中学校を対象に、各校に1ヵ月ずつ滞在し、模範授業と授業モニタリングを行った。その際の経験を基に、今回は当地の体育教育の現状を、(1)子ども、(2)環境、(3)指導工夫——の三つに分けて説明したい。

(1)子ども
i)個人間に運動への意欲・関心に開きがある
ii)女子の一部に運動に対する嫌悪感も見受けられる

個人による意欲・関心の開きでは、次のような状況が見られる。
サッカーなどの運動活動に興味を持つ子どもは、主にテレビ番組などから技能を学んでいる。一方、近年のインターネット環境の広範な広がりの中で、多くの子どもたちは生活の変化を余儀なくされている。このような変化の中で、運動活動に興味を示さない子どもも見られ、その現象は学年が進むにつれて顕著になるように感じられた。

次に、現在、当地で女子が行うスポーツとして挙げられるのは「バドミントン」「バスケットボール」が主流といえる。しかし、競技人口はごく少数の子どもに限られ、多くの女子は、全般に運動を「億劫(おっくう)な活動」ととらえていると感じられる。これはブータンの人々が培った生活・文化から醸成された感覚といえるかもしれない。

(2)環境
i)運動場の課題
ii)体育用具の課題

続いて運動場について。「石ころだらけで使用できない」「校舎から離れている」などの理由から、対象の9校中6校ではコンクリートが張られたバスケットボールコートで体育の授業を行っている。運動場で体育を実施している学校は2校のみであった。

次に、学校にある体育用具は、「サッカーボール」「フラフープ」「コーン/マーカー」などで、それぞれ多くても3~4個程度が備えられているだけで、活動内容・形態が限定される。
      
(3)指導工夫
i)体育道具を生活用具から再生利用し、運動活動を実施する
ii)課題設定と評価に注力し、皆が楽しめる体育授業を創造する

体育用具の不足は、最大の課題といえる。
ブータンで可能な体育活動は、
1)体作り
2)器械・器具(一部)
3)走・跳
4)ゲーム(一部)
5)表現リズム
に限られ、1、3、4の活動を中心とせざるを得ない。そのため、「ペットボトル」「長・短縄」「布きれ」「新聞紙ボール」などを教材として再生利用し、授業を実践している。

また、ほとんど体育授業を受けた経験のない子どももいる中で、クラス全員の発達・成長を保障する体育授業の創造には、「段階に応じて細かく配慮された課題設定」と「的確な言葉かけ・評価」が必須の作業となる。子どもからの教師への要求も大事にしたい。

私は今後、2月中旬~3月初旬にかけて、やはりブータン東部の5地域を訪問する予定にしている。そこで出会う子どもたちに少しでも保健体育の素晴らしさを味わってもらえたら、望外の幸せと感じている。

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カリン小中学校での保健体育研修会

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ランジュン小中学校での保健体育研修会で元気に走り回る子どもたち

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ランジュン小中学校での保健体育研修会


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タシガン小中学校での保健体育研修会

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モンガル小中学校での保健体育理論・実践研修会

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モンガル小中学校でも寒さに負けず元気な子どもたちがいた


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